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【魔王、変態に怯える】

「ワクソーム城にようこそ。誠お兄ちゃん」


「……アオイちゃん?」


ついさっき、僕の前で死んでしまったはずのアオイちゃんが、なぜかそこに立っていた。


「だって君は……」


「どうしたの? 何を驚いているのかな? ……ああ、魔法が降ってきて、私が潰されたから死んじゃったと思った?」


そう、その通りだ。君は確かに潰れて、腕だって……。


「大丈夫だよ、ほら見て」


千切れて、僕の前に転がったあの腕を、アオイちゃんは振ってみせた。


「私は腕が取れたり、魔法に潰されたり、それくらいじゃあ、死なないんだよ」


「死なない、って……?」


「魔王だからね」


……そ、そ、それは――。


「よかった」


「え?」


僕の口から零れるように出た言葉に、アオイちゃんは目を丸くした。


「よかったよおぉぉぉーーー!!」


「え? なに? なんで泣くの??」


号泣する僕を見て、彼女は大いに戸惑ったようだが、関係なかった。僕は彼女に駆け寄り、その小さい体を抱きしめる。


「よかった! 本当によかった!! 死んじゃったと思ったから、無事だったから、よかったよぉぉぉ!!」


「ちょ、え?? お兄ちゃん、本当に馬鹿なの? 状況分かってる??」


「分かっているよ!! いや、分かってないかもしれないけれど、とにかく良かった!!」


彼女を抱き上げ、何度もぐるぐる回る。


ちくしょう!

よくわからないけど、奇跡が起こったんだ!


この調子で皇も生き返って……。


「あ、そうだ。ピンチってことには変わらないのか!」


皇のことを考え、冷静さを取り戻す僕だったが、同時に絶望的な状況であることも思い出す。大勢のフィリポに囲まれ、リンチ寸前ってことを忘れていた!


「アオイちゃん、君だけは何とか逃がして見せる。だから……」


「誠お兄ちゃん、そうじゃなくて……」


「話は後! 今はこの状況を切り抜けることを考えよう!」


「だから、そうじゃなくて!!」


アオイちゃんは逃げるように僕から離れると、なぜかイワンの後ろに回った。そして、イワンの影から変態を見るような目を僕に向ける。


「私がアッシアの魔王なの! これからワクソーム城を包囲するオクト軍を全滅させて、オクトに乗り込んでから、そこに暮らす人も皆殺しにしちゃうんだからね??」


「……ん? アオイちゃんが魔王? マジで?」


僕は思わずイワンに確認する。イワンは無表情だが、頷いた。


「またまたー! この異常な状況に二人とも頭おかしくなっちゃったの? あ、それともドッキリ??」


「いやいや、こんな盛大なドッキリ、あるわけないでしょ!」


アオイちゃんは取り繕うように咳払いをしてから、イワンの前で両手を腰に当てる。


「ちょっと予定外のことはあったけど、ここは仕切り直して……。さぁ、契約者よ。改めて願いを言え。四度目の願いを」


イワンは再びアオイちゃんに言う。


「我が愛しの魔王よ。オクトの兵とオクト本土を焼き払い、私に勝利を」


「よかろう。では、手始めに城の周りにいる虫どもから片付けてやるとするか」


二人のやり取りを見ても、僕はまだ信じられなかった。


これ、ツッコミ待ちってこと??


困惑する僕を見て、アオイちゃんは言った。


「誠お兄ちゃん、まだ理解できないの? じゃあ、証拠を見せてあげる。そうだなぁ、フィオナお姉ちゃんの首なんかを持ってきたら、お馬鹿なお兄ちゃんでも理解できるかな」


すると、アオイちゃんの目元に、太い血管のような筋が……いや、文様のようなものが浮かび上がった。その瞬間、僕は獣に睨まれたような、死の感覚を刻まれる。そして、彼女は言った。


『ナノマシン・タンソール、起動』


それはアオイちゃんの口から確かに発せられたようだが、まるで地獄の底から響くような異様な声だった。それだけじゃない。


アオイちゃんの体が急に大きくなって、一気に成人女性の姿に。それだけでも信じられなかったが、さらに変化が。彼女の髪も長く伸び、激しいオレンジ色に変わったと思うと、その背に巨大な翼まで生えるのだった。


「な、なんだこりゃ……」


あれじゃあ、もう人間じゃない。


これはダメだ。ついていけない。

本当に何が起こっているんだ??


それなのに「ドンッ!!」と爆音が耳を打ち、衝撃に僕は吹き飛ばされそうになる。それでも、何とか目を凝らすと、アオイちゃんを強い光が包んでいた。さらに、その光はアオイちゃんを中心に形状に変化させて上下左右に伸びると、ワクソーム城の壁、天井、床を貫く。


「さぁ、神話の戦いを見せてあげる!」


そして、アオイちゃんが……


魔王がアッシアの空へと飛び立った。

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