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仮面のS級

三年前。


聖王国アルディシア北方、白霧地方。


空が裂け、黒い城が落ちた。


あの日、王国を半壊させた未曾有の厄災は、

人々からこう呼ばれている。


――星喰らい。


それは単なる怪物の名ではない。

空を侵し、街を削り、人の存在そのものを“なかったこと”にした災害そのものの呼称だ。


黒い城の玉座に座していたのは“星喰らいの王”。

触れた存在を“なかったこと”にする災厄。

街を削り、空を侵し、数万の命を奪った怪物。


王国軍と神殿騎士団、そして名も残らぬ勇者の犠牲の末、

「王は討たれた」

と発表された。


だが――


星喰らいは完全には消えていない。


王の力の断片は世界に散らばり、

ときおり人や魔獣に宿る。


それを人々は、


――星喰らいの残滓と呼ぶ。


残滓を宿した者は暴走するか、異形化するか、

あるいはーーー

神殿により処刑される。

災厄は終わった。

そう、言われている。


だが誰も、本当に終わったとは思っていない。


――――――――――――――――――――――

王都ルミナス中央闘技場。

聖王国全土から冒険者が集まるS級昇格試験。

王都冒険者ギルドの闘技場は異様な熱気に包まれていた。

中央には鋼の鱗を持つ魔獣――グラヴェル・ドラゴン。

討伐難度S。

「最後の受験者、前へ」

呼ばれて、一人の青年が歩み出る。

黒い外套。無機質な仮面。

登録名は――ルーク。

地面を踏みしめながら、ルークは静かに息を吐いた。

右手に、誰にも見えない剣の重み。


『やめておけ』


頭の奥で、剣が囁く。


『力を使えば、王の痕跡が濃くなる』


「使わなきゃ死ぬだろ」


仮面の下で、小さく笑う。

ドラゴンが咆哮した。

衝撃波で石畳が砕け、砂埃が舞う。

観客席が悲鳴に包まれる。

だがルークは動かない。

そして、たった一歩前へ出る。


「――終わりだ」


ドラゴンの爪が振り下ろされる。

その瞬間。

ドラゴンの腕が、地面に落ちた。

斬られたのではない。


()()()()()()”が確定し、腕がそこに転がった。


静寂。


因果断絶(ルインブレイク)


剣が低く呟く。

ドラゴンは炎を吐く前に喉が裂け、

咆哮する前に心臓が止まった。


三秒。


S級魔獣は、崩れ落ちる。

観客は理解できない。

なぜならルークは()()()()()()()()()()()のだから。

その右手に、黒い紋様が浮かぶ。

星の形。

じわり、と熱が広がる。

――玉座。

――血。

――空を喰らう影。

頭の中に流れ込む知らないはずの記憶。


『使いすぎだ』


「まだ三回目だ」


『王は近いぞ』


その時。観客席の最上段。。

白銀の鎧を纏う少女が立ち上がる。

神殿騎士団・第二席騎士 アリア

彼女の額に、淡い光の紋章が浮かんだ。


「……あれは、王の力」


その瞬間。

ルークの背筋が、ぞくりと凍りついた。

殺気でもない。

魔力でもない。

もっと原始的な――“見つけられた”という感覚。

反射的に振り向く。

視線が交わる。


『気づかれたな』


剣が愉快そうに笑う。


「笑いことじゃないぞ」


「じきに神殿騎士団が動く。急ぐぞ!」


神殿騎士団。星喰らいの残滓を見つけ、処刑するための剣たち。

ルークは踵を返した。


「合格証は郵送で頼む」


次の瞬間、闘技場から姿が消えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


屋根の上。夜風が外套を揺らす。

右手の紋様が消えない。むしろ、広がっている。

(また使った)

さっきから視線が刺さる感覚が消えない。

最上段の白銀の少女。

あの目。

(ああいう目、嫌いだ)

正義でも敵意でもない。


“理解した目”。


胸の奥がわずかにざらつく。

(目立たないつもりだったんだけどな)

小さくため息が漏れた。


風が止む。


一瞬、世界が静まり返る。


その隙間に――


――思い出せ。


頭の奥で、声が響く。


――お前は、我だ。


こめかみが軋む。


「違う⋯」


ルークは仮面を押さえる。


『否定しても無駄だ』


「俺は王じゃない」


『違う。お前は“器”だ』


沈黙。


『王そのものではない。だが、なれる』


「何が違う」


剣が静かに答える。


『残滓は過去だ』


風が止まる。


『かつて世界を削った王の、燃え残り。あれは同じことを繰り返すだけだ。終わった時間の亡霊だ』


ルークは目を細める。


『だが器は違う』


鼓動が強まる。


『お前は未来だ』


「未来?」


『どうなるか、まだ決まっていない。世界は常に代替を用意する。過去が失敗すれば、未来を用意する。それがお前だ』


ルークは笑う。


「つまり俺は世界の保険か?」


『そうだ』


「ふざけるな」


拳が震える。


『残滓は戻る。器は選ぶ』


沈黙。


『お前はどちらへ行く』


夜が重くなる。夜風が吹き抜ける。

右手の紋様が、脈打つ。


――――――――――――――――――――――

遠くの塔。アリアが目を閉じる。彼女の紋章も強く脈打つ。


「間違いない。あれは残滓ではない」


部下が息を呑む。


「では……」


「ええ」


アリアは夜を見据える。


「王の器です」


その言葉が王都の空気を変えた。

鐘が鳴る。緊急召集。

神殿が動く。


そして同じ夜。


王都南区。


幼い少年の胸に、黒い紋様が浮かび上がった。

誰にも知られないまま。

静かに。

世界は、一人では足りないと知っている。

王の器は一人とは限らない。

こんにちわ!このアカウントでは初めての作品です!面白かったら2話からも見てほしいです!かなりの長期連載にするつもりなのでよろしくお願いします!

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