【華の防衛戦①】
ゴングが鳴り響くと同時に、
二人は飛び出すように前へ出た。
ケージの中央、二人は近い距離で向き合う。
細かいフェイントを見せるジュリアだが、華も機敏に反応して見せた。先に仕掛けたのはジュリア。矢のような右の拳を突き出す。
その一撃は鋭く、あまりに速かった。
ガツンッ、と音を立てるように、華の顎を捉え、彼女の動きを停止させる。
ジュリアの鋭い攻撃はたった一発で、華の意識を奪ったのだ。
「瞬殺です!」
華は意識を失っている、
と確信したジュリアは、畳みかけるために、さらに前へ出た。
が、同時に華も一歩踏み出す。
それはジュリアにとって想定外の一歩だ。
二人の距離がゼロに。
華の腕がジュリアの腰に絡みついた。
(組み付かれた!)
とジュリアは華を引き剥がそうとしたが、その判断はやや遅い。華はジュリアに組み付いたとほぼ同時に、彼女の足を払ったのだ。
バランスを崩して
倒れるジュリアだったが、瞬時に立ち上がろうとした。
しかし、正面に華はいない。背後から重圧。華がジュリアの後ろに回り、その背中に乗っていた。
腰の辺りに華の足が絡みつく。
かと思うと腕も首に絡みついてきた。
背後から首を絞める技。
バックチョークだ。
ジュリアは寸前で華の手首を掴み、首の拘束を引き剥がした。バックチョークを外した、かと思ったが、今度は後ろから顔面に叩きつけられる拳。
これ以上、ダメージを受けるわけにはいかない、とジュリアはあえて背中からマットへ倒れた。華をマットに叩き付け、拘束が緩んだ瞬間、すぐさま体勢を返して、上のポジションを取る。
立った状態で華を見下ろし、ジュリアは呟いた。
「危ないところでした。油断ならない人ですね」
「安心するには早過ぎるんじゃないか」
「仰る通り。ここから、しっかりと叩きのめしてあげます」
ジュリアは仰向け状態の華へ右の拳を叩き付ける。が、華はわずかに体勢を変えてそれを避けたかと思うと、自らの足をジュリアの足に絡めてきた。
ジュリアが危機を察知するとほぼ同時。華の足が巧にジュリアの足を捻り上げる。ジュリアがバランスを崩して倒れると、またもポジションが変わっていた。
つい一瞬前までジュリアが上から見下ろしていたのに、今は華を見上げている。
そして、連続で叩き下ろされる拳。ジュリアは両腕で顔面を守ったが、その手首が握られた。
(アームロック狙いか――)
ジュリアは手の拘束を素早く払うと、足を使って華を突き放し、瞬時に立ち上がった。
ジュリアが立つと、会場が沸き上がる。ジュリアは距離を取りながら考えた。
(やはり、組まれると倒されてしまう。倒されたら首や腕を狙われる……。組まれない距離を保たなければ)
ジュリアは慎重に距離を詰め、
打撃を放つタイミングを見計らった。
が、華が踏み込む。高速のタックルが一瞬でジュリアを押し倒した。
すぐさま立ち上がろうと腰を上げるジュリアだが、華の組み付きはしつこい。ジュリアは力技で華を引き剥がそうとするが、次の瞬間には足を払われて倒されてしまった。
顔面を何発か殴り付けられたが、
それでもジュリアは強引に立ち上がり、すぐさま前蹴りを放つ。
槍のように伸びた足が華の腹部に突き刺さり、その衝撃によって彼女を金網際まで後退させた。
(第二体育館でやったときと、ぜんぜん違うじゃありませんか!)
ジュリアの額に冷たい汗がつたう。
(次は組ませません。絶対に――)
思考するジュリアへ華が高速のタックルで組み付いてきた。タックルをしっかり受け止め、引き剥がそうとするが、次の瞬間には足をかけられ、倒されてしまう。
(これが暫定勇者の実力……。しかし、私だって!)
ダメージを負いながら、何とか立ち上がるジュリア。
打撃で反撃を狙うが、次の瞬間には華がタックルで組み付いてきてしまう。
そんな展開が何度か続き、
あっという間に第一ラウンド終了を告げるゴングが鳴るのだった。
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