表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

244/347

綿谷華の場合 / 深夜号泣

「やっぱり、あの二人は何かあるんだ……!!」


時間は深夜二時。

ジュリアは、二段ベッドの上から聞こえた華の声で目を覚ました。


「……綿谷さん? 寝言、ではないようですね。もしかして、ずっと起きていたのですか?」


返答がない……

と思ったら、華が上から降りてきて、ベッドで横になっているジュリアにしがみついてきた。


「え? あの、綿谷さん? 想定外の出来事にわたくしもパニックになりそうですよ? 寝起きなので色々と気持ちの整理がつかないのですが、もしかして、そっち路線に変更ですか? だったら、わたくしも……おや?」


「う、う、うぇえ……」


どうやら華は泣いているらしい。

ジュリアは戸惑いつつも、そういえば華は泣き虫だったのだ、と思い出す。


「つらかったのですね。よしよし。今夜は一緒のベッドで眠りましょう。寂しさで凍えそうな貴方の心を、わたくしの体温で――」


「それは嫌だ!」


「……あらあら」


はねのけられ、地味にショックを受けるジュリアだが、それは心の中に止めておく。


「では、何があったのでしょうか。それを教えてもらわなければ、わたくしとしても何をしていいものやら」


しかし、それから三十分以上、華は泣き続けるだけで、ジュリアは彼女の背中を撫でつつ、何度か眠気に負けそうになった。


「なるほど。それは宣戦布告のようなものですね。さすがはフィオナ様、勝負所を分かっている、というか」


やっと落ち着いた華の話を聞き、納得するジュリア。あくびを噛み殺しつつ華の表情を見てみると、再び泣き出しそうになるのを耐えているのか、下唇を噛んでいた。


「ま、まぁ……気持ちは分からなくないですよ」


慌てつつ、華の背中を撫でて、何とか気持ちを宥めようとするが、それが余計な刺激となったのか、結局は泣き出してしまう。しかも、頭をジュリアの胸にうずめ、子どものようにわんわんと泣くのだから、どうしようもなかった。


「これはもう、神崎誠に聞きましょう! 本人にはっきりさせるのです」


「ど、どうやって……?」


いつも大人びた雰囲気の華だが、今はまるで五歳児のような表情で期待の目を向けてくる。


(わ、綿谷さん……。なんて可愛いのでしょう! わたくしを信じて頼り切っている目。もう親友としての座は誰にも渡しませんわ!!)


ジュリアは思わず頬が緩んだが、ここで笑ってしまったら、絶対喧嘩になる。強靭な精神力で感情をコントロールした。


「フィオナ様とどういう関係なのか、そして綿谷さんのことをどう思っているのか。正面から聞いてみましょう」


「嫌だ! できない! 無理!」


「無理無理言ってられないでしょう。駄々をこねている間に、フィオナ様に取られちゃいますよ!」


「それも嫌だ……!!」


「もう、子どもじゃないんですから……」


「だって、そんなことしても、私の知らないうちに、こそこそ二人で会って、仲良くなっているんだから! 次の作戦も、どうせ私のいないところで……」


「次の作戦とは?」


何も知らないジュリア。

華は口を滑らした、と顔を引きつらすが、今さら誤魔化すことは不可能だと観念したようだった。


「なるほどなるほど。確かにそれは怪しいですね。しかも、敵地となれば自然と絆も深まり、助け合えば信頼関係も密になるもの。決定的ですね」


あからさまにショックを受ける華。


「フィオナ様、戦争に勝って恋の争奪戦も征する。やり手ですわねぇ」


感心するジュリアだったが、突然華がが顔を上げる。何か良からぬことを思い付いたのでは、とジュリアが嫌な予感を抱くと、華が顔を近付けてきた。


「わ、綿谷さん。近いです。とても近いです。もしかして、あっさり負けを認めて路線変更ですか? でしたら、わたくしも心の準備が必要なのでお待ちください。そうですね、三秒もあれば十分ですので……」


「ジュリア」


「は、はい?」


おや? はっきりと名前を呼ばれることは珍しい。しかも、距離が距離なので、ジュリアの心臓は妙に速い音を立てた。


そして、目の前で華の唇が動く。


「次の作戦、お前があの二人を見張っていてくれないか?」


「……はぁ?」

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ