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エピソード8:王の終焉

冒険者が行方不明になっているという鉱山に入ったガーデラ達。

その奥には、洞窟内に住まう異形ミミックたちの王、ミミック・ロードがいた。

すさまじい攻撃にガーデラは瀕死に追い込まれる。

そんな中太陽に光が弱点ときづいたメルザは、ある作戦を立てるのだった。


洞窟の大広間。

再生を終えたミミック・ロードは、肌を軋ませながらゆっくりとメルザのほうを向き、唸り声をあげる。


「メ...ルザ...あなたも..逃げて」

光に包まれたまま横たわるガーデラが、かすれた声で呼びかける。

「ガーデラ様、無理に動かないでください。傷口が開きますよ」

冷静な声音で言い切る。

「こいつは...私がやります」


「ダメ……! あなたの魔法じゃ、こいつには……」

「いいから黙ってその光の中にいてください」

そんな二人の会話を遮るようにミミック・ロードは咆哮を放つ。

空気が震え、天井の砂利がぱらぱらと落ちた。


「さっきからギャーギャーと...」

その瞬間、

一瞬の光と共にメルザの姿が、消えた。

そして、気づけばミミック・ロードの眼前に彼女が現れていた。


「やかましいんだよ!!」

突き出した掌から放たれた光が、至近距離で炸裂した。

不意を突かれたミミック・ロードは防ぐこともできず、巨体をのけぞらせて後方へ倒れ込む。


「メルザ!...今のは」

着地したメルザは、軽く息を整えながらガーデラへ振り返った。

「まあ、スキルの応用みたいなもんです」

足元に淡く魔法陣が広がる。


「私のスキル《ポインター・テレポート》は本来、保存しておいた座標にしか跳べません。でも――

“私の目の届く範囲”かつ“私自身”のみという条件をつければ、保存なしでも瞬時に移動できます。」


少しだけ肩を落とす。

「......まぁ調整クソむずいし、魔力消費激しいんで、あまり使いたくはないんですけど」

起き上がったミミック・ロードは理解できないまま怒号をあげると、再び大地を砕く勢いで跳躍した。

だが、その腕は掠ることすらできない。


メルザの姿はすでに別の場所へ消えている。

「グアッ!?」

ミミック・ロードは無様に着地し、地面をえぐった。

「ガーデラ様...確かに私じゃ、こいつにはダメージすら与えられません。なので――」

彼女は真っ直ぐにミミック・ロードを見据えた。

「私の役目は、時間稼ぎです。フランズさんが入口に戻るまで、こいつを引き付けることです」


ミミック・ロードは腕をつき体を起こすと、メルザのほうを向くと唸り声をあげる。

唸り声には、はっきりとした怒気が混じっていた。


「どうした? キレてんのか?」

メルザは挑発するように口角を上げる。

「ほら、とっととかかって来いよ」

ミミック・ロードは再び咆哮を上げ、地を這うようにして距離を詰めていった。


一方洞窟の奥から続く通路を、フランズはロザを脇に抱えたまま全力で駆けていた。

「ぬああああああああ!!どけぇ貴様ら!!」

前方から襲い掛かる異形ミミックたちに、立ち止まる余裕などない。

放たれた炎が走路を塞ぐ魔物をまとめて焼き払う。


溶けた肉と焦げた匂いが立ち込める中、フランズは一瞬たりとも足を緩めなかった。

「ぐっ...ごっ...あぐっ」

激しい揺れにロザは声を漏らす。


(しかし……さっきのメル殿の剣幕……)

脳裏に焼き付く、あの怒号と目を見開いた表情。

普段の冷静沈着な彼女からは想像もつかない迫力だった。

(……正直、軽くトラウマになりそうだ)


(いや! そんなことを考えている暇などない!)

背後に残した二人の姿が脳裏をよぎる。

倒れ伏すガーデラ。

そして、たった一人で魔物に立ち向かおうとしたメルザ。


(一刻も早く入口に戻らねば!)

フランズは歯を食いしばり、さらに速度を上げた。


”必ず全員生きて帰る”

その決意だけを胸に、彼は闇の中を突き進んでいった。


ミミック・ロードの影が、じわじわとメルザを呑み込むように迫っていた。

メルザは地を滑るように瞬間移動し、迫る腕を紙一重でかわす。

着地と同時に足元へ魔法を叩き込み、衝撃波が地を走った。

ミミック・ロードは膝をつき、怒りを露わに咆哮する。


一見優勢に見えていた。

しかし、メルザは肩が上下させ、息が鋭く乱れていた。

肺が悲鳴を上げ、視界の端がじわりと滲んでいく。


(クソ...やっぱりそう何度もやるもんじゃねぇ)

足元の魔法陣が、先ほどまでの鋭さを失い、弱々しく明滅していた。

(まだか...まだかフランズさん!こっちはもう持たねぇぞ!)


額に冷や汗が伝う。

胸が焼けるように苦しい。

魔力も体力も、限界が近いことは嫌というほど理解していた。


その時、ミミック・ロードが再び巨大な躯体をしならせ、地を砕きながら突進する。

メルザは反射的に魔力を込め、瞬間移動を試みる。


しかし、

「っ…!?」

視界が揺れた。

膝が崩れた。

魔法陣の光がふっと消える。


「しまっ!」

次の瞬間、ミミック・ロードの腕が轟音を伴って振り下ろされた。

メルザは必死に横へ転がって直撃だけは避けたが、砕け飛んだ岩片が全身にぶつかり、鋭い痛みが走った。


「うぐぁ」

受け身もとれず、そのまま地面に転がり、体が跳ねる。

(まずい...体に力が...)

ミミック・ロードは獣のような咆哮とともに、トドメを刺すべく腕を大きく振り上げる。


その刹那――

ガーデラが血を振り撒きながら駆け込み、己の剣を振り抜いた。

腕が肩口から弾け飛び、断面からは不気味な黒い霧が吹き出していた。


「ガーデラ様!」

「大丈夫?メルザ」

地面に着地したガーデラは地面に剣を突き刺し、倒れそうな体を保つ


だが安堵は一瞬だった。

切り落とされたミミック・ロードの腕が、ぐにゃりと肉片を繋ぎ合わせ、みるみる形を取り戻していく。

再生した腕の関節をわざと鳴らすように曲げ伸ばし、ミミック・ロードはニヤァ…と口を裂く。

身体全体から溢れる殺気が、空気をビリビリと震わせる。


「メルザ...やっぱりあなただけでも逃げなさい」

ガーデラの声は震えていた。

息をするたびに胸が痛み、言葉が途切れ途切れになる。

「もうほとんど魔力も残ってない。これ以上やっても死ぬだけよ」


「...ガーデラ様はどうするんですか?」

メルザの問いに、ガーデラは一瞬だけ視線を逸らした。

「あなたが逃げれるように...こいつを足止めする」

体も声も目に見えるくらい小刻みに震えていた。

痛み、恐怖、あらゆる感情が渦巻いているのが見て取れた。


「......」

「5分は...稼いでみせるから、その間に逃げて....魔王様には、うまいこと言い訳を...」


「――嫌です」

メルザは話を遮り即答した。

「メルザ!」

「嫌です」

感情の揺らぎすら見せない声。

「お願い!あなたまで死ぬ必要は...」

「いーやーでーすー」

妙に間延びした拒否。

だが、その声には一切の迷いがなかった。


メルザは脚に力を入れ、立ち上がった。

「あのですね...逃げたところでどうなるんですか?一人で魔王城に帰れって言うんですか?今後誰についていけばいいんですか?まったく...もっと先のこと考えて話してくださいよ」

冷静な口調。

けれど、その奥には抑えきれない感情が滲んでいた。


「あと、さっきも言いましたよね?私はあなたの秘書なんです」

「ずっとあなたの傍に仕えてきましたし、これからも仕えていくつもりです」


「もしこのまま……二人とも死ぬことになったとしても」

微かに、口角が上がる。

「私は、後悔しません」

ガーデラの胸が、ぎゅっと締め付けられる。


「なので...軽々しく自己犠牲なんて考えないでください」

「メルザ...」

その名を呼ぶ声は、もはや命令でも、説得でもなかった。

ただ、想いがこぼれ落ちた声だった。


「...と、この続きはまた今度話しましょう」

「え?」

唐突な一言に、ガーデラは目を瞬かせた。


メルザはふらつく手を無理やりポケットへ突っ込む。

中から光を放ち、微かに震える遠隔水晶を取り出した。

「やっと着きましたか」


応答すると、入り口を背に肩で息をしながらも鋭い眼光を宿すフランズが映っていた。

「メル殿! 入口まで戻ってきたぞ! 次は何をすればいい?」

メルザの口元に、限界の疲労を押し隠した静かな笑みが浮かぶ。

「よーしフランズさん、こっちも今ぎりぎりなんで細かい説明は省きますが、まぁ簡単な話...」


「そこにいてください。後は...何となく察してください」

「え、雑...」

「ん?何か言いました?」

「い、いや何でも!」

「では、お願いします」


通信が切れた瞬間、メルザはゆっくりと深呼吸をする。

膝が笑い、視界が揺れる。

魔力も、体力も、ほとんど底を突いていた。

それでも、その目だけは強く前を見据えていた。


「メルザ、あなた何をする気?」

メルザはふっと柔らかい笑みを浮かべ、ガーデラに視線を向ける。

「ガーデラ様、今日は……本当に疲れましたね。」

「え? あ、ええ……?」

「宿に帰って、ゆっくり休みたいですね。」

「...ええ」


ほんの一瞬だけ。

死地の只中とは思えない、穏やかな空気が流れた。

そしてメルザは、にこっと笑った。

「では、とっととこんなクソみてぇな場所から出ましょう!」


バシュッ!!


足元に鮮やかな魔法陣が展開される。

足元に鮮やかな魔法陣が展開され、空気が弾ける。

「もちろん……」

メルザは視線を横へ滑らせた。

「――お前もな」

「……ぐあ?」

気づけばミミック・ロードの足元にも魔法陣が広がっていた。


閃光。

視界が白に染まり、世界が裏返るような感覚のあと、二人と一体の巨躯は、洞窟の内部から消え失せた。

そして。

まばゆい光の渦を抜けて、“そこ”に現れる。


「メルザ? ここって……」

「ええ、見ての通り鉱山の入り口の前です。」

差し込む日差しに、メルザはゆっくりと背伸びをした。

その姿は、今にも倒れそうなくらい消耗しているのに、心だけは晴れやかだった。


「やっぱり……日光は気持ち良いものですね」

ふと、視線を横に向ける。

「……お前も、そう思うよな?」

ガーデラがゆっくりメルザの視線の先へ目を向ける。


そこには、黒煙を上げながら、悲鳴に近い奇声をあげ、焼け崩れていくミミック・ロードの姿があった。

皮膚のような外殻が溶け、肉が炭のようにはじけ、足が崩れ落ちる。

ミミック・ロードは必死に洞窟へ逃げようと這いずるように体を動かす。


その時。

洞窟の闇の中から、火球が飛び出した。

ミミック・ロードの腕が、爆ぜるように吹き飛んだ。

「なるほど...そういうことか」


ミミック・ロードは声の方に視線をやる。

そこには炎の中でロザを抱えながら堂々立つフランズの姿があった。

「残念だが...ここは通行止めだ。」


メルザは静かに微笑む。

「じゃあな...ゲス野郎」

一筋の叫びをあげ、

ミミック・ロードはついに全身が崩れ落ち、黒い灰となって消滅した。

洞窟の入口に、静寂が訪れる。

ただ、風と陽光だけが、そこにあった。


ミミック・ロードの残した鉱石が、弱々しい夕日を反射して淡く輝いていた。

激戦の名残はまだ空気に漂っているが、あの圧倒的な殺気はもうない。


「……終わった。二人とも、大丈夫か!」

フランズがロザを抱えながら駆け寄ってくる。

ガーデラとメルザはぼろぼろになりながらも、立っていた。

鎧は傷だらけ、衣服は裂け、息も荒い――それでも、確かに立っている。


「ええ、大丈夫よ。」

「フランズさん……お見事でした。」

メルザは安堵と疲労が一気に押し寄せたのか、その場にどさりと座り込んだ。


ガーデラもすぐにメルザのそばへ寄る。

「メル、大丈夫?」

「はい...ガーデラ様は...」

「大丈夫よ。.........ありがとう」

メルザは弱々しく微笑んだ。

「いいえ……テラ様がいなければ、私はとっくにやられていました。こちらこそ、ありがとうございました。」


夕日の中で交わされるそのやり取りは、戦場とは思えないほど静かで、穏やかだった。

「さあ、宿へ帰りましょう。そして明日……洞窟のことを報告に――」

言いかけた瞬間、メルザの体がふらりと揺れる。

ガクッとガーデラの胸元へ倒れ込むようにもたれた。


「メル殿!!」

フランズは慌てて駆け寄ったが、ガーデラはすぐにその脈を確かめ、柔らかな声で言った。

「大丈夫……疲れて眠っただけよ」

メルザはガーデラの腕の中で、安らかな寝息を立てていた。


必死に戦い、仲間を守り、最後の力まで振り絞った――その証のような深い眠りだ。

「さあ、メルが言うように……宿に帰りましょう。今日は本当に、疲れたわ。」

「了解した。メル殿は我がおぶろう」

ゆっくりとメルザを背負うフランズ。

その顔には、勝利の余韻と、仲間への感謝がしっかり刻まれていた。


「しかしテラ殿...明日報告しに行くのはいいが、いったいどう説明するきだ?」

「確かに。異形なミミックが冒険者を襲ってたなんて、いくら勇者が言ったとしても納得はしないでしょうね...」


「まぁ口先だけじゃ、証拠不十分だよね」

「そうなのよ。せめて何か明確なものがあれば...?」

「……今の、フランズが言った?」

「いや、我は何も」


ガーデラは一瞬、眉をひそめ、ロザの方を見る。

「え……僕も、何も言ってません……」

「せっかく死ぬ気で戦ったのに報われないなんて...悲しいね」


ガーデラ達はようやく、その声が後ろから聞こえることに気づいた。

背後から、柔らかく、しかし場違いなほど軽い声が落ちた。

その瞬間、空気が凍りついた。

ガーデラの背筋を、冷たいものが一気に駆け上がる。

ガーデラとフランズは、ほとんど同時に振り返った。


「!!」

そこに立っていたのは、一人の男。

全身を白い軍服に包み、随所に施された金の装飾が、夕日の残光を反射して鈍く輝いている。

左肩にマントをかけ、白い短髪の隙間から、捻じれた二本の角が覗いていた。


「やあ、どうもー」

男はにこやかに微笑みながら手を振った。

「誰だそなたは...いつから我々の後ろにいた」

フランズの声は低く、瞬時に戦闘態勢に入る。


「ちょちょ、そんな警戒しなくてもいいよ。別に変なことしないって」

その軽さが、逆に不気味だった。


ガーデラの胸が、嫌な音を立てて締めつけられる。

(なんで...なんでこいつがここにいるの!?)

男は楽しそうに、しかし逃がさない目でガーデラを見る。

「その反応、勇者君僕のこと知ってるでしょ?」


ガーデラは声の震えを必死に抑え答える。

「...ええ、知ってるわ。あなた...魔王軍の幹部でしょ」

「なんだと!?」

フランズは思わず叫びロザは目を見開いたまま言葉を失う。

「あっはは、正解。いやぁ、随分と物知りだね」


男は肩をすくめ、胸に手を当てた。

「そのとおり、僕は、魔王エデルス直下の大幹部」

一拍、間を置く。

厄災七幹パンデラズ№2……万壊のゴルドラ」

にこやかな笑顔のまま、はっきりと言い放つ。

「よろしくね」

その一言で、世界の温度が変わった。

誰もが、次の瞬間に何が起きてもおかしくないと悟った。

クソみたいな投稿頻度ですいません。

お読みいただきありがとうございました。

どうも、作者の一二三四 五六です。

学校で学期末考査が近づいており、中々パソコンに向かえず、制作スピードが落ちてきています。

なんとか...なんとかせめて、週に1,2話は投稿したい所存です。

毎回物語を読んでくださっている皆様に1日でも早く最新話を見せられるように頑張ってまいります。

そんなわけでこれからも側近勇者をよろしくお願いいたします。

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