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【聖女様が鈍感すぎて】

「ちょ、なんでいるんですかー!!」


僕は病室からセレーナ様を追い出し、思わず声を荒げるが、看護師さんに「お静かに」と注意されてしまう。しかも、病室からはこんな声が漏れてくる。


「あの男、他の女を連れてきてなかった?」

「浮気する男はダメだ」

「残念だったね、勇者のお嬢ちゃん」


あ、あああ……。

ハナちゃんに恥をかかせてしまったじゃないか。


って言うか、絶対に怒っているぞ。僕とセレーナ様と一緒にいたなんて思われちゃったら!


「ま、まずかったでしょうか?」


爆弾のスイッチを押した張本人だけが、何をしてしまったか理解していないようだ。そんなことより……。


「だから、何でここにいるんですか?? さっき、良い感じに解散したでしょう!」


「神崎くんが綿谷華のお見舞いに行くと言ったので、私も彼女に会いたいと思って……」


もしかして、この人……ハナちゃんに苦手意識持たれているって気付いてないの?


それって……天然と言えばやや可愛らしい表現だが、このレベルは鈍感と言うべきなんじゃないか?


「あのですね、セレーナ様にいられると困るんですよ。今日のところは帰ってもらえませんか?」


「ど、どうして私が一緒だとダメなんですか? 大勢で来た方が綿谷華も元気が出るのではないでしょうか??」


「貴方と一緒なのが問題なの! わかります??」


セレーナ様は推理中の名探偵のごとく。顎に手を当て本気で考え込む。そして、何らかの答えにたどり着いたのか、はっと目を見開いた。


「も、もしかして……お二人はお付き合いしているのですか? だから、私が一緒だとあらぬ疑いを持たれてしまうと?」


「ち、違くて……」


ここは「そうなんです」と言ってしまった方が早かったかもしれない。が、後で変な誤解が生まれてしまったら、別のトラブルを生む恐れもある。


さまざまな可能性を想像する僕だったが、そんな暇はなかったのかもしれない。すべての問題をクリアしたと言わんばかりに、セレーナ様が笑顔で手を叩いたのだ。


「だったら、別にいいじゃないですか。さぁ、二人でお見舞いに行きましょう」


「ダメダメダメ!!」


ずんずんと病室の方へ向かうセレーナ様を引き止めようとするが、物凄い力で進んでしまう。


「聖女様なんだから人の話を聞いてください! ダメなものはダメなんです!」


「しかし、女神セレッソは言っています。友が落ち込んでいるなら声をかけよ。それでも立ち直らないのであれば、二人で声をかけよ、と」


だから、あいつは絶対にそんなこと言わないって!


「いい加減にしてください、セレーナ様! これ以上、聞き分けが悪いようなら、あんたのSNSを荒らすからな? めちゃくちゃなデマを流して、あんたのファンを不安にさせるぞ。いいのか??」


「そ、そんな……」


思い付きで言ったのだが、案外これがアキレス腱だったらしく、セレーナ様の顔色が変わる。


「フィオナに頼めば、たぶんアカウント停止だってできますからね? 大好きな配信もできなくなりますよ? ファンと交流もできなくなりますからね??」


「どうして、そんなに酷いことを思い付けるのですか??」


「嫌なら大人しく帰ってください! いいですね!?」


たぶん、フィオナはそんな馬鹿馬鹿しいことに協力はしてくれないのだろうが、セレーナ様はしょんぼりと肩を落とし、何とか立ち去ってくれた。


あまりに、落ち込んだ様子だったので、ちょっと言い過ぎただろうか、と後悔はあったが……こればかりは仕方がない。ハナちゃんのお見舞いと誤解を解くことの方が優先だ!


「すみませーん……」


再び病室へ向かったのだが、ハナちゃんは窓の方に視線を向けたまま、決して口を開いてはくれなかった。


「あんた、もうダメだよ」


代わりになのか、ハナちゃんの隣のベッドで横になっているおばちゃんが声をかけてくれた。


「勇者ちゃん、怒っちゃったから、当分は口利いてくれないだろうね」


さらに別のおばちゃんが。


「他の女連れてきちゃダメだよ」


「そうそう、許してほしいなら、ちゃんと男を見せな」


僕は半ば追い出されるようにして病室を後にするしかなかった……。


「あれ? 神崎くんじゃないか」


これまでにないほど、がっくりと肩を落としていると、思わぬ人に声をかけられた。


「藤原さん!」


昨日の仕事で一緒に戦ったばかりの元勇者、藤原さんだった。

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誠…かわいそすぎる……ビシッと言わないから…
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