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尋ねた手紙  作者: すごろくひろ
高校編 ② 敵は学友にあり?

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25/26

せいとかいちょう

 ――コンコン。

「はい、どうぞ」

 里太郎の声に応じて生徒会室のドアが開く。そこには直の姿があった。

「突然すまんな」

「いいよ。僕も煮詰まってて気分転換にもなるし」

 里太郎はそう言いながら、椅子に腰かけるよう直に促す。直はゆっくりとそこに腰かけると辺りをゆっくりと見渡した。

「珍しい?」

「生徒会室なんて滅多に入らないからな。こんなペーペーな人間は」

「いやいや、毎月来てるでしょ? 学級委員長さん」

 直の言葉に里太郎は乾いた笑い声をあげる。そして委員長会議で使う資料を直から受け取ると、自分の席についてそれらに赤入れしていった。その間、直は暇を持て余しながら、勝手に冷蔵庫から取り出した飲み物に口をつけた。

「こんなもんでいいかな」

 数分後、里太郎はニコニコしながら直に資料を手渡す。そんな彼とは対照的に直の表情はどんよりとしていた。

「うげっ、赤入れがたくさん……」

「まだまだ少ない方だよ。山井はちゃんとした文章書けてるし、誤字脱字もないから気楽に見れるよ」

 直はもう一度資料の赤の多さに圧倒されたままだった。里太郎の顔をチラッと窺うと、

『じゃ、これ直してきてね』

 と声が聞こえてきたような気がした。

「学生の本業は勉学だろ……って、学年一位はそんな心配ないか」

「……そんなことないよ」

 里太郎は少し声を落としながら、寂しそうな顔をして返事をした。

「……そっか。まあ謙遜するのもお前らしいがな」

 直はそう言って、生徒会室を出ようとした。




「やっぱり本当の僕なんて、誰も見ようとしないんだ……」



 ――ガチャ。ガチャ。

「あれ……、開かない?!」

「やっぱり君も、みんなと同じなんだね……」

 その声とともに、鋭い矢が直のすぐ横を通過する。おそるおそる振り向くと、そこには黒の装束を纏った狸耳の少年がいた。

「……」

 その少年は無表情のまま、もう一度直を目掛けて次々に矢を放つ。直は辛うじてその矢を避けながら、彼との間合いを取った。

「直!」

 緑狸の亮が直に飛び込んできた。そして光に包まれるとともに、かの狸耳つきの装束姿に身を変える。その光景にかの少年が少し驚きの表情を見せた。

「山井が変身した……?!」

 彼の言葉に表情を変える直。そしてこう尋ねた。

「……里太郎なんだな」

 彼は表情を少し緩めると、こう答えた。

「うん、そうだよ。さすが学級委員長の山井直だね。その様子だと全部察してるんじゃない?」

「やっぱりお前が……」

「そうだよ。僕が全部やったのさ。刑部様のお陰で僕は強くなれたんだ」

 里太郎がそう言うと黒い狸がヒョコっと現れた。そして里太郎の肩に乗っかると直たちの様子を窺っていた。思わずたじろぐ直であったが、彼の肩に乗っかった亮が声をかける。

「この人間をどうするつもりだ、黒狸よ」

 そいつは不敵な笑みを浮かべながら、こう答える。

「うるせえな三下ども。こいつと利害が一致しただけだ」

 里太郎はそいつの頭を優しく撫でてやると、再び直に矢を向ける。

「君は僕のことなんて何にも知らないんだよ。だって、今まで誰にも見向きなんてされなかったからね」

「お前は生徒会長としていつも――」

「みんなそう言うけど、結局離れていくんだ! 結城里太郎として見てもらったことなんてない! ただの中央の生徒会長としてしか見てくれないんだ!」

 そして弓から手を放す里太郎。直は両手を掲げて、放たれた矢の動きを辛うじて止める。

「限られた人じゃ意味がないんだよ。多くの生徒が、大半が、全員が! 認めてくれないなら、頑張っても意味がないんだよ」

 一瞬、直の手の力が緩む。そして矢は勢いを残したまま、直の装束を掠っていった。その状況に直は身体を震わせるしかなかった。そんな彼をよそに里太郎はゆっくりと近づいてくる。

「山井、多数決の原理ってどういうものか知ってる?」

「……多数の意見をもって、集団の意見とするってやつだろ」

 直の答えに、里太郎は頷いた。

「今までは無視されがちだったけど、刑部様の力で僕のみんな賛同してくれるようになったんだ。やっと僕の物語が始まったんだ。だから――」

 里太郎は直を小突いた後、倒れこんだ彼の喉元に矢を近づける。

「ハッピーエンドを迎えるまでは、誰にも邪魔させない」

 直は身動きが取れなくなった。しかし能力で里太郎の動きを止め、彼の手をはたいて矢を彼方へ投げつけた。

「俺は里太郎みたいに頑張ったことがないからわかんないけど、今のやり方は間違ってると思うぞ」

 直は里太郎の胸倉を掴み、平手を彼の頬を目掛けて勢いよく振りかざした。その瞬間、頭に一発の衝撃を受ける。

「痛っ……!!」

 その後、直は横方向に吹き飛ばされた。そしてゆっくりと起き上がると、目の前には仲間だったはずの犬耳つきの装束姿の少年が、スパナのようなものを持って佇んでいた。

「こっ、駒井……?!」

「こいつに手を出すなら、俺は許さない」

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