【合流方法を探せ!】
僕が呟く横で、皇がブレイブシフトに触れる。
「ブレイブチェンジ」
皇の体が光に包まれるところを見て、僕は意図を理解した。
「変身!」
やや後れを取りながら、僕もブレイブアーマーを装着する。そして、ほぼ同時に拳を光の壁に叩き込んだ。
しかし……光の壁は薄く、窓ガラスのようなのに、コンクリートよりも硬い。いや、柔らかないような気もした。
よく分からないけれど、とにかく手応えがないのだ。
「ブレイブナックル!!」
僕はプラーナを集中させ、もう一発打ち込むが……結果は変わらなかった。
「もう一回!」
腰を落として、もう一度プラーナを集中させようとしたが、それを制止するように、皇が手の平を向けてくる。
「邪魔だ、皇! もう一回、全力で殴れなこんな壁くらい……!!」
「……それこそ、罠だ。この壁に攻撃すればするほど、僕たちのプラーナは消耗する。それこそ、敵の思うツボだと言える」
「だけど、ハナちゃんが一人になったら……!!」
薄情なやつだ。
お前の姉ちゃんがピンチに陥っているかもしれないのに!!
と罵ってやるつもりで皇を見たが……。
「良いから、ここは僕の言うことを聞くんだ」
静かに言う皇の顔は今までにないほど、冷たいものだった。勇者決定戦のとき、感情をむき出しにした皇を見たが、あれとはまた違う、刺さるような冷たさを感じる表情である。
「一度、この部屋を出て、合流できるルートを見つけるか、この光を作り出す何かを破壊するか、どっちかにするべきだ」
「……分かったよ」
僕は大人しく皇に従うつもりだったが……。
「おい、皇。あれを見ろ!」
光の向こう、ハナちゃんがいるスペースに、一人のアッシア兵が入ってきた。金髪の女の人だが……普通の兵士とは気配が違う。たぶん、強化人間だろう。
「……急ごう」
「ちくしょう!」
僕は思わず壁を殴りつける。が、もちろん手応えはない。
あと一歩……。
あと一歩分、ハナちゃんの近くに立っていたら、僕たちは離れることはなかった。
――ここからは何があるか分からない。私から離れるなよ。
ハナちゃんはそう言っていたのに!
――いつ死んじゃうか、分からないじゃない。
フィオナの言葉と同時に頭に思い浮かんだのは、地面に転がっていたアオイちゃんの腕。
――ここは戦場です。今この瞬間も、誰かが死んでいます。
リリさんの言葉。
きっと、その通りなんだ。
それはハナちゃんだって例外じゃない。
分かっている。分かっていたさ。
何とか感情をコントロールしようと、呼吸を繰り返していると、視界の隅で激しく動く何かに気付いた。
振り向くと岩豪がこちらに向かって何かを訴えようと、胸の前で激しく指を動かしていた。
「え? 何? わかんない!」
声が聞こえないので、理解できずにいたが、隣の皇は深く頷いた。
「分かったのか?」
「岩豪たちは下。僕たちは回り込め、って言ってたみたい」
「……つまり?」
「岩豪たちが、この光の発生源を破壊する。僕たちは綿谷先輩と合流するルートを見つける。そんなところかな」
手分けして、できるだけ早くハナちゃんを助けるってことか。
「皇」
僕が呼びかけると、皇は瞳だけこちらに向けた。
「絶対にハナちゃんを助ける。だから、協力してくれ!」
「……僕は最初から協力してるつもりだけどね」
そう言って皇は歩き出した。
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