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【勇者に平穏なし!】

そこから、僕が在籍する二年三組の教室で質問攻めにあった。しかも、二年三組だけでなく、他の組、他の学年の生徒も僕の話を聞こうと押し寄せ、教室内は人で溢れ、廊下も大渋滞を生んだらしい。


「フィオナ様ってどんな人だった??」


「アルバロノドフを倒したのは神崎って本当?」


「ブレイブ・オブ・ブレイブに選ばれた狭田って、そんなに強かったのか!?」


などなど、どこから情報が入っていたのか、戦争中に僕の身の回りで起こったことを中心に、さまざまな質問が飛び交った。


「こら、お前たち! 朝から騒ぐんじゃない!」


収拾がつかないぞ、と思ったところで担任の武田先生が、生徒たちを押し分けて入ってきた。


「こんな大人数で取り囲んだら、神崎だって困るだろう! しかも、誰も廊下を通れないじゃないか!」


さすがは先生!

もっともなことを言うじゃないか!


先生は周囲を睥睨した後、僕の肩を叩いた。


「よし、神崎! 体育館を抑えるから、そこで皆に話してやれ!」


「へっ??」


思ってたのと違うんだけど!!

しかし、僕は武田先生に引っ張られるようにして、体育館へ移動した。


「神崎くーーーん!」

「神崎先輩かっこいい!!」

「やっぱりオーラあるよね!」


いつの間にか、多くの生徒が集まっていて、僕の顔を見ると皆が声を上げた。なんだか……有名人みたいになってません??


「よし、神崎! 話を聞かせてやれ!」


武田先生に背を押され、壇上の真ん中に。最初こそ、歓声が上がったが、僕がマイクを手にすると、誰もが耳を傾ける姿勢を見せた。きっと、ただの好奇心ではなく、本気で戦争の話を聞きたかったのか、と今になって気付くのだった。


「えっと……戦争は本当に大変な毎日でした。話せないこともあるけど、できるだけ僕の体験をそのまま伝えたいと思います」


こうして、僕はオクト城を訪れた日のことから、少しずつ話し始めたが、そういえばここで岩豪と戦って、皇とも戦ったんだ、と途中何度も思い出し、余計に感極まってしまいそうだった。


「なので、僕がここに立って、皆にこの体験を話せるのは……皇のおかげなんです」


一時間近く、ただただ喋り続け、最後は皇のことを話すと、所々からすすり泣くような音が聞こえた。そりゃそうだよ。皇はこのスクールの代表で、僕たちにとってスターだったんだから。


最後は黙祷で締められたかと思ったが、その後はなぜか握手会が始まった。


「神崎くん、本当に感動したよ」

「神崎先輩は私たちの誇りです!」

「神崎、お前こそ勇者だ!」


さすがにお昼前になると、皆の興奮も落ち着き、僕は一般生徒に戻れた。でも、皇とハナちゃんが帰ってきたとしたら、騒ぎはこんなものじゃなかったんだろうな。二人の話を聞くために他のスクールからも、人がやってきたかもしれない。


「はぁ、疲れた……」


「神崎くん、とんでもない有名人になってたね」


雨宮くんはいつものように無邪気な笑顔を見せる。彼だって英雄の一人なんだから、僕だけがもてはやされるのもおかしな話だが、やはり勇者としてブレイブアーマーを装着して戦ったことは、少し注目度が違うらしい。


「でも、この熱もすぐに冷めそうだね。当分は普通の学生として過ごすことになるのかなぁ」


伸びをする僕に、雨宮くんは首を傾げる。


「どうだろうね。神崎くんはアミレーン地区の代表勇者という位置づけだろうから、何かトラブルが起こったら、駆り出されると思うよ」


「そ、そうなの?」


「うん。それに……」


「それに?」


雨宮くんは何かを言いかけたが、なぜか気まずそうに目を逸らしてしまう。


「な、なに? まだ何かあるの?」


「うーん……僕が言うことじゃないかもしれないけど、フィオナ様が放っておかないんじゃないかな」


「フィオナが?」


「何となくだけどね! まぁ、あまり気にしないでよ!」


どういう意味なのだろう。僕は理解できなかったが、とにかく今は激しい空腹をどうにかすることが優先だ。雨宮くんと学食に向かったのだが……。


『神崎誠! 神崎誠は校庭に出てきなさい!!』


……あれ、フィオナの声が聞こえる気がするんだけど? 幻聴かな??


「……神崎くん、さっそくきたんじゃない?」


雨宮くんは冷静に言って、窓の外に指をさす。そこには校庭の上に浮遊するヘリコプターが。


『神崎誠、私が来たんだから早く出てきなさい!』


再び響くフィオナの声に、廊下を行き来していた生徒たちの視線が僕に集中する。どうやら、フィオナの声はあそこから聞こえているらしい。


「あれ、フィオナ様の声じゃない?」


「いやいや、いくら勇者とは言えフィオナ様が直々に呼び出すことなんてないでしょ」


「でも、絶対にフィオナ様の声だって。神崎くん、どんな関係なの?」


妙な視線に居たたまれなくなり、僕は全力疾走で校庭へ向かった。

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