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エピソード3:覚悟の旅立ち

前回のあらすじ

なぜか勇者の剣を抜いてしまったガーデラ。

村を夜中に飛び出し、剣の破壊を試みるが傷一つ与えることができなかった。

破壊は無理と悟り、遠くに捨てようとするが、

投げても、埋めても、捨てても、いつの間にか剣はガーデラのもとに帰ってきていた。

魔族としてのプライドを折られ、精神的疲労が限界を超えたガーデラは

ついにその場で泣き崩れてしまった...

「うわぁぁぁん!!もういやだぁぁ!!勇者なんかしたくなぁい!!魔王さまぁ!!!」

仰向けになり、手足をジタバタさせながらガーデラは泣き叫ぶ


(ダメだ......精神がボロボロ....もう完全に子供だ)

メルザはただその情けない姿を眺めることしかできなかった。


ガーデラは地面に突っ伏し、草をわしっと掴み嗚咽を漏らす。

「なんで……なんで捨てても返ってくるの……わたしなにもしてない……ただ魔王様のために働いただけなのに……なんで勇者……なんでぇ……」


……だんだんと声が小さくなる。

「ひっ……ぐ……ぅ……ぅ……すぅ……」

やがて声は聞こえなくなり、ガーデラは動かなくなった。


「ガーデラ様……?」

メルザが呼びかけるも反応がない。

恐る恐る近づき、顔を確認する。


「……あ、寝た」

ガーデラは泣きながら、そのまま力尽きて泥のように眠ってしまった。

頬には大粒の涙の跡。

まつげに涙を残したまま、子どものように深い寝息を立てている。


「よほど限界だったんですね」

メルザはその場に座り込み、ガーデラの背中をさすった。

(本当に、厄介なことになりましたね)


剣に視線を移すとパアっと優しく光り、二人を照らす。

「なんです?慰めのつもりですか?あなたのせいでこうなってるんですよ?」

すると、剣は言葉に反応するようにシュンと光を弱めた。


「......とりあえず、村に帰りましょうか」

メルザはガーデラを抱きかかえると村の灯りに向かって歩き始めた。


歩くメルザの後ろを、剣は這いずるようにズルズルと後をつけてくる。

「……すぅ……すぅ……んむ……やだ……剣……ついてくる……」

うめくように寝言が聞こえてくる。

「ええ、ホントに逃がす気はないみたいですね」


小屋に戻ると、簡素な寝台にガーデラをそっと寝かせる。

布をかけ、乱れた髪を整える。

「……すぅ……むにゃ……」

眉間の皺もゆるみ、顔についていた涙の後も消えていた。


メルザは毛布をかけ、少しだけ微笑む。

「……明日、どうしましょうかね……」


剣は小屋の隅に行き、もたれるように立てかかった。

小屋には、二人の寝息静かに響いていた。


翌朝。

朝日が差し込む小屋の中で、ガーデラは虚ろな目でぼーっと座っていた。


「……ガーデラ様、大丈夫ですか?」

「……………………大丈夫よ」

「目が...死んでますけど?」

「問題ないわ。ただ尊厳と精神が破壊されただけだから....」

目が笑ってなく、声に生気がみられない。

(完全に魂が抜けてる...)


そんな会話をしていると、

ブルルルルル……!

「ん?」

ガーデラのポケットが震えだした。


「!! 今の振動……まさか……!」

ガーデラは慌ててポケットを探る。

すると、通信用に持っていた遠隔水晶が淡い光を発しながら振動していた。


「遠隔水晶......誰かかけてきています」

「え、待って、ほんと待って……!私の水晶にかけてくるなんて、魔王様か幹部くらい…」

「「まさか...」」


ガーデラはあらかじめ変装を解き、震える手で遠隔水晶の応答ボタンに触れた。

(魔王様じゃありませんように魔王様じゃありませんように魔王様じゃありませんようにいいい)


......しかし、

水晶に映ったのは

玉座の上。

闇を揺らすような魔力の風。

そして、絶対的存在感を放つ一人の魔族。


魔王エデルス


「!?!!!?!?!??!!?!?!?」

ガーデラはのどまで上がってきた叫びを必死に抑え、冷静を装う。


一方、水晶の向こうでは、魔王エデルスがゆっくりと目を細めた。

その視線が、こちらを正確に捉える。

「……ガーデラ」

低く、よく通る声。

それだけで、小屋の空気が一段冷えた。


ガーデラは膝をつき、胸に手を当て、頭を深く下げる。

「はっ....何でございましょうか、魔王様」

(やばいやばいやばいやばい!...終わる....気づかれたら終わる!...何とかばれないようにしないと)


メルザは横で固唾を呑み、黙って成り行きを見守る。


エデルスは顎に手を当て頬杖をつく。

「ポラリスへ儀式の調査に向かってから、音信不通だったのでかけみたのだが...」

「も、申し訳ございません!ここ最近少しばかし立て込んでしまいまして!」


「そうか...ご苦労であったな。では質問をする」

ガーデラの背中に汗がにじむ。

「はい...なんでしょうか」

「......勇者は現れたのか?」


(あああああぁぁぁ!!そうですよね!!絶対それ聞きますよね!!だってそれ目的で潜入してるって言っちゃったんだから!!)

表面には出さないが、心の中でガーデラは発狂する。


「どうなんだ?....ガーデラ」

エデルスは目を細め、ガーデラを見続ける。

「はい....えっとー....そのーですね。ゆ、勇者は現れました。」


「......ほう」

「ついに現れたか....勇者が。...で、どんな奴なんだ?」

「へ?」

「勇者になった者はどんな奴だ?」


「あ....え....あその...えっと」

(私です!!私なんです!今いる!あなたの目の前に!!でも言えない!言えるわけない!!どうにか...どうにかごまかさないと)


「えっとですね...特にこれといった特徴はないですね。いたって普通の人間でした...はい」

「そうか...まあいい。なりたての勇者などたいていそんなものだ。...それに、そういった奴ほど未知の力が隠されてるというもの」

エデルスの表情がゆっくりと微笑んでいく。


「毎度のことながら....勇者の誕生は心が躍るな」

(踊らないで!?そんな殺気ビンビンにしないで!)


「......ガーデラよ」

「はっ、何でしょうか?」

「お前...これから魔王城に帰るのか?」


(帰りたい...帰りたいよおおおおお!魔王城に帰って、ベッドで寝たいよおおお!チクショおおお!)

泣き出したい気持ちを押し殺し、冷静に返す。

「い...いえ。まだ調査を続けようと思います」


「そうか...では新しいことが分かり次第、報告しろ」

「承知いたしました。」

(はあ...何とか乗り切った....でも...これからどうすれば...)


「それと、もう一つ言っておく」

(な、何...まだ何かあるの?)


エデルスの表情が、ふっと和らいだ。

「絶対に無理をするな」

「.......え?」

魔王の口から出たとは思えない言葉にガーデラは思わず固まった。


「お前が我のため...延いては魔族のために身を削って動いてくれることには感謝している。だが、結果を出すことを優先して、危険を冒すのはだめだ。お前は我の側近だ。お前が我を大切に思っているのと同じように、我もお前が大事に思っているのだ」


(あ...ダメ....やめて...もうやめて)

魔王の言葉一つ一つが、すでにひび割れたガーデラの心に、静かに染み込んでいく。

(壊れちゃう...それ以上されたら...私壊れちゃう)


「だからくれぐれも、無理をしない範囲で調査を進めるのだぞ。よいな?」

気づけばガーデラは目に涙を浮かばしていた。

「はい......わかりました」

その言葉を最後に通信はプツリと切れた。


ガーデラはしばらく、その場から動けずにいた。

遠隔水晶を握りしめたまま、震える指先を見つめながら。


「ガーデラ様...」

メルザが呼びかけるとガーデラはスッと立ち上がった。


「......メルザ」

「はい」


「魔王様はね、私が赤子の頃から面倒を見てくれたの。この体も、魔法も、知識も、全部魔王様が育ててくれた。今の私がいるのは、魔王様のおかげ...」

その声は先程までとは違う。

重く、覚悟を決めたようなはきはきとした声だった。


「そんな恩人を......殺すことなんて、絶対にできない」

メルザは余計なことを言わず、ただ黙って話を聞く。


「帰って見せる。今は無理でも、何とかして魔王城に帰って見せる!魔王様の側に、必ず戻る!」

そこには、昨夜のメソメソと子供のように泣いていた魔族の姿はどこにもない。

魔王の側近としての誇りを、再び取り戻そうとするガーデラの本来の姿だった。


「メルザ...あなたも協力してくれる?」

「はい、もちろんです。」

メルザはまっすぐとした目で答える。

「ガーデラ様をこんな形で失いたくありません。二人で一緒に魔王城へ帰りましょう!」


小屋の外では、朝の光がさらに強まり、世界は動き続けている。

勇者の剣は、まだそこにある。

問題は山済みで、何一つ解決していない。

それでも、ガーデラ達の覚悟は揺るがない。

彼女たちの魔王城へ帰るための、長く厄介な戦いが、

今、静かに始まろうとしていた。


村の門の前。

村人たちは勇者の旅立ちを見送ろうと集まっていた。

「勇者様、どうかご無事で……!」

「必ず魔王を討ち、世界に平和を……!」

期待と希望に満ちた視線が、一斉にガーデラへと向けられる。


(...なんか...この空気にも慣れた)

「……ええ。皆さんの想い、確かに受け取りました」

落ち着いた声で返したガーデラはメルザと共に門の外へ踏み出した。


村を出た二人はそのまま真っすぐ歩いていき、村が見えなくなるまで歩くと足を止めた。

「さてと、覚悟を決めて旅だったものの...これから一体何をすればいいの?」

「さあ...そもそも他の勇者たちは何を目印にして旅をしていたんでしょう...」


すると、剣が青白い光を放ち始めた。

「え、なに!?」

光は一瞬大きくなったかと思えば、次第に小さくなり、一直線の一本の光になった。

やがて、光の線はまるで軸を合わせるように一定の方向を示し始めた。


「これって....」

「...方角、ですね」


ガーデラは剣を手に取り光のさす方角を見つめる。

「....そこに、何かあるの?」

剣は何も反応しない。

...しかし、ガーデラは何となくではあるが理解した。


「物は試しね...いいわ。でもね、何もなかったら承知しないわよ」

剣をにらむと、背中の鞘にしまった。

「よし、行くわよメルザ」

「はい、ガーデラ様」

二人は光のさす方角に向かって歩き出していった。

そこに何が待っているのか、まだ誰も知らないまま。

お読みいただきありがとうございました。

どうも、作者の一二三四 五六です。

最近になってページビュー数を確認できることを知りました。

そしたらなんと、作品を読んでくれてる人がいました!

もうほんとにうれしかったです。

これからも頑張って書いていきますので、これからも読んでいただけると幸いです。

それと、もしよければなんですけど感想を書いていただければ

とても励みになりますので書いていただけると嬉しいです。

そういうわけで、これからも側近勇者をよろしくお願いします。

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