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【突然言われても……!!】

足元に瓦礫が広がる、薄暗い廊下でフィオナは言う。


「他のみんなは……?」


「どうやら僕たちだけみたいだな」


ヴァジュラが保管されていた部屋が崩壊し、暗闇の中に落下したものの、僕らは無事だった。だが、皇もリリさんもエックスさんもいない。


僕とフィオナ、二人だけ。敵地のど真ん中だと言うのに。


「最悪ね」


「うん、最悪だ」


フィオナに同意したつもりだったが、彼女は勢いよくこちらに向いたかと思うと、あからさまに不機嫌な視線で睨みつけてきた。


「何よ、私と二人っきりがそんなに不満?」


「いや、そういう意味じゃなくて」


危険度マックスの場所で王女様の護衛は僕一人。それが最悪な状況だって言ったつもりだった。


けど、フィオナは拗ねた子どものようにそっぽ向いてしまう。


「フィオナ。敵地なんだから、喧嘩している場合じゃないだろ」


「分かっているわよ。なんで私がこんな想いしないといけないのよ、本当に」


「こんな想いってなんだよ」


誤解があるなら早めに解いておくべきだ。そう思ったのだが……。


フィオナは溜め息を吐く。


「分かった。もう少し我慢するつもりだったけど、性格的に無理みたい。私、思っていることは口に出さないと気が済まないタイプなの」


「それは何となく理解しているつもりだけどさ……。で、何が不満なの? この状況を無事切り抜けるためにも、早めに解決しておこうじゃないか」


「そうね。じゃあ言っておく。貴方が好き」


そうかそうか。

そういうことね……。


ん?


「えっと……なんだって?」


「だから、貴方が好き。好きだから、ずっと不満だったの。綿谷華とベタベタしたり、ニアと楽しそうに喋ったり、そういうのが。その上で、二人っきりでいるの、嫌そうにされると傷付くでしょ」


「……」


えーっと、昨日の夜は何食べたっけ。

つい昨日のこと、数時間前のことなのに、いざ思い出そうとすると思い出せないことって、たくさんあるよな。


そんな感じで今目の前で起こっていることも、手を伸ばせば触れられるくらい間近で起こっていることも、なんだか理解できないときってあるんだよ。


それが今この瞬間だ。

僕の目の前には異世界の王女様。

今彼女は何て言ったのだろう。


僕に関係することだったか?

僕のことを好きと言ったように聞こえた。もう一度聞き直してみようか。


いや、聞き直すのは二度目だ。

絶対に怒られるぞ。

じゃあ、どうすればいい?


「何か言いなさいよ」


うわ、先に向こうから来た。

しかも、フィオナのやつなんで平然としているんだ。


これで顔を赤らめているとか、顔を伏せがちなら分かるけど、凄いいつも通りって感じでこっちを真っ直ぐ見てくるじゃないか。


「な、何で今……そんなことを?」


「だから、私って思っていることは口に出さないと気が済まないタイプなんだって。それに……」


フィオナは少しだけ目を逸らした。


「いつ死んじゃうか、分からないじゃない」


……そうか。

僕は常にどこかで何となる、って思っていた。


今度こそ死ぬかもしれないって何度か口にしたかもしれないけれど、心のどこかで「何だかんだ死にはしないだろう」と高を括っていた。


でも、最近はそんなことを言っていられない状況だ。何かが少しでも傾いてしまったら、呆気なく死んでしまうような、そんな場所を僕たちは歩いているのだ。


「そうかもしれない。けど……」


僕はフィオナほど自覚も覚悟もないのかもしれない。だけど……。


「だからこそ、僕はフィオナを守りたい。守ってみせるって思っている」


絶望的な状況かもしれない。

未来は暗く思えるかもしれない。だからこそ、少しでも光るがある方に進むことができたら……。


そして、フィオナがそこまでたどり着けたのなら、オクトの人すべてに希望を与えられるじゃないかって。あ、そんな話しじゃなかったのか。


しかし、フィオナは小さく笑う。


「そういうところが好きなの」


「え? あ、いや……」


「頼りないやつだと思ってたけど、いつの間にか勇気をもらっていた。貴方を見ていると、自分も頑張らないとって思うようになっていたの。貴方がアッシア兵に捕まったときから、自分の中にそういう気持ちがあるって気付いちゃったのよね。気のせいって誤魔化そうと思ったこともあったけど、自分に嘘ついても苦しくなるだけじゃない? だったら、認めた方が楽かも、って思ったわけ」


笑顔で語っていたのに、フィオナの視線は再び鋭くなってこちらに向けられる。


「だから、最近は不満なの。貴方のこと、好きだって思えば思うほど不満ばっかり溜まる。そっけない態度取られたり、他の女と無駄に仲良くしたり、そういうの本当に不満なの! それなのに、毎日王女らしい態度でいないといけない私の気持ち、分かる??」


ままま、待ってくれ。

僕はどうすれば良いんだ?


こういうの、初めて過ぎて分からないんだけど! って言うか、フィオナってこんなに気持ちをストレートに言うタイプなのか。それも意外でワケが分からないって!


「ちょっと」


とフィオナは不満げに唇を尖らせる。


「私ばっかり喋っているけど、貴方はどう思っているの? そろそろ、そっちの気持ちを聞かせないよ」


「ぼ、ぼ、ぼ、僕は」


そこまで言って、頭の中が空っぽだということに気付き、沈黙が流れてしまった。


「早く何か言いなさいよ。あと、初めて女の子に告白されたんでしょ?? 少しは喜びなさい!」


そ、それがですね、フィオナ様。初めてじゃないんです。僕の初めてはあの意地の悪い女神に奪われているんですよ。


いや、でもいいか。

あいつのはノーカウントだ。って、それよりも何か言わないと……。


「ぼ、僕は――」


「しっ!」


口を開きかけたところで、フィオナの手の平に遮られる。戸惑う僕だったが、彼女が警戒心を高めた理由をすぐに気付く。


ヒタッ、ヒタッ、ヒタッ、と音を立てて誰かが近付いてくる。


「あれ?」


懐中電灯だろうか。明かりが僕ら二人を照らす。


「あれ、誠お兄ちゃんにフィオナお姉ちゃん!」


僕とフィオナは同時に息を吐く。まずはアオイちゃんと合流。無事が確認できてよかった。


けど、途中で話が途切れてよかった……のかな?

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