狭田慶次の場合 / ここは根性で
クマエフの千切れた体から吹き出す血が、彼の足元を赤く染める。
「これだけひどい目に遭ったのは、いつぶりだろう」
自嘲の笑みを浮かてから、クマエフは辺りを見回すが、辺りは自らの攻撃で土埃が舞い、敵の位置が確認できる状況ではなかった。
そんな中、最初にクマエフが目に止めたのは、折れた盾と一緒に倒れる岩豪の姿だ。体を引きずるように、岩豪の傍へ移動すると、クマエフは腕を一つ振り上げる。そして、ナイフのように硬質化した手刀を振り上げるが――。
「ブレイブソード!」
その声に、振り返るクマエフ。
視界には銀の輝きが。
反応するにも、千切れかかった体では上手くいかず、それが彼の肩口に突き刺さった。
「くそぉぉぉ」
クマエフの肩に突き刺さった剣を投げつけたのは、もちろん狭田である。
そして、狭田が土埃の中から飛び出してきた。ブレイブモードによる超加速移動は、傷付いたクマエフの反射をはるかに上回る。狭田は跳躍しつつ、一気に距離を詰めると、空中からクマエフの肩口に向けて蹴りを放った。
「二本目、もらったで!」
狭田の蹴りは、クマエフの肩に突き刺さる剣の柄を押し込み、刃をより体の奥へと侵入させた。さらに、着地した狭田は剣の柄を握って、強引に捻ってから引き抜く。
ごとり、と音を立ててクマエフの腕が落ちた。
「オクト人ごときが!!」
残った三本の腕のうち、二本が狭田が手にする剣を掴む。刃で指が裂かれても、剣だけは折ってみせようという意志が見られた。
「こら! 俺のブレイブソード、返せや!」
「ふざけるな! こんなもの、へし折ってやる!」
「やったら、しゃーないな!」
狭田は剣にこだわらず、柄から手を離し、渾身の一撃を拳に込めて叩き込む。が、クマエフも瞬時に反応し、空いた腕でそれを阻もうとした。ただ、ブレイブモードによる勇者の攻撃は、強化兵の体であろうが砕いてみせるほどの威力があった。
クマエフの腕は弾け飛ぶようにして粉砕し、残る腕は二本に……。
しかし、クマエフの武器は腕だけではない。腹部から飛び出たままの臓器が、再び荒れ狂う大蛇のように動き回るのであった。
「ここは……根性見せたるわ!!」
周辺を吹き飛ばすほど、凄まじい破壊力を持つクマエフの臓器だが、狭田はプラーナを燃やして、そのエネルギーを防御に回す。鞭のように打ち付けられる攻撃は、ブレイブアーマーに守られる狭田の体を確実に痛めつけるが、それでも彼は動きを止めず、クマエフに向かって一歩踏み出した。
「捕まえた!!」
そして、動き回る臓器を何本か掴み取り、クマエフの体から引きずり出してから、千切って見せる。クマエフは絶叫しつつも、二本の腕で掴んでいた剣を手放し、攻撃へ転じてみせるが……。
「確かに返してもうたぞ」
狭田はクマエフが手放したばかりの剣を、地面の落ちるよりも先にキャッチし、それを横一閃に振るった。
「でもって、これで終わりや」
「がっ……!」
断末魔の叫びもなく、クマエフの上半身と下半身は離れ離れに。クマエフの体が崩れると同時に、狭田は両膝を付いた。
「あかん。もう動けへん……」
ブレイブモードを解除する……つもりだったが。
「狭田! やつはまだ動いている!」
どこにいるのか、岩豪の声。
そして、クマエフを確認すると、確かに目が合った。
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