エピソード1:勇者誕生の義式
漆黒の大陸に位置する魔王城。
その玉座の間は外の風が入るたびに燭台の青い炎が揺れる。
玉座に座る魔王エデルスは、金色の瞳で側近を見下ろす。
石床に膝をつき魔王に向け頭を下げるのは、魔王の側近ガーデラ。
銀色の長髪をおろし、胸に手を当てながら静かに口を開く。
「魔王様。ポラリスの村で、人間たちが”勇者誕生の義”を行うとの
情報を入手しました」
「ほう、ついに新たな勇者が生まれようとしているのか」
エデルスは窓の外から雲が渦巻く空を眺める。
「先代の勇者が死んでから20年...人間どもも懲りぬな。これまで何人も勇者が
我の前に敗れ去ったというのに...それでもなお、我を討つ気でいるのか」
その顔には不敵な笑みが浮かぶ。
「今回の勇者は楽しませてくれるといいのだがな。」
声は低く、そしてどこか退屈を紛らわせるような獣の響きを帯びている。
その一方でガーデラは頭を垂れたまま、心の奥に小さな不安が芽生えていた。
(勇者誕生の儀――
村の若者たちが岩に刺さった古の剣に触れ、引き抜いた者が“女神の使命”を受け
魔王を討伐する。下らぬ伝説だとわかっている。魔王様の強さは絶対的だ。
しかし...)
それでも、胸のどこかがざわつく。
(物事に絶対は存在しない。もし...ほんのわずかでも魔王様が敗れるようなことがあれば...そんなことが起きれば...)
ガーデラは頭に浮かぶ不安を振り払うように目を閉じるが、ぬぐい切れない。
エデルスはガーデラのほうに視線を向ける。
「……ガーデラ。貴様、何か案じておるな?」
燭台の炎が細く揺れる。
「申し訳ありません。ただ、胸騒ぎがするのです、魔王様」
その言葉は、重く、静かに大広間へ落ちていく。
「貴様は側近として我に使えてからまだ浅い。
我の強さに不信を抱くのも仕方なかろう。」
ガーデラは思わず顔を上げる。
「いえ!滅相もありません。私は、あなた様を信じております。」
「よいよい。疑うのは当然なこと。これから己の目で見て
取り除いていけばよい。」
「...かしこまりました。」
その言葉を最後にガーデラは玉座の間を後にした。
玉座の間を出て、ガーデラは重い足取りで廊下を進んだ。
胸中に渦巻く不安は、もはや抑えきれぬほど膨れ上がっている。
そして、不安を晴らすために一つの策を決行する。
「……メルザ! メルザ!」
声が響いた直後、薄紫のローブをまとい現したのは。ガーデラ直属の秘書 メルザ。
「お呼びでしょうか、ガーデラ様」
紫の髪をかき上げながら、静かに答える。
ガーデラは迷いなく、淡々と切り出す。
「これからポラリスの村に潜入する。あなたのスキル、ポインター・テレポートが必要になる。ついてきて」
メルザの表情が一瞬で引き締まる。
「ポラリスの村に...ですか?一体、何のために?」
「儀式で勇者が判明し次第、即刻始末する!」
その場の空気が凍り付き、メルザの瞳が大きく揺れる。「!?」
ガーデラは冷静に淡々と話を続ける。
「勇者になった者はいくら弱くても、魔王様を殺す可能性がある。
厄介なことになる前に芽は摘んでおかないといけない」
メルザは唇を噛んだ。
魔王に絶対の忠誠を誓う身として、ガーデラの考えは理解できる。
だが、それは大きな“越権行為”でもあった。
「しかし、魔王様には何とご報告なさるおつもりですか?」
ガーデラは静かに目を細めて即座に答える。
「魔王様には”儀式の調査”という名目で向かう。
帰還後は『今回は勇者は現れませんでした』と報告すればいい」
その声色には、迷いは一切なかった。
「魔王様は私たちにとってなくてはならない存在...危険は避けないといけない」
メルザは深く息を吸い込み、静かにうなずいた。
「そうゆうわけで、協力してくれるわよね?メルザ」
「もちろんです。ガーデラ様のご決断に従います」
ガーデラの表情はわずかに緩んだ。
「よし、儀式は明日行われる。今のうちに潜入するわよ!」「はい!」
二人の影が長い廊下を駆け抜けていく。
魔王城の灯が揺れるたびに、これから起こる“決して魔王の知らぬ暗躍”の始まりを告げるようだった。
その夜。
ガーデラとメルザは、森の陰から村の様子をうかがう。
村人たちは明日の儀式に備え、広場に集まって談笑していた。
子供たちは岩を囲んで遊び、若者は緊張した面持ちで剣を見つめている。
メルザ腕を下に突き出し、魔法を唱える。
淡い光が二人を包み込み、その輪郭がゆっくりと変化した。
角が消え、皮膚の色が人間のものへと変わり、瞳も魔族の鋭さを隠す。
「これで、人間と見分けはつきません」
ガーデラは変化した自身の腕を一度だけ確認し、無表情のままうなずいた。
「よし。それじゃあ村に入るわよ。いい?この状態では
私はテラ、あなたはメルと呼び合うこと。人間として振舞うようするのよ」
「はい、ガーデr...テラ様」
二人は歩き出す。
石畳を踏むたび、周囲の家から夜食の匂いが漂ってきた。
二人が人間の女性を演じる中、ガーデラは村人一人一人に視線を向けた。
・無邪気に笑う少年
・誇らしげに胸を張る若者
・明日の儀式に怯えて泣きそうな少女
・老父母を安心させようと虚勢を張る青年
・気配を消すように隅に立つ妙に静かな娘
メルザが隣でささやいた。
「ガーデラ様、誰が勇者になるのかわかるのですか」
「いいえ。勇者ってのは剣が、女神が選んで決めるもの。単純な筋力や魔力だけ
では図れない勇者の素質。それを私たちが見抜くことはできない」
ガーデラの視線が鋭く岩に刺さった古剣へと向けられる。
「だから何人か候補を決めておく。そして明日、剣を抜いた者を始末する」
ガーデラの声は冷たく、迷いはなかった。
「魔王様の...私たちの未来に、少しの曇りもあってはいけない」
夜風が吹き、篝火が揺れる。村人の笑顔が照らされる。
その中で二人の魔族が明日の儀式に備え息をひそめていることなど、
誰も気づいていなかった。
翌日。
朝日が村を照らし、中心の広場にはすでに多くの人が集まっていた。
篝火の代わりに、太陽の光が岩に突き刺さる伝説の剣を照らしている。
村人たちのざわめきは期待と興奮に満ちていた。
やがて、勢いよく杖を鳴らしながら村長が前へ進み出る。
長い白髪を風に揺らし、朗々と声を張り上げた。
「これより、勇者誕生の義を行う!」
広場の空気がピンと張り詰める。村長は地面を踏みしめ、深く息を吸って続けた。
「今まで我々は、魔王の蹂躙によって多くの尊い命を失ってきた!」
「だが! それも今日で終わる!」
「今ここで誕生せし勇者が、必ず魔王を討ち滅ぼし、世界に平和を
取り戻してくれるだろう!!」
その言葉に、村人たちは歓声を上げた。拳を突き上げ、涙を流す者さえいる。
「勇者よ!!」
「頼むぞ!」
「魔王を……魔王を倒してくれ!」
ざわめきは熱狂へと変わっていく。
その一方でガーデラは歓声を聞きながら口の端をわずかに緩めた。
その笑みには温かさの欠片もない。
(おめでたい連中ね。過去に何人の勇者が魔王様に葬られてきたのか
知ってるくせに。いまだに希望だの平和だのって...よく信じられるわね)
村人の子供たちは、夢見るように目を輝かせている。
若者たちも期待に震えながら剣を見つめている。
「勇者が出たら、村も救われる」
「女神様が……見てくれているんだ」
「魔王なんて、勇者が倒してくれる!」
そんな言葉が聞こえるたび、ガーデラの瞳は冷え切っていく。
(愚かね。今日その勇者が私に殺されるとも知らずに...)
風が吹き抜け、剣の銀光が一瞬きらめいた。
その輝きが今日の儀式がただの“祭り”では済まないことを
予兆しているかのようだった。
「さあ!我ぞという者は前に出よ!」
村長の声が広場に響く。しかし、誰一人として動こうとしなかった。
若者たちは互いに視線を交わし、足を半歩引く。期待と恐怖が入り混じった
沈黙が、広場を支配した。
勇者になるということは、栄光と同時に、
死と隣り合わせになるということを意味する。
そんな空気を切り裂くように、ひとつの声が上がった。
「では...私から試してみても?」
人々の視線が一斉に向けられると、人間の姿をしたガーデラ、テラが
静かに一歩前へ出ていた。
ざわめきが広がる。隣にいたメルザが、思わず声をだす。
「テラ様!?一体何を!?」
ガーデラはそっとささやく。
「こういうものは、早く終わらせたほうが都合がいい。先に済ませておけば、
あとは本物が現れるのを待つだけ」
その声音には、焦りも迷いもなかった。ガーデラはゆっくりと、しかし迷いなく
剣の前へと歩み出る。
岩に深く突き刺さった剣は、朝日を受けて鈍い光を放っていた。
村長は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに頷く。
「よし...では、試してみるがいい」
広場が静まり返る。村人たちは固唾をのんで、その背中を見つめていた。
ガーデラは剣の前に立ち、そっと手を伸ばす。胸の奥で、冷たい感情が渦を巻く。
(勇者の剣。これまで幾度となく魔王様に牙を剥き、
わずかながらも傷を与えてきた忌まわしき代物)
指先が、剣の持ち手に触れた。
(でも、残念ね。お前の“新しい相棒”は今日、この場で……私が消す)
剣の柄を、軽く握る。その瞬間、村人たちは息を呑み、広場の空気が
張り詰めた糸のように震えた。
ガーデラの瞳には、冷え切った笑み、にゃりとした、確信の表情が浮かんでいた。
「...では」
静かに息を整え、柄を握った指にほんの少しだけ力を込めた。
その瞬間──
シャキィィンッ!!
空気を裂く鋭い金属音が広場に響き渡った。同時に、長年岩に突き立てられていた勇者の剣が、あまりに簡単に、拍子抜けするほどあっさりと抜け上がった。
村長「え?」
村人「え?」
メルザ「え?」
ガーデラ(......え?)
その光景に、広場は時が止まったように静まり返った。
「……あ、抜いた……剣を抜いた!!新しい勇者の誕生だーー!!」
村長の叫びと同時に、堰を切ったように村人たちが沸き立つ。
「やったぁ!勇者だ!」
「これで魔王を倒してもらえるぞ!」
「なんて神々しい光……!」
しかし、その喧騒の中心に立つメルザだけは、
ぽつんと取り残されたように呆然としていた。
目を見開いたまま、事態が飲み込めずにいる。
「……え? ガーデラ様が……? 勇者に……?いや……そんな……そんなはずが…ど...どうするんですかガーデラ様」
しかしガーデラは、ほんの一拍の沈黙の後、急に村人側へ向き直り、勇者の剣を高々と掲げた。
刃が太陽を反射し、神々しい光を放つ。
そして、完璧な“勇者の顔のまま宣言する。
「みなさん!私はった今、女神さまから世界の命運を託されました!
必ずや使命を全うし、魔王を討ち、平和を取り戻してみせます!!」
村人たちは一斉に歓声を上げ、広場は地面が震えるほどの熱狂に包まれた。
その騒ぎの中で、メルザだけが額に汗を流しながら
感心と尊敬を同時に抱いていた。
(さすが……さすがガーデラ様……今、不審な動きを見せれば確実に怪しまれる。
その場で即座に状況を分析し……完全に勇者を演じておられる……!)
ガーデラは再び村長のほうを向く。
「少し気持ちを整えたいので、場を外させていただけますか?」
「あっ、ああ!もちろん、勇者様。どうぞ、ご自由に!」
「……メル!」「はっ、はいっ!」
ガーデラは勇者の剣を携えたまま歩き出し、メルザは慌ててその後を追う。
二人は村の隅にある小さな小屋へと入り、扉が静かに閉まった。
小屋に入ると同時に、外の歓声が嘘のように遠のいた。
静寂が満ちる中、メルザは改めてガーデラの横顔をちらりと盗み見た。
「しかしガーデラ様……さすがでした。あの状況で一切動揺せず、
堂々と勇者を演じてみせるなんて……」
だが、メルザが言葉を続けようとした瞬間、
ガタガタガタガタガタ……ッ
妙な音が耳に入った。
「......?」
メルザは音のほうへの方へ視線を向ける。
そこには、勇者の剣を床に置き、
全身を激しく震わせながら両肩を抱きしめているガーデラの姿があった。
「お、おおおおお……お、おい、メ、メルメルメルザざざざ……っ
ど、どどどどう、どうなってい、い、いるんだだだだ……っ!!?」
瞳は完全に泳ぎ、顔は真っ青。先程まで広場で堂々と演じていた
勇者の姿はどこにもなく、ただのパニック魔族になっていた。
(めちゃくちゃ動揺してるーーーーッッ!?いや、誰より冷静だったのに!?
あれ演技!? ほぼ嘘!?あんな完璧な勇者スマイル浮かべてたのに!?)
ガーデラは壁にもたれながら、震える指を突き立てて叫ぶ。
「なんで!? なんで私が勇者認定されてる!?え!? え!? どゆこと!?ホントにどゆこと!?というか私、魔王討伐に向かわされるの!? 魔族なのに!?
どういう因果のねじれ!? 誰の陰謀!? 女神の嫌がらせ!?」
「ちょっ、ガーデラ様!落ち着いて、いったん、深呼吸を──」
「できるかぁぁぁぁぁ!!どうすんの....どうすんのよこれええええええ!!!」
小屋の中、外の盛り上がりとは対照的に、
ガーデラの人生最大級の取り乱しがで響き渡っていた。
はじめまして。一二三四 五六と申します。学生です。
本日から小説を書き始めることにしました。
もともと物語を作るのが好きだったんで思い切って始めました。
もし感想を書いてもらえたら、モチベが上がるので書いてもらえると幸いです。
そして一つ言っておきたいことが...私はストーリを作るのは得意なんですが
文章構成能力があまりにもクソなもんで、文章はチャットGPTを使って、読者の皆様に物語の情景
をわかりやすくイメージしてもらえるように調整しています。
でも、ストーリーは私が1から考えています。本当です。
そういうわけで、粗削りではありますがどうか温かい目で見てもらえると嬉しいです。
これからどうぞよろしくお願いいたします。




