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【異世界らしい設定】

しかし、尾行するにもハナちゃんの家が分からないのでは、と気付いた土曜日の夜。連絡先を交換したばかりの芹奈ちゃんからメッセージが届いた。


「先輩、明日はここに集合です」


そこには位置情報が。


「ここはどこなの?」


「綿谷先輩の家の近くです」


「どうやって知ったの??」


「職員室に忍び込んで調べました。結界とかたくさんあって大変でしたけど、頑張ったんですよ?」


「大変だったね。ありがとう!」


ありがとう、

と送ったものの、若干の後ろめたさを感じる。


ハナちゃんの個人情報を勝手に入手し、芹奈ちゃんには大変な悪事を働かせてしまったのでは……と。


「明日、楽しみにしていますね!」


芹奈ちゃんは大人しそうに見えるが、思ったより行動的みたいだ。人って分からないものだな……。




そして、日曜日。

朝の九時から僕らはハナちゃんの家のすぐ近くにいた。


「先輩、その恰好で尾行するつもりですか?」


「だ、駄目なの?」


「せめて、これで顔を隠しましょう」


そう言って芹奈ちゃんは

自分の頭にあったキャップを僕にかぶせる。


……かすかに良い匂いが漂ったが、僕は紳士的に表情を保った。


しかし、ハナちゃんの用事とやらが何時からなのか、僕は知らない。だから、ほとんど張り込み状態だった。


その間、芹奈ちゃんはたくさんの質問を僕に投げかけた。たぶん、気まずい沈黙を避けてくれたのだろう。


何て気が利く後輩なのか。


で、その質問内容は僕とハナちゃんに関するものが多かった。


いつ出会ったのか。

土日に会うことはあるのか。

普段二人でどんな話をしているのか。

なぜ一緒に登校するようになったのか。

ハナちゃんからどんな風に呼ばれているのか。


などなど。


そうしている間に、お昼になった。

空腹をどうにかしたいが、ここを離れるわけにはいかない。交代でコンビニに行って済ませるか……と思ったのだが。


芹奈ちゃんが民家の塀に向かって手をかざした。


「えい!」


彼女が掛け声をあげると、

塀に一瞬だけ魔法陣のようなものが浮かび上がった。


もしかして、何か魔法を使ったのか?


「この子が綿谷先輩の家を監視してくれます」


と、芹奈ちゃんは魔法陣を指さす。


「この子が見た景色は私のスマホにリアルタイムで映る仕組みなので、離れても安心です」


ま、魔法すげえ……。

驚く僕に芹奈ちゃんは笑顔で言う。


「なので、ファミレスでご飯でも食べませんか?」




お昼どきであるにも関わらず、

近くにあったファミレスには、すんなりと入れた。


料理がくる間、魔法についてあれこれと芹奈ちゃんから聞くことにした。


「魔法って、どんなことができるの?」


「どんなこと、って言われても……。四元素を使った攻撃魔法とか、さっき使ったサポート魔法とか。あの、中等部で習うようなことしか、説明できませんよ?」


そういう基本的なことが聞きたいんだ!


でも、後輩に何も知らないやつだ、って思われたくないなぁ。


僕が動揺していると、芹奈ちゃんは何かを察してくれたのか、魔法について話してくれた。


「基本は、大気中のマナを吸って、体内のプラーナと融合させて魔力を作ることです。なので、魔法使いを目指す子供は、十歳前後までマナを体内に取り入れるため、呼吸の練習ばかりするんです」


マナとプラーナ。

何かのゲームで見聞きしたことがあるぞ。


マナは空気中にある神秘的な力、

プラーナは人の中に流れるエネルギーみたいなもの。


だったかな?


「あとは魔法コードをたくさん覚えます。覚えた魔法コードを頭の中にイメージして、体内に取り組んだマナを、その形に魔力変換すると、魔法が使えるんです。なので、マナを取り入れる呼吸が上手いこと、正確に魔力コードを記憶すること、それを素早く魔力変換できることが、優秀な魔法使いの条件だと言えます」


魔法コードとは何だろう。


「魔法コードは魔導書を読んで覚えるんですよ。これです」


そう言って芹奈ちゃんが本を取り出し、僕に見せてくれた。


「な、なんだこれ……」


そこに書かれているのは、

数式だろうか。いや、化学式と言うべきなのか。


元から勉強が得意でない僕にはその判断も付かない。


「これ、どういう意味なの?」


「意味、ですか? 覚えるだけなので……考えたこともありません」


意味は理解する必要はないのか。どういう仕組みなのかはわからないが、この世界のルールに則った何かなのだろう。


「何で芹奈ちゃんは魔法使いになろうとしたの?」


「え?」


シンプルに気になったことを聞いてみたが、芹奈ちゃんは凄く驚いているみたいだった。


それとも、また非常識なことを聞いてしまったのだろうか。


「えっと、猪原家は魔法使いの家系なんです。だから、私も芹奈って名前で……あの、もちろん女神セレッソ様の名前から取っています」


魔法使いと聖職者は、

セレッソの名前を取った人が多いんだっけ。


そう聞いたような……。


「でも、先輩……」


芹奈ちゃんはどこか不安そうに聞いてきた。


「子供の頃、職業適性検査を受けなかったんですか?」


「えーっと、いくつかの質問に回答すると、自分がどんな職業に合っているのかわかるってやつ?」


芹奈ちゃんは首を傾げる。


「あの、オクトの国民はプラーナの性質を子供の頃に調べてもらうはずなんですけど……」


芹奈ちゃんは憐れむような目で僕を見ている。


もしかして、幼少期に捨てられた子とか、密入国者と思われているのではないか。


「プラーナで身体能力を強化できるタイプなら勇者、魔力変換が得意なら魔法使い、マナに影響を与えるタイプは聖職者。先輩も、勇者タイプのプラーナをお持ちで、その証明書があるから、勇者科に入れたはずですけど……」


「……ああ、うん。もちろん、勇者タイプだよ。そうそう、やったよね適性検査」


そんなものあったのか……。


今まで知らなかっただけで、

この世界もちゃんと異世界っぽい設定があるんだなぁ。


プラーナの証明書、僕はどうしたんだろう。


たぶん、セレッソが何とかしてくれたんだろうけど……


裏口入学みたいで何か嫌だなぁ。


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