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【夢を抱くだけなら】

セレッソが「次の戦いまでに必ず戻る」と約束してから、どこかへ飛び去ってしまったので、瀬礼朱と三枝木は防衛拠点に戻ることにした。日も暮れて、真っ暗な道を二人は歩く。頭上には王都では見られないような満点な星空。


「実は私……」


そんな中、瀬礼朱は三枝木に自分の悩みを打ち上げることにした。


「勇者を目指したい、と思っていたんです」


「え?」


「……ここ何年かで、ランキング戦が積極的に配信されるようになったの、知ってますか?」


「ええ、はい。フィオナ様が戦士育成のため、そういう動きを始めた、と聞いています」


「父の影響はもちろんですが、私も配信を見て、勇者を目指して戦う人たちに憧れを持ったんです。三枝木さんと、同じですね」


「でも、瀬礼朱さんは聖職者。勇者としての素質は……ないのでは?」


「私、二重属性なんです」


二重属性。

それはとても珍しいものだった。


オクトの戦士は、勇者、魔法使い、聖職者と分かれるが、それはプラーナの質によって決まる。勇者タイプの人間は、他の属性としての適正はなく、その道を強いられるわけだが……


稀に二重属性と言われる、二つの素質を持った戦士が誕生するのだ。驚く三枝木に、瀬礼朱は続ける。


「母は敬虔な聖職者なので反対されていて……。そこまで勇者になりたいなら、イロモアで戦ってこい、と言われたんですよね。最初は逃げ出す勇者たちを見て軽蔑していましたけど、今日初めて正面から戦うことの怖さを知りました」


「なるほど……。もしかして、相談したいと言っていたのは、このことですか?」


瀬礼朱は頷き、恥じる気持ちを抑えながら言う。


「私も結局はただの臆病者だったんです。自分なら絶対に逃げない。絶対に最後まで戦う勇者になれるって思っていたのに……。馬鹿ですよね、こんな私が勇者になりたいなんて」


ダリアを前に動けなかった自分。それなのに、今まで三枝木を責めるような態度を取っていた自分が恥ずかしかった。そのほかにも今日の出来事を振り返って俯く瀬礼朱だったが……。


「そんなことはありませんよ」


「え?」


顔を上げると、三枝木が微笑んでいた。


「だって、瀬礼朱さんは勇敢じゃないですか。十分、勇者としての素質があると思いますよ」


「私が……勇敢?」


正直、ピンとこなかった。

しかし、三枝木からそう評価されることは嬉しいことだ。さらに、三枝木はこんなことを言った。


「では、戦争が終わったら一緒に練習しましょう。あ、私が自分のクラムを持ったら、ぜひ入会してください」


「いいんですか?」


「もちろんです。こちらこそ、ぜひお願いします」


三枝木の笑顔に少しだけ明るい未来を見出す瀬礼朱だったが、きっとそれも無理なのだろう、と否定する自分もいた。


だって、自分には勇気がない。

勇者にとって、一番大切な勇気が。父が持っていた勇気が……。


それでも、今は夢を見させてほしい。そう願いながら、瀬礼朱は星空を見上げた。




この数日後から、オクトの大反撃が始まる。それは幼い王女、フィオナの強い意向によるものだった。

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