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未経験者大歓迎!新入部員、募集中!

 「同好会、ですか?」

 午前の授業の合間、急にユーリをパティエが尋ねに来た。冒険者同好会の勧誘が目的だったようだ。

 部活というよりはサークル活動に近い形式のようで、パティエたちの他にも職業冒険者を視野に入れている生徒達が集まって同好会や公認クラブを設立している。

 入学時に簡単な説明はあったが、受けられる依頼が制限されるため学生活動の域を出ないと判断し、ユーリは酒場でのアルバイトを優先したのだった。

 もしも活動に参加するとしても、まずはきちんと授業を受けて能力を身に着けてからの方が望ましいだろう。

 「今は酒場の仕事もありますし、あまり時間が取れないかも知れなくて」

 「うーん。そっか、まあ籍を置くだけでもいいし、興味が湧いたら教えてよ。ウチは戦闘研究がメインだから」

 確かに一人で修練しているよりは、誰かと一緒に活動する方が効率的だろう。昨日の活動を考えると、意外と戦闘も経験できるかも知れない。それに、冒険者はパーティ行動が原則になる訳で、戦いのシミュレーションや復習などもできる。

 テーティスに相談すれば、バイトの日数を調整することもできると思うが、まだ貯蓄がないユーリには実入りが減るのはダメージが大きい。

 最後に何故か「男子もいるよ」と付け加え、パティエは帰っていった。

 (そういえば、男子とは全く喋る機会がないな・・・)

 ユーリの基本クラスには男子が一人も居ない。タイミングの問題もあるが、男女比が偏りすぎると全員が同じ性別に寄せられるらしい。ユーリのように突然の編入になると、男女比が半数のクラスか偏ったクラスに分けられるという事になる。

 (とは言え、漫画やゲームの話題もない訳だし、男子と共通の話題もないから特に話す事もないのか)

 「ユーリっち、今の誰~?」

 ユーリが席に戻ろうとすると、ミッチ達が話しかけて来た。

 「うん。昨日の実習で出会った先輩で、冒険者の同好会に誘われたんだけど断っちゃった」

 「ユーリっちって何処にも入ってないんだっけ」

 「入ってないけど、皆はどこかに所属してるの?」

 「ウチとプリシラはスイーツ研究部に入ってるー。ジェシーは入ってないけど、運動部とか同好会でよく遊んでるよ」

 三人とも趣味の範囲での活動のようだ。

 「スイーツ研究部って、お菓子を作るの?」

 「いやー、食べるだけだよー。新年祭で王国とか共和国のお菓子屋を食べ尽くすよー」

 「えぇ、太るよ・・・」

 自分の事は棚に上げておく。昨日のステーキ三枚、約450グラムとシチューは夜のうちに消化しきれず、朝食はスープだけとなっていた。

 「そこはだいじょーぶ。ウチもミッチも太らない体質だし!」

 プリシラの発言にユーリの体温がカッと急上昇する。そんな体質が本当に存在するのだろうか。いや、確かに男の中でも痩せの大食いは居た事を思い出す。その時は何とも感じなかった筈が、今のユーリは言い知れぬ怒りを感じてしまっていた。

 (その体質だってチート能力じゃないか!)

 「てかユーリっち、今日身体測定じゃない?」

 「え?」

 そういえば、入学してから二週間程度で再度身体測定があるという話だった。入学時に魔法を使った経験がない場合、暫く経過してから魔力の状態を計測する。同時に、身体測定及び健康診断を行う事になっていた。外の国から入って来た場合、モーリアス地域での流行り病などの抗体が無い可能性が高く、入国から少ししたタイミングで感染する可能性も高い。

 だが、そんな事は今のユーリにはどうでもいい事だった。

 「な・・・何で、今日なの!?」

 明らかに太った事を自覚できる下半身。まだ消化しきれずに身体の中に残っている何百グラムかの羊肉。全ては終わっていた。

 


 測定は制服の上着を脱いだだけの状態で進められた。服を脱ぐものと思っていたが、服の重さなどは魔法で無力化できるため不要との事だった。ちなみにスリーサイズを計測するという文化は存在しないようである。

 想定通り、二週間前と比べて明らかに増加した体重にショックを覚え、ユーリはため息を吐いた。

 「有酸素運動しかない。走ろう・・・」

 身体測定の結果、魔力も肉体も問題ない事を伝えられた。平均体重といったものは公表されていなかったが、一緒に身体測定を受けた女生徒を見る限り、ユーリは細身とは言い難い。身体を動かしてはいるため、太っている訳では無いが。

 「いい心がけね、ユーリ・アヤセさん。貴女この前も身体強化無しでトレーニングしていたわよね」

 声の方をみると、半袖から筋肉質な二の腕を覗かせた女教師が、笑顔でユーリを見ていた。

 「え?・・・はい。魔力無しでも、戦ったり抵抗できる方がいいかなと思って」

 「冒険者志望なのかしら。それとも騎士団に興味があったりする?貴女みたいな真面目で筋肉に興味のある娘なら、私たちも大歓迎よ」

 そういえば、この教師は騎士団から派遣されているという話だった。

 「あ、ありがとうございます。でも進路はまだ決めかねていて・・・」

 「そうなの?私が言うのもなんだけど、やりがいもあるし安定してる職業だから、おススメよ」

 そうやって騎士団への道を勧めた後、近接戦闘同好会について説明してから去っていった。このように勧誘があるというのは、あまり人気が無い職業なのかも知れない。給与が低いか、ハードな職場なのか。

 「近接戦闘同好会かあ・・・」

 確かに戦闘技術や経験はユーリにとって不足だと感じている。授業だけで経験値を積む事も難しいし、正式な騎士団に所属する教師に師事できるのであれば、大きなプラスになるだろう。

 「時間がもっとあればなあ」

 中高生の頃は部活や委員会活動、大学の時はバイトをしていた。それでもゲームをしたりゴロゴロしたりと時間に余裕があったように思える。しかし娯楽のないこの世界に来てからの方が、時間に余裕が無く感じられる。

 フランは何処かに所属する予定はあるのだろうか。テーティスが在学時に何をしていたのかも気になる。

 (今日帰ったら聞いてみよ)

 アーシェラは七賢者などの活動もあるようだし、何か顧問的な事をしている感じもない。アドバイスは貰えるかもしれないが、後回しでいいだろう。

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