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【スクールライフ!②】

「えー、今日から皆さんと一緒に勇者を目指すことになった、神崎誠くんだ。慣れない環境で分からないこともあるだろうから、ちゃんと皆でサポートするように。じゃあ、神崎の席は皇の横で」


二年三組。

生徒の数は三十五人。

そのうち、ランカーは二人。


どういう運命なのか、それは皇颯斗と岩豪鉄次だ。


「どうした、神崎。席がどこか分からないのか? 皇颯斗も知らないで、勇者科に入ったわけでもないだろう」


「あ、えっと……はい!」


噂の武田先生に促され、

僕は百年使われ続けたロボットのような足取りで、皇颯斗の隣にある空いた席まで移動する。


椅子に座り、

皇に「よろしく」とか言うべきなのだろうか、と一瞥すると、


目が合ってしまった。


ど、ど、どうしよう。

なんて、どぎまぎしている間に、皇は目を逸らしてしまう。


もう何て言うか、

三秒くらいで、僕みたいなものは格下の下の下で、


一生縁のない人間だろう、と判断されてしまったような気分である。


もう一方のターゲット、

岩豪鉄次も一目て見ておこう、と僕はひっそりと後ろの席を見てみた。


うわっ!と声を上げてしまいそうになったのは、彼と目が合ったような気がしたからだ。慌てて前を向いたから、勘違い可能性もあるけれど、とんでもない眼力で貫かれた気がする。


あいつを四六時中、

挑発して対戦要求に応えさせろ、


というのがセレッソの命令だが、

そんなことしたら、その瞬間に殺されてしまうのではないか。


「あ、神崎」

と武田先生に呼ばれる。

「は、はい」


「今週中にランキング更新戦の対戦相手を誰にするか、希望を申請する必要がある。これ、勇者科の人間の戦績表だから戦いたい相手、見つけておくように」


そう言って、先生はクリップでまとめられた紙を差し出した。


そこには、一位から百位まで、

学校中の勇者候補たちの名前が並んでいた。


一位はもちろん、皇颯斗。

そして、三位には岩豪の名前が。


「お、何だか真剣に見つめているな」


戦績表を見つめていた僕に先生が言う。


「もしかして、既に戦いたい相手がいるのか?」


あれ、もしかして……

これってセレッソからのミッションを遂行するチャンスなんじゃないか?


「えっとですね……」


ざっと、音を立てて教室の雰囲気が変わった気がした。


やばい、妙なことは言わない方が良かっただろうか?


しかし、ここで何でもないです、

と言える空気でもない。

どうしよう。


「なんだ、あるのか? 言っておくが、皇は駄目だぞ。実績もなく暫定勇者と戦うなんて、誰も認めてくれないからな。皇だって、実績のないやつを倒して勇者になったって言われたら、嫌だろ?」


先生が皇に話題を振ると、彼は視線だけを先生に向けた。


「まぁ……そうっすね」


短い回答に、所々から笑い声が漏れる。


っていうか、皇のやつ声もかっこいいな。


空気が和んだところで終わってくれればよかったのだが、先生はさらに追及してきた。


「で、誰が気になっているんだ? 言うだけなら自由だ。言ってみろ」


またも教室が静まり返り、多くの人の好奇心が僕に向けられた。


もう何か言わないとダメな状況じゃないか。こうなったら、変な空気にならないよう、


冗談っぽい感じで言って、乗り切るしかない!


「じゃあ……岩豪くんとか気になりますね。運良く三位のランカーを倒せたら、大金星だなぁ、とか、思ったりして。てへへっ」


おいおい、三位のランカーに挑戦するのも無謀だろ、


と先生が言って、笑いに包まれることを期待したが、


教室がぴーーーんっと張り詰めた空気に。そして、先生は言うのだった。


「なるほど。面白いかもな」

「え?」


何を言っているんですか?

冗談ですよ。


と言うべきだろうか。


焦りつつも口を開こうとしたとき、教室の後方からガタンッと誰かが立ち上がる音がした。


「先生、それ……どういう意味ですか?」


振り返って確認する必要もない。このドスの効いた低い声は、絶対に岩豪だ。


「この転校生が、ランカーの俺と互角に渡り合うくらい、実力と実績があるってことですか?」


うわー、めっちゃ怒っている。

絶対怒ってるわ。

ある意味、挑発大成功。


セレッソが聞けば

満面の笑みを浮かべて喜ぶだろうが、僕は気まずくて仕方がないのだけど。


「うん? ああ、そうか。そろそろ授業の時間だし、それは機会があれば話すことにしよう。じゃあ、神崎。ちゃんと対戦相手を考えておけよ」


教室の空気を最悪にして、先生は出て行ってしまった。

完全な静寂に包まれた教室に、岩豪が着席する音が響く。


どうやら、今すぐ殺されることはなさそうだ、と胸を撫で下ろしたが、背中に強烈な殺気が突き刺さり続けている。


はたして、放課後まで生きていられるだろうか。


ハナちゃんと一緒に帰る約束をしていたのに。


と、このときは、そんな風に考えていたが、


岩豪に殺されるきっかけは、

僕が待ちわびた放課後、思わぬ形で完成されてしまうのだった。

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