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Mermaid-マーメイドー  作者: shiori@


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6、出会いと別れの日々

「それで……アクアさんはどうして危険を顧みず人里に上がって来られたのですか?

 人魚がやって来るのはこの漁村では五十年近くなかったことなのです。何かそれ相応の事情があったのではないですか?」


 お爺さんが寝息を立てて眠り始めた夜遅く、眠れないアクアに向けてナオトは問いを送りました。


 アクアは少し迷いながら、誠意のある真っ直ぐな目をしたこの人間なら信頼出来ると思い、行方知れずとなった姉を捜していることを話すことにしました。


「私は人魚の国の使者という訳ではありません。

 ただ、私はお姉様がしていた、人魚の国と人間の暮らす人里を行き来する島巡りの調査についてよく聞かされて育ちました。

 そのおかげで、人への憧れは他の人魚と比べ物にならない程強くあります。

 ですが、憧れだけでここまで来た訳ではないのも事実です。

 それは、帰って来なくなってしまったお姉様の行方を案じてのことです。

 私は暫く交流が途絶えていた人間達の生態を観察して、その詳細を人魚の国に持ち帰ると同時に、お姉様を見つけ出したいと考えています」


「君のような若い人魚には荷が重い使命かもしれないが、確かに行動力はある。決して無謀な行動ではないだろう。だが、そのお姉様と呼んでいる人魚がこの島にやって来た人魚であるという確証はないだろう」


「勿論そうですね。私がこの島に来たのは偶然。お二人に助け出されたからに過ぎません。手掛かりが簡単に見つかるとは思っていません」


「そうか。俺は他の島にも出掛けているが、人魚を見掛けたという話しは聞いていない。その人魚の行方を知る者は今ではもう限られるだろう」


「そう……ですか。お姉様は人魚の国に帰って来なくて。人間の男性に駆け落ちしてしまったと根拠のない噂をされています。ただ私は幸せに暮らしているならそれでも良かったのですが、行方知れずとなっているのは悲しいのです」


「そうした事情があるのなら致し方ありません。苦労をしてここまでやって来て何の情報も得られないのは不憫だ」


「いえ、平気です。都合よく情報がすぐに得られるとは思っていませんので」


「事情は分かりました。今日はゆっくり休むといいでしょう。辺りを散策するのも良いですが人魚の国に帰るまでは遠慮なく我が家を利用してください」


「はい、お言葉に甘えて感謝します。お姉様の言う通り、水のない地上では自由に泳ぐこともままならないのだと痛感しましたから」


 ゆっくりと疲れ切った身体を倒し、その場で横になるアクア。

 瞳を閉じると真っ暗な世界が広がっていくが、ナオトの気配を近くに感じていると不思議と恐怖はありませんでした。


 それから、アクアはアーリアの行方の手掛かりを探すため、地上での環境に少しでも慣れるために、お世話になった親子と数日間を過ごしました。

  

 まだ人間の住む環境に慣れていないアクアは一人で行動することも簡単には出来ません。アクアは二人の手を借りながら、人間の暮らしを学び、生活を共にしました。


 二人と漁に出掛け、魚を獲って食事をして、夜は海から見える満天の星空を眺める。人間達にとって珍しくない一瞬一瞬がアクアにとっては新鮮であり、かけがえのない思い出へと変わっていったのです。


「人魚とは不思議な生き物だな」


「それを言うなら人間の方が不思議な生き物です。こんなに優しくしてくださるなんて」


「何を言う。君の方がずっと優しく清らかな心を持っている。他の人間達でも容易に惹かれ落ちてしまうだろう」


「私なんて、上手に泳げなくて心配されてばかりです……。お姉様のように上手に人間と交流できているのか」


「今日までの日々は新鮮そのものでした。自信を持ってくだされ」


「分かりました、ナオトさん」


 小舟に乗るナオトの傍で夜の海を泳ぎ、イルカのように自由に飛び上がって宙を舞い、再び海に戻っては水面から顔を覗かせるアクア。


 満天の星空の下で過ごす時間は開放感に包まれ、自分達がどれだけ息苦しい日々を送って来たのか、アクアは気付いてしまいました。


「沢山の事を教えて頂きありがとうございました。私は人魚の国に帰ります。外の世界を知らない仲間達に伝えなければならない真実が多くあるのだと分かりましたから」


「それが良い、ここに長居するのは安全な事ばかりではない。俺も自分なりに人魚について調べておきます。アクアさんの大切な仲間の行方を突き止められるように」


「ありがとうございます。こんなに幸せな事はありません。勇気を出して飛び出して本当に良かったです」


 女王から許可を貰って地上へとやってきたアクアは二人に迷惑を掛け続けるわけにもいかず、長居することはできない。


 別れは名残惜しいものだったが、アクアは自分の口で人魚の国に帰ることをナオトに告げた。


 濃縮された長くも短い親子との交流はこうして終わりを告げ、島での思い出を語り継いでいくためにアクアは人魚の国へと帰りました。


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