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24【逃走者】

 賊に襲撃されている宿屋の前の路地から二人の男女が様子を覗き見ていた。二人並んで狙撃されている窓を見上げている。


 一人は背中に長剣を背負った大男。身長190センチぐらいで、上半身だけのプレートメイルを纏っていた。無精髭を生やした顔から、年齢は三十代だと思われる。


 背中に背負う長剣は身長より長い。斜めに背負っていなければ剣先が地に着きそうである。


 そして、一人はローブ姿に、つばの大きなとんがり帽子を被った女性であった。まだ歳は二十歳ぐらいに見える。


 ローブの下は過激なタイトドレス。大きなバストが胸元まで露出していて、下半身の丈も極ミニのタイトスカートである。そして、手には大きな木の杖をついていた。


 無精髭を撫でながら大男が述べる。


「ティルールの狙撃が始まったが、商人の方は討ち取ったのか?」


「どれどれ〜、ワシが見てあげよう」


 巨漢の背後から覗き見る女性の眼は青白く輝いている。何かの魔法を使っているようだ。


「あらやだ……」


「どうした、マージ?」


 魔法使いの女性は眉をハの字に変えながら述べた。


「バンディがやられて逃げ出したわよ」


「殺されたのか!?」


 無精髭の大男は仲間の心配をしていた。その表情は本気である。


「いいえ、プレートルが背負って逃げてるわ。もうすぐ正面から出てくるわよ」


 すると彼女が言う通りに、気絶しているスカーフェイスを背負って神官風の男が酒場の正面入り口から駆け出てくる。その様子は必死。完全に負け犬の逃げっぷりだった。


「ちっ、失敗か……」


 無精髭の大男が舌打ちを漏らすと、魔法使いの女が自慢げに言った。


「だからワシがファイヤーボールで部屋ごと吹き飛ばそうかって言ったのじゃ。その方が早かったじゃないのさ」


 無精髭の大男はとんがり帽子にチョップを落としながら返した。


「いたぁ! 何をする!?」


「それだと、お嬢様ごと丸焦げになるだろうが。身元すら分からなかったら報酬はもらえないんだぞ。だから却下したのが分からねえのか!」


「もう、面倒臭いのぉ〜。ドガーーンっと一発で決めようじゃないか」


 魔法使い風の女性は嫌だ嫌だとジェスチャーで振る舞った。その仕草に男はイラつきを見せる。


「それよりも、ティルールに退却だと知らせろ。今回は一旦引くぞ!」


「ティルールなら、もう逃げてるぞい。ワシのカラスが言ってるわい」


 巨漢の男が空を見上げれば、カラスが一匹上空を旋回していた。マージたる魔術師の使い魔である。


「なら、俺たちも引くぞ、マージ」


「はいはい、分かったぞよ〜」


 引き際に無精髭の大男は、もう一度だけ宿屋の二階を睨み付けた。その眼光は鋭い。


「室内戦じゃあなかったら、俺の長剣でザッパリと刻んでやったものを……」


「あれ、なんでエペロングは行かなかったのじゃ?」


「それも最初に言ったよな!」


「覚えていないぞよ?」


 魔法使い風の女はとぼけてみせる。それに対して大男は鼻息を荒くしながら述べた。


「俺の長剣は長すぎるから、建物の中だと壁に引っかかって振れないんだよ!」


「うわ、馬鹿っぽいのぉ〜」


「クソ魔女が、殺すぞ!」


「キャハァハァハァハァ〜」


 笑いながら走る娘を大男が追っかけて行った。そして、二人は裏路地の奥に走って姿を消した。それをカラスが「アホーアホー」と鳴きながら追っいかける。



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