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【振り回すタイプと尽くすタイプ】

「お前、最近……フィオナ様と仲良いよな」


「え、あ、ええ? あ、えーっと、そうなの、かな?」


ハナちゃんから突然そんなことを聞かれ、動揺する僕。しかも、その後ろでセレッソが薄っすらと笑みを浮かべている。


どうなるんだ、この状況……!!


「頻繁に呼び出されているし、誠もフィオナ様に対して自然に接するし……」


「うーーーん、そうかな? そうでもないような、そんなこともあるような……」


ハナちゃんが真っ直ぐと僕を見つめる。まるで、心の壁を貫いてしまいそうな目力だ……。


「もしかして、お前とフィオナ様……何かあるのか?」


「な、何もないよ。何かってなに??」


あからさまに動揺する僕に、ハナちゃんは目を合わせてくれなかった。変な沈黙が数秒。


やばい、これって僕が何か言うターンなんじゃないか??


しかし、正解が分からない僕は口をパクパクさせるばかり。結局、先に沈黙を破ったのは、ハナちゃんだった。


「悪かったな、こんなときに」


「ななな、何も悪くないよ」


「……とにかく、頑張れよ。じゃあな」


「あああ、ハナちゃん……待って!」


しかし、ハナちゃんは踵を返し、倉庫を出て行ってしまった。


どどど、どうしよう。

なんか勘違いされている気がする。


「勘違いじゃないだろう。お前とフィオナ、いつも暗いところでイチャついているんだから」


「心を読むな。そして、痛いところを突くな」


やはり何のフォローにもならないセレッソの指摘。いつもなら否定するところなのに、今回ばかりはその通りなんだよな……。


でも、別に何て言うか、そういう関係じゃないし。


って言うか、ハナちゃんもしかして――。


「嫉妬というやつだろうな」


セレッソが淡々と指摘する。


「あれは怒らせたかもしれないぞ。いや、嫌われたかもしれない」


「き、嫌われたって、そんな……。だって、僕とハナちゃんはお互いにファーストキスを捧げる約束をした仲なんだぞ。それなのに、勘違いで嫌われちゃったら、約束も……」


「もう一度言うが、勘違いじゃないからな。あと、お前のファーストキスの相手は私だ。忘れるな」


「追いかけないと……。誤解されたままは良くない」


「おい、私の指摘をスルーするな。って言うか、もう出発だろう。綿谷華を追いかけいたら、フィオナに怒られるぞ」


そのタイミングでフィオナがヘリコプターから声を上げる。


「誠、もう行くわよ! 早く乗りなさい」


「は、はい」


ヘリコプターの方へ足を向ける僕。それを見たセレッソが嬉しそうに言うのだった。


「何だ、綿谷華を追いかけないので、フィオナのところに行くのか」


「そ、そういうつもりじゃなくて……」


動揺する僕を、セレッソは興奮した猿のような声で笑う。


「お前、どっちがいいんだ? もし、フィオナが相手になったら確実に尻に敷かれるだろうな。あいつは我が儘だから大変だぞ。逆に綿谷華は意外に面倒見がいいよな。不満を言いながらも何かと尽くすタイプだ」


……そうかも、しれない。

いやいや、だから、どっちが良いとかそういう話しじゃないんだって!


セレッソが僕の肩を叩く。


「おいおい誠、パッとしない顔面の割にはモテモテじゃないか。お前、昔言ってたハーレム系の主人公ってやつに、自分がなりつつあるんじゃないか」


「パッとしないとか言うなよ。あと、お前にハーレム系主人公がどうとかって話、したっけ?」


「そんなことよりだな」


急に話を切り替えるセレッソ。既にあの不愉快な笑いは一切なかった。


「ヴァジュラを無事回収したら、ワクソーム城に乗り込むんだろ」


「そうだよ。ハードスケジュールだけど、最終決戦だから覚悟しているつもりだ」


セレッソの表情が真剣なものに変わる。


「約束しろ。ワクソーム城には一人で乗り込むな」


「どういうこと……?」


「私もできる限りのことはするつもりだ。だが、もしワクソーム城に突入する前に、私と合流できなかったら、お前は待機してろ。いいな?」


「なんでだよ。ハナちゃんや皇も戦うんだ。僕だって行かないと」


「ダメだ。絶対にダメ。私と一緒に行くんだからな」


いつも僕に戦え戦えとうるさいセレッソが、なぜか消極的な行動を促してくる。そういえば、前もそんなことがあったような……。


「忘れるな。ワクソーム城の奥には魔王がいる。魔王はオクトの勇者が……いや、オクト全戦力を集結させたところで勝てはしない。だから――」


パコンッ!


「いってぇ!」


セレッソが何かを言いかけたが、僕は後ろから何者かに引っ叩かれた。


振り返ると、フィオナの顔が。


「誠、早く! セレッソも急いでいるんだから後にして」


セレッソが肩をすくめると、フィオナが僕の手首を引っ張って歩き出す。ヘリコプターに乗り込む僕たちに、セレッソが呑気な声で言うのだった。


「二人とも死ぬなよ」


ヘリコプターの中は、何だか重たい雰囲気だった。どうやらその原因は、明らかに不機嫌な態度を見せるフィオナのせいに見えるのだけれど……。


「貴方、いつまで人を待たせるのよ」


「す、すみません」


う、うわー。

パワハラ系王女様じゃないか……。


「綿谷華と何を話していたの? 彼女だってワクソーム城攻略の準備があるはずなのに」


「いえ、何ってことは……」


助けてほしくて、雨宮くんの方に視線を向けたが、あらかさまに顔を背けられてしまう。


「そもそも、貴方たちどういう関係なの? いくら同じスクール出身だからと行って、ベタベタし過ぎじゃない?」


ハナちゃんの次はフィオナかよ!

なんで二人とも同じタイミングで似たようなこと言ってくるんだ!!


「まさか生き別れの姉弟(きょうだい)とか言うんじゃないでしょうね? そうだったとしても、ベタベタし過ぎだと思うけど」


ちょ、フィオナさん?

皇の前でそういうこと言うのは本当にやめてほしいな……。


「ハナちゃんはスクールもクラムも同じだし、色々と教えてもらってるから」


無難な説明で何とかならないか、と思ったが、フィオナは僕を睨みつけて、窓の方に視線を移しながら「ふーん……」と呟くのだった。

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