【スタンバイ!】
ヴァジュラは金色の杖だ。控えめな装飾が施されているが、先端はさらに特徴的でひょうたんのような形に膨らんでいる。そして、その先端が僕らの方に向けられた。
「試し撃ちにはちょうどいいな。オクトの連中を焼き払う前に使ってみるとするか」
先端には拳くらいの大きさの穴が開いている。たぶん、あそこからビームでも出るんだろうな。
さっきのレーザー砲は数秒間ならブレイブアーマーで防げたけど、ヴァジュラはどうだ。フィオナの話を聞いている限りでは、とんでもない威力みたいだけれど……。
パッとヴァジュラの先端が光った。
「……え?」
次の瞬間、僕の視界は光でいっぱいだった。
何が起こったのか、分からなかったけど、横から強い衝撃を受ける。不意な衝撃に僕は横に倒れ込んだが、うつ伏せになった背中の上を熱を持った何かが通過した。
「な、何が起こった?」
僕は伏せたまま、辺りを見回す。どうやら、ヴァジュラから光が放たれた直後、皇が横から僕を蹴っ飛ばしたおかげで助かったらしい。
「フィオナは!?」
僕は後ろを確認しようとしたが、皇の声が。
「フィオナ様は無事だから、早く立つんだ! やつは君を狙っている!」
ま、マジで!?
立ち上がると、ヴァジュラをこちらに向けて悪意に満ちた笑みを浮かべるブライアの姿が。
「凄いよ、このヴァジュラ! さすが禁断術の兵器! 出力を絞ってこの威力なんて、オクトのクソどもを好きなだけ焼き殺せるじゃないか!」
再び、ヴァジュラの先端が光る!
「う、うわあああぁぁぁ!」
全力疾走でブライアの横手へと逃げる。ヴァジュラの先端から放たれているのは、広範囲に渡る雷のような閃光。
アニメで見るようなビームとは違って、単発ではなくてホースから出る水のように絶え間ないし、縦横無尽に動くものだからどこまでも追いかけてくる!
「エネルギー切れとかないのかよ!」
「あはははっ! 逃がさないよ、勇者くん!」
ブライアは少しヴァジュラの角度を変えるだけで僕を追い詰められるものだから、ご満悦のようだ。ちくしょう、こんなこと思うの初めてなんだけど……
あいつだけには殺されたくない!!
とは言え、僕はブライアのやつに近付くことすらできない。このままでは、いつか光に呑み込まれてしまうぞ!
だが、焦りが足の絡ませたのか、前のめりになってバランスを崩し、倒れてしまった。迫る光。
やばい、今度こそ死ぬ……!
と、思ったが、光が直前で消える。
「近付くなぁーーー!」
ブライアの方を見ると、やつは別方向にヴァジュラを向けていた。どうやら、ブライアが僕を狙っている間に、皇がすぐ近くまで距離を詰めていたらしい。
が、皇ですらヴァジュラを使うブライアには、簡単に近付けない。
「いたっ!」
皇とブライアの攻防を見ていると、頭に何かが当たった。たぶん、ヴァジュラによって破壊された天井が降ってきただろう。
だとしたら、この状況が続けば、この施設そのものが崩れるんじゃないか??
辺りを見回すと、崩れ落ちる天井の破片からフィオナたちも逃げ惑っている。やっぱり、早めにブライアを止めないと……。
「よっしゃ! とっておきを出すには早いかもしれないけれど、やるしかない!」
僕は伏せたまま覚悟を決める。
「こんな状態で切り札を使うのは気に入らないけれど……仕方ない! ブレイブモード!」
ブレイブアーマーのサポートシステムが反応し、機械的な音声が僕の耳を打つ。
『ブレイブモード、スタンバイ』
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