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【宿る魂①】

「じゃあ、三枝木・ジェノサイダー・宗次の紹介でうちのクラムにくるっていう勇者候補は、神崎くんのことだったんだ!」


クラムの中で練習着に着替えている間、雨宮くんは盛大に驚いていた。


「じぇ、ジェノサイダー?」


三枝木さんの名前の間に、妙なワードが入ったような……。


「え、知らないの? 三枝木・ジェノサイダー・宗次だよ! 十年くらい前の話だけど、めちゃくちゃ強い勇者だったんだよ? 第一次オクト・アッシア戦争では何年も占領されてたイロモアを奪還したんだから」


「あ、イロモアの話は三枝木さんから聞いたけど……ジェノサイダーってなに?」


ジェノサイダーって、

殺戮者って意味だっけ?


あの真面目そうな三枝木さんに似つかわしくないワードだろ、どう考えても。


「本当に知らないの? ジェノサイダーは試合中、あまりに残虐性が強い戦い方をするものだから、いつの日か三枝木・ジェノサイダー・宗次って呼ばれるようになったんだよ。いやー、稲川との防衛戦はやばかったよ。終始ジェノサイダー が攻め続けて、稲川は血まみれ。まさに、ジェノサイドって状態だったんだから。ネットに上がってるから見てみたら?」


あの三枝木さんが?

まじで?

何か教わるの怖くなってきたな……。


「それにしても、神崎くん凄いね」


「え、何が?」


僕は弱いし、さっきまで戦う理由で悩んでいた男だ。何も凄くはない。


「だって、ジェノサイダーと綿谷先輩に認められている勇者候補ってことでしょ?」


三枝木さんのことをジェノサイダーって呼ぶのはやめてほしいな。


何か変な気持ちになるから。


そんな僕の気持ちを知るわけがなく、雨宮くんは言う。


「期待されて大変かもしれないけど、僕みたいなやつからしてみると、想像もできないよ」


「……いや、実際は大したことないんだ。ラッキーで凄い人たちに助けてもらっているって言うか」


「あのレベルの人たちが凡人に手を貸すとは思わないけどなぁ。だって、他人に構っている時間なんてないでしょ。……あ、大淵先生に会いに来たんだよね? 先生はあと三十分もすれば来ると思うけど、それまで僕の練習付き合ってよ!」


雨宮くんと手を合わせる。

自信のある打撃勝負では、僕が優勢だったが、雨宮くんに組まれると互角。いや、少し圧されてしまった。


二人とも汗まみれになったので、少し休憩を入れることになったが、雨宮くんは遠慮がちに言うのだった。


「……次の相手、岩豪くんだよね。大丈夫?」


「それ言われると、耳が痛くて……」


雨宮くんは何かを察したらしく、目を泳がせながら、何とかフォローの言葉を探してくれた。


「あ、でもさ、打撃は本当に凄いね。一発も当てられなかったよ。目が良いのかな? 皇くん並みにパンチ避けるの、上手いんじゃない?」


「……皇はパンチ避けるの上手いの?」


「そりゃもう! ランカー同士の戦いって、次の日は顔を腫らしてスクールに来る人が多いけど、皇くんだけいつも綺麗なんだよ。本当に昨日戦ったの?ってくらい」


皇のことを考えると、どうしても気持ちが落ちてしまう。


僕があからさまにテンション下がっていることに気付いたのか、雨宮くんは首を傾げたが、それ以上は何も聞いてくることはなかった。


「お疲れ様です!」


突然、雨宮くんが立ち上がって頭を下げる。その相手はいつの間にか、僕たちの正面に立っていた。


「おーす」と低く響く声。


肌がよく焼けた四十代くらいの目が大きい男の人だ。もしかして、この人が……。


「大淵さんだよ! 大淵健三先生」と雨宮くん。


僕も慌てて立ち上がり、頭を下げた。


「あ、あの…はじめまして! 三枝木さんの紹介できました。神崎です」


「あー、君がね。例の子。オッケーオッケー。ジェノサイダーからある程度のことは聞いているから、さっそく始めようか」


え、何を始めるんだ?


っていうか、この人……大淵さんもジェノサイダー呼びか。


自分のことではないけれど、なんかモヤモヤするなぁ。


「あの、何をするんですか?」


僕は三枝木さんから、ただ大淵さんに会うように言われていただけなので、何をするかわかっていないのだ。混乱気味の僕に大淵さんは、大きい目をさらに大きくして微笑んだ。


「研究だよ、研究」

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