【第四章 あらすじ】
ディルマ村は麦の生産地。山の麓にあり寒冷地だが、麦を主に発展してきた。
そんな村に一行が辿り着くと、村はがらんと静か。やっと発見した村人も同じ言葉を繰り返す。その顔や体は瘦せ細り、亡骸を揺する母親、何も持たない手を麦の収穫機に何度も空ぶる農家の男達など、身の毛もよだつ景色が広がっていた。
そんな中で輪達は村の一番奥にある村長邸へ辿り着く。村の周りは村民が囲み、中には入れない。
だが村長邸の中からこちらを覗く女性の影。一行は村長邸へ乗り込む事を決断。
中へ侵入、二手に別れたところで、リュシエルは笑顔を張り付けた両手が刃物に改造された死人形に襲われる。一方で輪とカトリナは、窓からこちらを覗いていた村長娘、ハナと相対する。
ハナから語られる村が蹂躙されていく様。
魔王配下、七大罪の強欲――マモンと呼ばれる狐の顔をした魔物が村長をかどわかし、村全体を実験と称し魂を吸い上げていた。村長は亡き妻を生き返らせられるならと、村の破滅を黙認。
ハナは泣きながら父とマモンを止めて欲しいと輪達に告げる。
そんな時、村長邸の裏手にある納屋から伸びる魔法陣。マモンは村全体から魂を贄とし、村長の妻を蘇らせようとしていた。マモンは笑みを浮かべながらリュシエルと対峙する。
指差すだけで相手を発火させる魔法。リュシエルはそれに風魔法、刀で相対する。輪とカトリナは車の新たな車種――X-HEADを開放し、二手に別れて魔法陣破壊に至った。
防御陣という自身の魔力量にかまけた絶対防御を披露するマモン。リュシエルは破壊できず、徐々に追い詰められていく。そんな中、二輪で駆けつける輪。防御陣を何故か軽々と突破し、その拳は頬を打ち付ける。
マモンは輪の魔力量を計測し――その結果に呆然。
炎なら避けられないと炎上させるが、輪はレッドベアから得たスキル『身を焦がす大火』を発動し無傷。村人達の無念と悔しさを拳に、足に乗せ何度もマモンを打ち付ける。
決着が付いた――そう思ったが、マモンはしぶとかった。自身の体を燃やし、残り火となって逃げ去る。「今度こそは貴様らも強欲の芸術の一つにする」と言い残して。
納屋の中には復活が完全に成功せず、液状の状態で生き返らせられた母親、それをかき抱く父の姿。ハナは涙を流し、父のした罪の深さを改めて理解した。
勝っただけで終わらない。老人や子供はループする日常、飲まず食わずの半月に耐えられず息絶えていたが、25人の生き残り。輪は小型トラックのコンテナに毛布やらマットを敷き詰め、搬送用として利用する事にする。リュシエルの力を借りて村人を全員乗せ終わる。
カトリナは心が壊れかけているハナと村に一時的に残る事を決心する。輪は彼女を信じ、ナビ子で繋がっているスマホを託すと、村を出た。生き残った村人達を、セレア街に搬送しなければならない。
【登場人物】
・牧野 輪
異世界に転移した元配送ドライバー。
生存と信頼を積み重ねながら、運び屋としての第一歩を踏み出す。
実は魔力消費が尋常ではない魔導式軽自動車、スズメ・ライフを常時稼働できるほど膨大な魔力を内に宿している。マモンとの戦闘で一方的に防御陣を退け、殴りつけられた理由もこちら。
現代知識・運転技術・戦術眼を武器に、巨大魔獣にすら立ち向かう度胸の持ち主。流石です輪様、さすりん。
所持スキル『身を焦がす大火』
・カトリナ
サラン村の村娘。素直で明るく、感情が表に出やすい性格。
輪の作る食事や振る舞いに強く影響され、やがて彼の手助けを申し出る。
最近では運転を自主的に買って出るなど積極的な一面も。たまに出る店を潰しかねないテロ発言も健在。
彼女は故郷が滅び、唯一の生き残りだった。そんな自分の過去にハナを重ね、彼女を支えるため崩壊したディルマ村に残る事を決意する。
・《M.G.S-03》ナビ子
スズメ・ライフに搭載された、超高性能魔導ナビゲーションシステム。
地図案内から車両制御、情報管理までお手の物。LAVへの変形も含め、当車両のバックアップあってこそ戦える。
もちろん、縁の下の力持ちであることに誇りと若干の自惚れあり。
遂に輪のスマホを乗っ取り、スマホからのナビゲーションも可能になり、もはや一心同体。
・リュシエル
冒険者の中でも数人しかいない上級冒険者、風魔法を扱う”暴迅”の二つ名がある。
お嬢様言葉には似合わない怪力と気品を併せ持つ。燃費もあまりよくなく、よく腹をすかし、気付いたら非常食のおにぎりなどをつまんでいる事も。
マモンとの戦闘で袴スカートは燃えてしまい、輪からバイクのライダースーツを譲渡される。黒のライダースーツ、ヒール付きのミドルブーツ、羽織りと更に元の衣装から現実離れしてしまった。
マモンとの戦闘で見事退けた輪に更に興味を持つ。怪人ドアノブ引き千切り。
・ハナ
ディルマ村、村長の一人娘。父親が妻を亡くし部屋に引きこもり、その間村の財務や畑の収穫などを取り仕切るほどの才女。
しかしマモンに取り入られる村長に何も言えず、結果として村の崩壊につながってしまった自身の選択を悔やんでいる。
母親譲りの長くしなやかな黒髪が自慢。御淑やかなお嬢様。
【車両】魔導車 スズメ・ライフ
・ワゴンR
輪が配送業時代に使っていた軽自動車・ワゴンR。
異世界で魔力動力に変換され、ナビ子(M.G.S-03)を中枢として稼働している。
車内には最低限の物資、通信端末などが揃い、まさに彼の“もうひとつの家”。
・戦闘車両 LAV(Light Armored Vehicle)
スズメ・ライフの変形・強化機構によって解放された戦闘モード。
重装甲の外装と高機動車輪、車載銃座を備えた黒い車体は、まさに異世界の常識を超えた兵器。
変形時はナビ子が自動で管制を行い、輪の操作を全面サポートする。搭載武装はMINIMI軽機関銃、衝角、電磁スモーク、照準補助魔導センサーなど。
なお、第2章終盤ではカトリナが初めて運転席に座り、輪との連携で真価を発揮することとなる。
・キッチンカー キャリー
スズメ・ライフの変形により解放された販売車モード。
側面に販売窓があり、その下にショーケースが設置されている。ボックス型の内部は広々。販売するものによって水場回りや冷蔵庫などが現れる便利仕様。
・小型トラックTPG
スズメ・ライフの積載重視、小型トラックモード。
コンテナを備え、積載量1.5t。内部の衝撃を吸収するバランサー機能も有する。
・X‐HEAD
ズスメ・ライフの変形・強化機構によって解放された二輪車搭載、悪路走行モード。
LAVには劣るが強化された走行と、悪路を走る為のオフロードモードを備える。二輪車、Z450を荷台に積み込んでおり、簡単に言えば二台での運用が可能。




