表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

253/347

【もはや勝ち目なし】

ブレイブモードが解除される寸前、僕のハイキックはフィリポに届かなかった。たぶん、それよりも速くフィリポのハイキックが、僕を薙ぎ倒したのだ。


そりゃそうだ。

僕のハイキックはフィリポに憧れて覚えた技。本家本元のそれに叶うわけがない。


そして、同時にブレイブアーマーが限界を迎えて……。


「くそ、生身で強化兵になったフィリポに勝てるわけがないぞ。変身!!」


ブレイブシフトを握るが、反応がない。今となっては慣れた、プラーナを流すという行為に対し、何も反応が返ってこないのだ。


「おやおや、神崎くん。もう終わりかな」


今まで黙っていたイワンが口を開く。でも、言い返している暇はない。だって、フィリポがゆっくりと僕に近付いてきているのだから。僕は重たい体を何とか立ち上がらせて、フィリポから距離を取る。


「よ、寄るな……!!」


出てきた言葉はそれだけ。後は震えて、顎がまともに動かなかった。


死ぬ。ついに、死ぬんだ。

僕が憧れた男に殺される……。


学校の隅で、皆の笑い声を聞いているだけの生活が嫌で、勇者になれるからって、可愛い女の子にモテモテになるからって、そんな誘い文句に騙された僕が……やっぱり馬鹿だったのか??


あの生活の方がまだマシだった。そうは思わない。そうは思いたくないけど……。


「し、死にたくない……!!」


震えながら、やっと出てきた言葉はそれだった。そんな僕を無表情で見つめるイワン。


「……戦争とは悲しいものだ」


「はぁ??」


それを……お前が言うのか??


「何度も見てきたよ。君のように、恐怖に溢れ、絶望しながら死んでいく人間を。どんな願いがあっても、どんな志があっても、どんな正しさがあっても、戦争では無慈悲に、残酷に人が死んでいく。仲間が、好敵手が、絶望を抱き、もしくは最期を認識することなく、すべてが嘘だと言わんばかりに、呆気なく死ぬ……。そんな光景を目にするたびに、私は思った。戦争は悲しい、って」


「だったら……すぐにやめろよ」


お前がやめるって言えば、戦争は終わるんだぞ??


しかし、イワンは首を横に振った。


「ダメだ。私は約束した。父さんに。中尉殿に。そして、クララに。アッシアが世界最高の国だと証明する、と。そして、それを達成したとき、彼女は私の前に姿を現すんだ。ああ、クララ。君に会いたい。もう少しだ。もう少しだよ」


無表情なイワンが、そのときだけは、まるで幼い子どものようだった。だけど……。


「お前、何を言っているんだ……?」


何もかも理解できなかった。


だって、お前の言っていることは、たぶん戦争で命を落とした人たちも、似たようなことを考えていたはずだ。それなのに、お前は自分の都合だけを、他人に……


いや、世界に押し付けるつもりなのか??


「理解されなくて結構。フィリポ365、やつにとどめを」


もとのイワンに戻ったかと思うと、冷酷な指示を出す。フィリポがわずかに頷くと、左足を持ち上げた。すると、脛の辺りがせり上がり、硬質化していく。それはまるで、足の中に仕込んでいた刃が飛び出して、脛そのものが刀に変化したみたいだ。


「そうだ。得意のキックでやつの首を切断しろ」


フィリポが一歩、また一歩と僕に近付く。


背を向けて、逃げ出せ。

いや、背を向けた瞬間、やつは襲い掛かってくる。


だけど……丸腰の僕に何ができるんだ!!


後退りを続けたが、やがて背中が壁に突き当たる。フィリポはそれを確認すると、僕を追い詰め、蹴りを出す体制に入った。


「う、うわあああぁぁぁーーー!!」


フィリポが腰を落とし、左足を床から離す。あ、死ぬ……。


バキンッ!!


首が飛んだ。

嗚呼、意外にも首が飛ぶ音って金属音みたいなんだな。


……ん?

違うぞ。痛くない。

って言うか、手足が動く。首もくっ付いている!!


僕は目を開ける。

すると、そこには僕の目の前でフィリポのキックを止める背中が。


純白のブレイブアーマー。ってことは……!!


「皇!!」


「早く……距離を取れ!!」


僕は言われるがまま、床の上を這うようにしてフィリポから逃げ出す。もうダメかと思ったけど、最強の仲間が駆け付けてくれたぞ!!


ここに皇がいるってことは、あいつピエトルを倒したんだ。ランキング戦でフィリポを圧倒したピエトルを!!


「悪いけど皇、頼んだぞ!!」


しかし、僕は皇とフィリポの方に振り返った。だけど、そこには膝を付く皇の姿が。皇は肩で息をしながら、弱々しい声で言った。


「助けにきたつもりだけど……僕もプラーナが空なんだ」


「……マジ??」


最強の勇者である皇が、体力ゼロの状態ってことだよな?


……じゃあ、誰がフィリポを、イワンを倒すんだ??

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ