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【部屋、寄ってく?】

土曜日と日曜日は、ほとんどクラムで練習。


三枝木さんと一緒に、

皇の弱点がないか過去の対戦映像を見たが、僕にはさっぱりだ。頼りの三枝木さんなら、と思ったが……。


「困りましたね」と三枝木さんも呟くのだった。


練習は夕方で切り上げ、家に帰る。ゆっくりと休むつもりだったが、何もしていない自分が落ち着かなくて皇の対戦映像を見ることにした。


「マジで勝てる気がしない……」


「気持ちで負けるな。自分を信じろ」


「うわぁっ、びっくりしたぁー!」


言うまでもない。セレッソだ。


こいつは僕の部屋の合鍵を持っているので、断りもなく入ってくる。週に何度かあることだが、いつになっても慣れない。


いや、そもそも勝手に入ってくるなよ。


「なんだよ、何の用だ?」


「お前のモチベーションを上げてやろうと思ってな」


「何かしてくれるのか?」


「こんなに可憐な美女である私といるだけで、モチベーションは上がるだろう」


「……」


美女であることは、認めてやろう。外見的なことだけで言えば、それは否定できないことだ。


しかし、お前の場合はそういうことじゃないんだ。


「出て行け。お前と遊ぶ暇があったら、一分でも長く皇の研究に時間を費やすんだから」


「入れ込み過ぎると逆に良くないぞ。トランプでもするか?」


「あるのか?」


「いや、お前が買ってこい」


なんだこいつ……。

絶対に自分が暇だから遊びにきただけだろう。


「帰れ。暇じゃないんだよ」


「トランプは嫌か。人生ゲームならあるぞ?」


「そういう問題じゃない。っていうか、なんで人生ゲームは持っているんだよ」


「宗次がきたら、三人でやるかもしれないからな。買っておいた」


「三枝木さんがやるわけないだろ」


そんなこんなで、

セレッソは夜になるまで帰らなかった。


あいつがいなければ、もっと皇の研究ができたのに……。




週が明けて月曜日。

久しぶりにハナちゃんとスクールに登校することになった。


ハナちゃんに会うこと自体、勇者になったお祝いに顔を出したとき以来だ。あのときも、色々な人がきてたから、ほとんど話せなかったけど……。


「対戦、決まりそうなのか?」


その話題、来るのか……と複雑な気持ちになる。


「わからないけど……今日、申請書は出すつもりだよ」


「ふーん。皇は強いけど大丈夫か?」


どういう意味なんだろう、と勘ぐってしまう。


僕なんかが皇に勝てるわけがない。ハナちゃんもそう思っているのだろうか。


「わからないけど、土日は三枝木さんにしごいてもらったよ。帰ってからも、皇の対戦動画を見て研究するつもりだったんだけど、セレッソが邪魔してきてさ。無駄な時間を過ごしてしまった……」


「帰ってから?」


「うん。人生ゲームなんかやりたがってさ。二人でできるわけねぇだろ、って言っても聞かなかったんだよ」


「……ふーん」


そこから、ハナちゃんは黙ってしまった。


僕が何か質問したり、三枝木さんの意外に怖いエピソードを話したりしてみたが、空返事ばかり。そうこうしている間に、スクールに着いてしまったので、微妙な空気のまま、解散してしまった。


何か怒らせるようなこと言ったかな?


考えてもわからなかった。

どうすれば許してもらえるんだろうか……


と考えていると、お昼休みにハナちゃんからメッセージが入った。


「帰りに話があるから、誰かと約束入れたりするなよ」


話がある?

なんだろう。

さっき言えば良かったじゃないか。


ちょっと怖いな。


明日から皇と一緒に帰るから、これからは一人で帰れ……とか言われたら、どうしよう。


だとしたら、マジでへこむ。

メンタルやられて対戦どころじゃないぞ。


放課後まで、

僕は気が気じゃない状態で過ごした。それなのに、授業中は皇が隣の席に座っているものだから、本当にメンタルが崩壊してしまいそうだった。


放課後、雨宮くんが笑顔で話しかけてきた。


「あ、神崎くん。ネットに上がってないフィリポの対戦映像をゲットしたらしいから、一緒に――」


「ごめん、また今度!」


本当にごめん、

今日は誰とも約束を入れられないんだ!


校門の前、ハナちゃんが既に立っていた。


「よし、帰るぞ」


「う、うん」


二人で歩き出す。

が、ハナちゃんは黙ったままだ。


やっぱり怒っている?

なんだろう、とりあえず謝ってみようかな……?


いや、無暗に謝るよりは、話が何なのか確認した方がいいか……。


「あの、ハナちゃん?」


「なんだよ」


やっぱり、何かトゲがある。


「話って……なんでしょうか?」


「ここだと話しにくいから……その、もう少し人のいないところが良い」


「そ、そっか」


そうか。

スクールの近くだと知り合いに見られて面倒かもしれない。


ハナちゃんは有名人だしな。

そういうとき、ハナちゃんはアボナダタークの駅に移動してから、話し始めることが多い。


今回もそう言うこと何だろう。


と、思っていたが、ハナちゃんは途中で足を止めた。


「どうしたの?」

「……いや、べつに」


なぜ、ハナちゃんは止まったまま動かないんだろう。何か原因がないか辺りを見回すが、特に変わった様子はない。だが――。


「あれ、ここ僕の家の前じゃん」


「ん? あ、そう言えばそうだな」


ハナちゃんは僕の住むマンションを見上げた。


「そう言えば、お前の部屋、入ったことないよな。そうだ、ちょうどいい。お前の部屋で話すか」


「……え?」


僕の部屋に?

ハナちゃんが?

入るの?


「なんだよ、駄目だって言いたいのか」


ハナちゃんが睨み付けてくる。


「そそそそそんなことないよ!」


じょ、女子と……しかも、ハナちゃんと密室で二人きり?


僕の理性、大丈夫か……?

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