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【全力聖女様】

佐山さんの突進力は、凄まじいものがった。ブレイブアーマーを装着してなければ、本当にダンプカーに轢かれてしまうような、無残なことになっていただろう。しかし、先程のセレーナ様は、このパワーを一人で抑え込んでいたのだ!!


「今は戦いに集中してくださいよ、セレーナ様!!」


「分かっています。分かっていますとも! しかし、配信の時間に遅れたら……炎上してしまうかもしれません! 私の大事なファンが……いなくなるかも!!」


「この状況に比べたら、心配することじゃないでしょおおおーーー!?」


「酷い! 説明したじゃないですか。私にとって、ファンは本当に大切な人なんです!!」


「そういうことじゃなくて……ぬわぁっ!?」


佐山さんがズンッと力強く踏み出し、僕とセレーナ様は吹き飛ばされてしまった。凄まじい衝撃だったが、僕は次の突進に備えすぐに立ち上がる。僕は立ち上がったのだが……。


「い、今しかありません。配信を始めなければ……!!」


聖女様は倒れたままスマホを取り出そうとしている。


「今じゃねぇよ!!」


「ああ、なんてことを!!」


スマホを奪い取ると、彼女はすぐに立ち上がり、手を伸ばしてきたが、僕はそれを払いのける。


「か、返してください! そんな悪逆な行為! 女神セレッソから罰が下りますよ!?」


「あんなやつの罰、毎日のように受けているから、僕にとっては大したことないんですよ!!」


「女神のことをあいつ呼ばわりとは……それより、スマホ、返して!」


「セレーナ様は女神様よりスマホが大事なんですか?? あいつにチクりますよ!?」


「やれるものならやってみなさい! 万が一、セレッソ様からお叱りを受けたとしても。今はスマホが……配信が大事なのです!!」


「まだ言うんですか!? って、うわぁぁぁ!?」


世界一無駄な言い争いをしている間に、僕らはまたも佐山さんに吹き飛ばされる。何とかセレーナ様のスマホを潰さず済んだが……


次は、僕たちをぶっちぎって、また病院の方へ突っ走ってしまうかもしれないぞ??


「いいですか、セレーナ様」


僕は彼女にスマホを返しながら、説得を試みた。


「貴方が気にかけていることは、大したことじゃないんですよ」


「ですから、大したことなんです。私にとってファンの皆さんは――」


「聞いてください!」


僕はセレーナ様の主張を遮り、自分の意見をただぶつけた。


「貴方の配信や動画は……本当に面白いんです」


「……えっ?」


「ちゃんと作りこんでいるし、ファンの期待に応えた内容になっている。あれを見て、貴方のファンがたくさんいるのは、僕も当然だと思います。そして、そのファンは……」


僕は気持ちがこもってしまい、ついスマホと一緒に彼女の手も握ってしまった。


「そのファンは貴方を裏切りはしない」


「私を……ですか?」


僕は頷く。


「貴方に魅了されたファンたちは、貴方が思っている以上に、貴方を想っている。緊急の仕事が入って配信を中止したところで、炎上したり、フォロワーが減ったり、そんなことはありませんよ。むしろ応援してくれるはず。だから、逆に貴方はファンのことを……もっと信じるべきだ!」


今まで、そんなことを考えてなかったと言わんばかりに、動揺するセレーナ様。


「さぁ! いまSNSに投稿してみてください。急な仕事で危機的状況だから配信は中止する。だけど、信じて待っててほしい。無事に仕事を終えられるよう、応援して欲しいって!!」


「……で、でも」


「ファンを信じて!」


セレーナ様は震える手でスマホを握りしめたが、覚悟ができたのか、ゆっくりと頷いた。そして、慣れた手つきでスマホを操作すると……。


「か、神崎くん……大変です! いいねとコメントが止まりません。しかも、全部肯定的な反応ばかり……!!」


「だから言ったでしょう? それに……」


僕は思ったことをありのまま伝える。


「それに、僕もセレーナ様のファンです。セレーナ様がアニメや漫画について語りたいとき、僕はいつでも付き合います! 馬鹿にしたり、気持ち悪がったり、そんなことはしません。いつでもどんなときでも、全力で語り合いますから」


「……本当にいつでも、ですか? 私、夜中に一気見することもあるから、朝方近くに面倒くさい話を長々と続けるかもしれませんよ? 神崎くんの都合とか考えず、大量に長文の感想メッセージを送って、返信をねだるかもしれませんよ??」


「……大丈夫。いつでもどんな内容でも、付き合います!」


そのとき、セレーナ様の顔はブレイブアーマーに包まれていたので、どんな表情だったかは分からない。しかし、彼女は何も言わず、ただ僕を見つめていた。


見つめること、数秒。


彼女のブレイブアーマーが銀色に輝きだす。それは木漏れ日のような細やかな光だったが、次第に強さを増し、辺り一帯を包むほどに広がった。どこまで美しい広がる美しい銀色の光。


それはまるで、聖女の奇跡だった。

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