はぐれもの
直と豪太はそれぞれ抱えられながら、生徒会室の隅に移された。
「直、大丈夫?」
「健……? みんな? どうやって来たんだ」
健は後ろの方を指差す。そこには木端微塵になった生徒会室のドアが横たわっており、爆発の凄まじさを物語っていた。しかし、それもすぐに元通りに修復された。
「駒井は?」
翔平が豪太の脈を取る。少し安堵した顔で直に告げた。
「大丈夫だ、気絶してるだけだ」
「なんてタフな奴だ……」
直は思わずホッと胸を撫で下ろした。そして直は立ち上がろうとするが、痛みでうまく立てないでいた。
「山井くん、動かないで」
なごみは杖を取り出して一振りすると、直と豪太の傷が徐々に回復していった。その一方で、対角にいる里太郎は戸惑いを隠せずにいた。
「なんで……。結界は完璧のはずなのに……」
「さっきの爆発で一時的に結界が開かれたんだろう」
「そんな……」
里太郎は黒狸の言葉に呆然としながら、直たちのほうを見つめていた。彼らが互いに支え合ってる様子に、里太郎の胸には何かこみあげているような気がした。
――みんな、そうやって裏切るんだ……。
「みんな大嫌いだ!」
里太郎の叫びに、直たちは思わず飛び上がっていた。直たちはすぐに臨戦態勢を取るも、里太郎が黒い靄を手から放ち、檻を形成していく。そして直と健たちを隔絶していった。
「山井!」
「直!」
翔平は檻を目掛けて何度も何度も剣を振り下ろす。しかし靄で作られたはずなのに、鉄のごとくびくともしなかった。
「どうなってんだよ、これ……」
翔平は疲れ切ってしまい、壁にゆっくりと寄りかかった。里太郎は後ろから直にこう告げる。
「山井、勝負しよう。はぐれ者どうしね」
*
「あれ……? みんなどうしたん? そんなけったいな格好をして」
「お前もな。……今、山井と結城が戦っているんだ」
豪太はゆっくりと起き上がると、自分の格好にまた驚いているようだった。しかし、檻の外の格闘の様子に目がいく。
「あれが山井と結城……。狸の戦争かよ……」
豪太は鉄格子を掴みながら、二人の戦う様子を見つめていた。心寧は豪太を見て、一つの疑問を投げかけた。
「駒井さん、貴方は会長さんのことをどう思うんですの?」
「……どうでもいい。俺には関係ないから」
「本当にこのままでよろしいの?」
豪太はぶっきらぼうに彼女に答えた。
「何がわかるん? 君みたいな新参者に」
「わかりたくありませんわ」
「部外者は何も言わないでくれ」
心寧は口を噤んでしまう。その様子を見かねたのか、健は豪太にこう言った。
「向き合わなきゃだめだよ」
「うるさい。関係ない――」
パン――。
思わぬ痛みに豪太は左頬を抑えた。彼の目の前では、右手を赤くした翔平が立っていた。
「いい加減にしろよな! あれを見ても何も思わないのか!」
豪太はもう一度檻の外を見つめた。里太郎が直をどんどん追い詰めていく。その言葉の節々から、豪太の中で過去の記憶が呼び起されていく。
「俺があんなこと言ったせいで……あいつを怪物にしちまったんだな……」
豪太は尻尾をヘタリと力なく床につけて、その場でうなだれる。心寧は豪太に再び声をかけた。
「今なら間に合うと思いますわ」
「その根拠は?」
「ねえよ、そんなもん」
豪太の言葉を翔平は一蹴する。
その一方で、直と里太郎の戦いは激しさを増していた。里太郎は矢を振りかざしながら徐々に直との距離を詰めていく。直は険しい顔をしながら、なんとか攻撃をかわして引き離そうとする。
「山井、僕と同じだと思ってたのに」
「……」
里太郎はそう言って口を真一文字にする。彼の背後から禍々しい漆黒のオーラが付きまとう。
「なんで、君には助けてくれる仲間がいるんだ! ずるいよ!」
里太郎はそう言って、黒い矢を放っていく。
「っ……!」
二つの矢が直の両肩を掠る。痛みとともに血の滲みが服まで及ぶ。そのまま直は肩から崩れ落ちる。
「ぐはっ」
「ぐえっ」
「健くん?! 生地くん?!」
健と翔平の鈍い声とともに、心寧の悲鳴が直の耳を貫いた。直は振り向くと、二人の身体に矢が刺さっていた。
「やめようよ。こんなの……」
「なんで避けなかったんだよ!」
なごみはその場で涙を流し、豪太は健と翔平に怒鳴りつける。二人は刺された場所を抑えながらもゆっくりと立ち上がる。
「なんでだろうな……」
「痛みを受け止めなきゃって思ったんだよね……」
里太郎が思わず呟いた。
「そんな……。僕は傷つけたくなかったのに……」
そんなとき、てくてくと小狐が背中に四角い物体を背負ってやってきたのが見えた。そいつは里太郎と直の間に来ると、コヤーンと鳴いてその場に留まる。そして四角い物体はピピピッと鳴り始める。里太郎は血相をかいてその場から離れようとするも、緑の光に覆われて身動きを取ることができない。
「まさか……」
目の前には両手を掲げた直の姿があった。
「ごめん」
バーンッ――。
爆発とともに直と里太郎は爆風とともに打ち上げられた。




