【これから異世界で無双してモテモテになります。なると思っていました】
「私と異世界へ行かないか? そうすれば、お前は無敵の勇者になれる」
女神を名乗るその少女は、翡翠色の髪をなびかせて、僕に言った。
「向こうの世界では、お前は誰よりも強い。英雄になれることは間違いない。
そしたら、異世界の美女たち……例えば、王女も聖女も女勇者も、お前に惚れるこだろうな。きっと、モテモテだぞ」
僕がモテモテに?
そんな世界線、本当にあるのだろうか。
高校生を一年半続けても、彼女どころか友達もいない…いや、陰でごみ虫と言われているらしいこの僕が、王女やら聖女やら女勇者やらからモテモテなんて、本当にあるのだろうか?
「あるんだよ」
と言って女神を名乗る少女は、悪魔のように笑い、手を差し出した。
「だから、私と契約しろ。お前が歩むべき本当の人生に導いてやる。誰もがお前を敬う。お前に憧れる。お前に魅せられる。そんな世界が、お前を待っている」
自称女神の言葉を聞いて、ここ一年半のつらい高校生活を思い出す。あのつらかった時間が全て嘘で、本当の僕がどこかにいるなら。
今の自分を変えられるなら。この自称女神が本当は悪魔だったとしても……。
行ってやるさ、異世界とやらに!!
「分かった。契約する。僕を……異世界に連れて行ってくれ!」
「いいだろう、神崎誠。お前を異世界で最強の男にしてやる」
女神の手の平が、光り輝く瞬間を見て、僕は確信した。きっと、すべてが変わる。そう信じたから、胡散臭い女神と契約して、僕は異世界へ向かうのだった。
そして、僕は今、異世界にいるわけだが、ひざまずいていた。いや、うずくまっている。弱ったごみ虫みたいに、瀕死状態で。
「何が無敵の勇者だよ。弱すぎ」
僕をたった一発のパンチで倒した異世界の女勇者は呆れたように言った。僕に惚れるはず、と聞いていた一人の女勇者。しかし、彼女はうずくまる僕を見て、矮小な存在を馬鹿にするように、鼻で笑うのだった。
「この程度で倒れるくせに、勇者を目指すなんて、よく言えたもんだな」
痛みで朝食べたものが、すべて出てきてしまいそうだった。女勇者が言う通り、僕は弱すぎた。でも、異世界に来れば、僕は誰よりも強くてモテモテになるんじゃなかったのか?
話が違うじゃないか、と僕は少し離れたところに立っている偽女神に、視線を向けた。すると、彼女は笑っていた。惨めな僕に呆れるように。
「は、話が違うじゃないか。この世界で、僕は無敵なんだろ? やっぱり、あれ嘘だったんだろ?」
問いかける僕に、自称女神は首を傾げた。心底、意味が分からないといった様子で。
「何を言っている。単にお前の実力不足だろ。私を詐欺師みたいに言うな」
じ、実力不足?
僕は自称女神の言葉が信じられなかった。
だって、おかしいじゃないか。
異世界にきたら、無敵だってお前が言ったんだから。
こういうのって大体、チートな力を手に入れて、無双しまくって、いろんな女の子に想いを寄せられながら旅の終着点で魔王と戦って……
そして、感動のクライマックスを迎えるものなんだろう?
異世界にきて一日しか経っていないのに、もう心が折れてしまいそうなハードな展開って、どういうことだよ。
「大丈夫。お前はちゃんと無敵の勇者になれる、はずだ。だから、もっと頑張れ」
なれる、はず?
もっと頑張れ?
ふざけるな!
僕は自称女神に掴みかかってから、この詐欺まがいの契約を白紙にしろと迫ってやりたがったが、腹部を襲う痛みに立ち上がることすらできなかった。亀のように丸くなる僕の背に、自称女神の声が。
「異世界にきたからって、すぐ無敵になれるわけないだろ。とにかく努力しろ。根性を出せ。そして、実力を身に付けろ。まずはそれからだ」
努力だと?
根性だと?
実力だって?
僕は生まれて一度も努力ってものをやってみたことがないし、根性というものが出たこともない。実力なんてものが身に付くわけがないだろう。
きっと、これは何かの間違いだ。
僕は無敵の勇者になるんだ。
まずは女勇者。
絶対、お前に勝って僕を認めさせてやる!
こちらの作品に興味をもってくださり、ありがとうございます。
この作品は異世界ハーレムものですが、ちょっと変わった設定かもしれません。しかし、
胸が熱くなるようなバトル展開や
可愛いヒロインたちもたくさん出てきます。
ぜひ何話か読んでみて、少しでも面白かったら一章の最後まで
さらに続きが気になったら最新話まで読んでもらえると嬉しいです!