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清々しいほどの青空に

作者: 美代ゆり

主人公であるまさは大学受験に向け高校三年生をスタートさせる。

幼馴染であるタケルと高校最後の夏までの二人のお話。

高校三年生の夏、あの日を忘れたことはない。


幼馴染だったタケルは学校の屋上から飛び降りた。









タケルとは家が隣で親同士も仲が良かった。

小中高と同じで高校は二年間クラスが一緒だった。



お互い大切な親友で沢山笑ったし泣いた。

タケルと一緒ならどんなことにも挑戦できた。


しかし三年で

「あー、クラス離れちゃったね、」


クラス割の前で見るからに落ち込んだタケル


「クラス離れても何も変わらないって!」


そう僕が慰めた記憶がある。



何も変わらない、そう思っていた。



しかしタケルとは疎遠になるばかりだった。


タケルのクラスに行っても会えない日が続き、

僕は大学受験準備に追われていた。





そしてある日の夕飯で


母「タケル君最近どう?」


「タケル?」


母「ゆきさんがね。最近タケル君が元気ないって言ってたの」


ゆきさんはタケルのお母さんだ


「僕も会えてないんだ、、、明日学校が終わったらタケルの家寄ってみるよ」


母「そうしてあげて。そういえばタケル君受験どうするのかしら」


「タケルは頭いいから上目指すんじゃない?」


母「そう。」








次の日僕はタケルの家に向かった。



家から出てきたのはゆきさん


「ごめんねタケルまだ帰ってないの、」


「え」


タケルは部活も習い事もしてないはず、


「最近あの子帰りが遅くて、家の中でもずっと静かだし、

まさ君があの子と話してみてくれない?」









ゆきさんに言われ僕は久しぶりにタケルのクラスに訪れた

タケルはやっぱりいなくて共通の友人に話を聞くと

最近付き合いが悪いということしか情報が得られなかった。


学校中を探し回って保健室にいたところを見つけた。


「タケル!どうした?具合悪いの、?」


「いや大丈夫だよ」


「…そう、ねえ、タケルさえよければ家に来ない?」


僕がそう言うとまさは目を少し見開いた。


「まさの家?」


「お菓子もあるしミケにも久しぶりに会いにおいで!」


「…わかった」








母「あら!いらっしゃいタケル君!」


「お久しぶりです」


母「ゆっくりしていってね」




僕の部屋でタケルは決まって飼い猫であるミケを膝に乗せる。


ミケは僕らが中学生の時に拾った野良猫だ。

どちらかの家で飼うと言い張り両方の親を困らせたものだ。

ミケはタケルのお母さんであるゆきさんがアレルギー持ちであったため僕の家で飼うことになった。


久しぶりに会えてうれしいのかミケはゴロゴロとタケルに甘える。


タケルもそれに微笑んだ。


久しぶりにタケルの笑顔を見た気がする。


僕は単刀直入に切り出した。



「タケル、何かあった?クラス離れてからなかなか会えないし、元気がなさそうに見える」


「…何でもないよ」


「…ゆきさんも心配してたんだ」


「へえ、そうなんだ」


心ここにあらずの回答しか返ってこない。


しばらくして僕より先に彼が口を開いた。



「まさはさ、進路もう決めた?」


「進路?大学に進もうと思ってるけど、」


「…そっか、」



「タケルは!もう決めた?難関目指してるとか!」


「い、いや、そんな」


「タケルは絶対いけるよ!ずっと成績学年トップだもんな!」


「…そうだね、」


「でも、もう高校最後だなんて思えないよねー、早いな、」


「…ほんとにね。」


それからタケルは口を開くことはなく窓から見える夕焼けを眺めていた。


無音の部屋には外から蝉の声がうるさく木霊した。



そしてまた変わらず学校生活が過ぎていく


最後の進路相談アンケートが終わり皆受験に向け張り切っている。







そしてあの日タケルからメールが来た。


’’屋上に来てほしい’’


僕はタケルからのメールが嬉しくて階段を駆け上がった。






ドアを開くと青い空が広がり雲がまばらに散らかっている。



まるで大きなキャンバスに描かれた絵みたいだ





そこにタケルはいた。

屋上の柵の前で空を見上げている


彼の方に歩いて行こうとすると


「どうしてみんなはなりたいものがあるの?」



振り返って僕に言った。

突然のことで僕は固まった。


「僕何もないんだ。なりたいもの。

父さんは医者になれなんていうけど僕はなりたくない。

でも他に何をしていいのか分からない。


みんな将来を決めていく中で僕だけ止まってる。

何もしてないんだ、みんな努力してるのに。僕だけ…




そう考えてたら僕の生きてる意味って何だろうね…?」



タケルはずっと悩んでたんだ。

自分がどう生きていくかを決めれずに、周りに置いていかれていくことで

一人で孤独に苦しんでいたんだ。


悩みに悩み、生きていく意味まで喪失した。



僕は思わず叫んだ


「絵!絵は!?タケル絵を描くの好きだったよね!」


「絵?ああ、絵か、」


「そう!僕に書いてくれたでしょ!今日みたいな空の絵、僕まだ持ってるんだ!」


何故か冷や汗が止まらない


タケルを連れ戻さないとというよく分からない気持ちが頭を占める


「まさ、僕ね




絵の描き方も、もうわからないんだ。」



ああ、だめだ



いつの間にかタケルは柵の向こう側にいて



「最後に話ができてうれしかった。

最高の親友だよまさは、ありがとう」




苦しみから解放されるように



綺麗な笑顔を僕に見せて

青いキャンバスを背に

僕の前から離れていく




僕は走った



僕が伸ばした手は、ーーーーー。





















最後は皆さんのご想像にお任せします。

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