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【暫定勇者とは?】

「で、魔王はどこにいるんだ?」



やる気は出たものの、敵がどこにいるのか分からなければ、何も意味はない。なので、僕はセレッソにごく当たり前の疑問を投げかけてみた。セレッソは答える。



「ここから、ずっと北の方にあるアッシア帝国。その都の中心に城を構えている」


「……それ、気軽に行けるの?」



セレッソは首を横に振った。



「まぁ、そうだよな。しかも、魔王って言うんだから軍勢も率いているんだろうし、まずは仲間を探すっていうのが、定石なのか?」


「勘が良いな。流石は英雄になる男だ」



僕は得意げに鼻を鳴らす。



「よくあるパターンだからな。だいたいはどこかの国の王女と偶然出会って手柄を立てて、国王からその力をぜひとも貸してほしい、とか言われるんだろ?」



女神はなぜか真顔のまま、数秒間、僕を見つめた。そして、僕が話したパターンについては、何もコメントすることなく、こんなことを言うのだった。



「良いだろう。では、お前の当分の目標を教えておく」



女神は僕を人差し指でさす。



「誠、まずはスクールへ通え」



意外な展開と言えば意外だったが、彼女が出したワードに、僕は顔を引きつらせる。



「ふざけるな。何で異世界にまできて学校へ行かなきゃならないんだ? 僕は学校に通う生活が嫌になってこっちに来たんだぞ」



女神は冷静に答える。



「ただの学校ではない。国家を守る人材を育てるための学校だ。特に今は、魔王を倒す勇者の育成に力を入れている」


「ゆ、勇者!」



僕が異世界で活躍するための、重要なワードが出てきたようだ。期待してセレッソの説明に耳を傾けようではないか。



「この国、オクト王国は……いや、この世界は今、魔王が統治するアッシア帝国の脅威に晒されている。魔王の脅威を排除しなければ、この世界の日常は崩壊すると言っても良い状況だ。そのため、オクト王国は、魔王を倒すための戦準備を進めている。そして、この戦の要となる戦力が勇者だ」



どうやら、僕が召喚された異世界の国は、オクト王国と言うらしい。



「要はエリート兵士みたいなものか。でも、僕が勇者になる必要はあるのか? わざわざ学校に通って勇者の資格をゲットしなくても、王様に戦力として認めてもらえばいいじゃないか」


「直接国のトップに自分を売り込むつもりか? ゲームでもないし、一般人が勝手に城の中に入り込めるわけがないだろう。一般兵として志願して、紛れ込むこともできるかもしれないが、それでは決戦に遅れてしまう」


「決戦って?」


「近々、オクトはアッシアに対し決戦を挑む予定だ。しかし、オクトはアッシアに比べて戦力で劣っている。正面からぶつかって消耗戦になっては、勝ち目はない。だから、一点突破によって魔王を討つ必要がある。その突撃の際、先頭を切るのも勇者の役割だ」


「そうだとしても、僕一人が勇者という精鋭に加わっただけで、戦局が変わるものかな?」

「質問の多いやつだな」



セレッソは煩わしそうに溜め息を吐くが、すぐに説明を再開した。



「お前が勇者として、決戦に参加しなければ、オクトは確実に滅びる」



彼女は断言した。



「なぜなら、魔王は強いからだ。この国がどれだけ強い勇者を育てたとしても、魔王には勝てない。何十年、何百年かけて、強い勇者を育て上げたとしても、魔王を倒せる戦士を生み出すことはできないだろうな。それは自然の摂理。世界のルールと表現しても過言ではない。それだけ、魔王は決定的に、絶望的に、壊滅的に強い。だが……」



セレッソは言葉を区切ると、何やら意味深げな視線で僕を見る。



「ただ一つ例外がある。言うまでもないが、お前だ。お前だけが魔王を倒せるくらい、強くなれる」



セレッソがなぜそこまで確信して言えるのか、僕には分からないが、悪い気分ではなかった。



「学校は嫌だけど、通うだけで勇者の肩書が手に入るなら、行っても良いのかもしれないな」



僕の呟きに、セレッソは首を傾げる。



「通うだけで勇者になれるわけないだろ」


「あ、試験とか実技とかあるの? それも面倒だなぁ」


「何か勘違いしているみたいだが、勇者はちょっと頑張れば誰でも取れる資格とは違うからな」


「……え? じゃあ、スクールに通って何をするんだ?」


「勇者になるんだから、強さを証明するに決まっているだろう。己こそ、誰よりも強い戦士であることを証明するんだ」



何だか寒気がした。嫌な予感、というやつだろう。セレッソは言う。



「スクールでは、週に一回、実力テストがある。生徒同士で一対一の決闘を行うんだ。そこで勝ち進めば、ランカーに登録される」


「ランカー……成績上位者、みたいなものか」



セレッソは頷く。



「スクールの中でも、上位の十名がランカーだ。何百人もいるスクールの戦士たちの中でも、トップ中のトップと言えるような存在だな。そして、ランカーの中でも上位に食い込み、国の審査員から高い期待を持たれたら、暫定勇者決定戦に出場できる」


「暫定勇者?」


「つまり、仮の勇者だな。暫定勇者の座を獲得しただけでは、正式な勇者になれない。他のランカーと最低三回の暫定勇者決定戦を乗り越え、暫定勇者の名を守り続けたものが、勇者に選ばれるんだ」


「なんだか、凄い実力主義の世界なんだな」


「そういうことだ。他に質問はあるか?」



僕は腕を組んで暫く考えた。



「……ちょっと説明が長くて疲れたので、次回でもいいですか?」


セレッソは拍子抜けしたような表情で溜め息を吐いてから言った。


「本当、お前みたいな男が世界を救うんだろうな」

次回、第2のヒロインである女勇者が出てきます。可愛いツンデレ系のヒロインなのでぜひ読んでみてください。


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暫定勇者と言われる主人公、果たしてどうなっていくのか!? 続きも楽しみです!
[良い点] 誠はちゃんと強そうなのですが、あれですかね?誰かを助けたり、守ろうとする時だけ力がブワーッとするヒーロー的な? 興味津々になりました♪
[良い点] 最初の女勇者のセリフが好きでした。 転生無敵勇者に「努力しろ」というのはいいですね!努力大好き。続きもまた読ませてもらいます!
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