第6話 研究室
プレゼンの翌日……
俺は言われた通り再び魔法少女機関へと足を踏み入れた。
「お、来たか」
「あれ、おっさんじゃん」
入って早々俺を出迎えたのはおっさんだった。
わざわざ入り口の近くで待機してたのか?
暇かよ働け。
「俺はおっさんじゃないし暇なわけでもないからな、お前に具体的に来てほしい場所を伝え忘れてたからここで待ってただけだ」
「ふつうはそういうのって部下にやらせるんじゃ……、やっぱり暇なんですよね?」
「ちげぇっつってんだろ。ほかの研究員はお前がプレゼンに持ってきたものの調査で掛かりきりだから比較的暇な俺が……、あ……」
「やっぱり暇なんじゃないですか」
おっさんは口を少し開きしまったと言いたげな表情をしている。
墓穴掘ったなこのおっさん、これだからおっさんなんだよ。
「と、とにかく研究室まで案内するからさっさとついてこい!」
「は~い」
「いちいちむかつくなこのやろう……」
なんだかんだ言いつつ案内をしてくれるおっさんについていき無駄に長い廊下を進んでいく。
「ん?何このガラス張りの部屋?」
「そこは魔法訓練室だな。魔法少女がたまにここで魔法の運用を試したりしてるんだ。」
「たまにって、あんまり使われてないんですか?」
「本当はもうちょっと使ってほしいんだが、あんまり使う必要性がないんだよこの部屋は」
あんまり使う必要がない?
魔法少女なら魔法訓練は必須な気がするけど…
気になったのでおっさんにどういう意味かを聞いてみた。
「実はな、魔法少女とはいうが魔法は基本魔法5つと固有魔法1つしか使えないんだよ」
「え、たった6つだけ?」
「あぁ、一部例外はなくもないが基本的にはそれだけ、だから魔法の訓練とかはあんまり必要ないんだ」
「でも魔法で戦闘訓練とかは必要なんじゃ」
「それがこことは別にここよりも充実した戦闘訓練場があるんだよなぁ」
「うわぁ、そりゃ使われるわけないですね」
戦闘訓練場があるのにわざわざ魔法訓練場を使う必要はないわな。
しかしなんでわざわざ2つも場所を用意したんだ?
「なんで完全劣化版の魔法訓練室があるんですか?」
「それは魔法訓練室はどちらかといえば俺たち研究室のための施設だからだな」
「あ~、ここで使われた魔法を測定して研究するんですね」
「そうだ。だからたまに魔法少女にお願いしてここを使ってもらってるんだよ」
「うわぁ……」
つまりそれがなかったらこの部屋絶対に使われないってことじゃん。
「まぁ、今後はお前も研究で使う必要が出るだろうし一応この部屋のことは覚えておいてくれ」
「は~い」
話を終え、俺たちは再び研究室に向けて歩き始めた・
「着いたぞ。ここが研究室だ。ほらさっさと入れ」
ついたのは研究室と書かれたドアの前、促された俺は少し緊張しつつもドアを開いた。
「おぉ、結構広いですね」
おそらく100m四方は優にあるだろう広さだ。
しかも設備もかなり充実している。
おっ、希釈冷凍機あるじゃん、これでマナゼリーも作れるな。
「お、きたっすねお二人さん」
「思ったよりも遅かったですね何してたんですか?」
「あ、プレゼンの時の」
設備に軽く感動しているとチャラそうな人とクールっぽい人の二人が俺たちに話しかけてきた。
そういえばプレゼンの時に名前聞いてなかったな……
「そういえば自己紹介してなかったっすね。俺は陽樹 創っす」
「私が月隠 優愛よ。よろしくね宇佐戯君」
「えっと、チャラそうな創さんと似非クール系の優愛さんですね。よろしくお願いします」
「おっ、いきなり名前呼びっすか、その性格結構好みっす」
「え、似非クール系……」
「的確な表現だろ」
「まぁ、似非クール系なのは間違いないっすね」
優愛さんは床に手をついてうなだれているが別にショックを受けているわけではなさそうだ。
なるほど、なかなか個性的な人たちだ。
楽しそうだなだなここは。
「ほかの研究員はいないんですか?」
「あ~、他のやつらは東京やら大阪やらの支部にいるからここにいるのは俺たちだけだぞ?」
「え、まじですか?」
この3人以外人がいなかったので訪ねてみると意外な答えが返ってきた。
一応ここって魔法少女機関の本部だったはずじゃ?
「確かにここは本部ではあるんだが、そもそもここって北海道だろ?広い土地がたまたまここにあったからここが本部ってことになってるが、正直東京の支部のほうが人は多いんだよな」
「まぁその代わり、俺たちだけでこの広い研究室を使い放題なんで俺としてはありがたいっすけどね」
「創君が良くても上司の俺はあんまりよくないんだがな……」
「え、私と一緒にいやなんですか井出さんは、そんな……ショックです……」
「うわ、井出さんそこまで言わなくてもいいじゃないですか」
「曲解しすぎだろお前ら!?」
優愛さんがわかりやすい泣きまねをして、創さんがそれに便乗しておっさんをからかっている。
この研究室を俺含めて4人で独占か、確かに理想的な環境かも。
なんかワクワクしてきた。
「こほん、この話はいったんおいておくとして、二人に頼んでおいたマナゼリーの複製はできてるか?」
んえ、マナゼリーの複製なんてしてたの?
俺に言ってくれれば詳しい作り方ぐらい説明するのに……
「全くできてないっす。マナの液状化まではできたっすけど、それが揮発するまでの1分間でゼラチンで固めるとか、地味に高度な謎技術が使われてるせいでできる気配がないっすね」
「ゼラチンって固めるのに本来は3時間はかかるのに1分しかないのよ?できるわけないじゃない」
「え、まじ?」
「あ~、ゼラチンを1分で固めるにはですね……」
* * *
マナゼリーの製法を教えること1時間……
「うお、マジで1分でゼラチンが固まったっす。意味分かんね~っす」
「……これを使えば好きな時にゼリー食べ放題なのでは?」
「無駄に高度な謎技術をそういう風に使おうとするから似非クールなんだぞ?」
「たまにやってますね。ゼリー結構好きなので」
俺たちはコントを挟みつつ会話をしながらマナゼリーを作り出すことができた。
1時間の間3人と話して分かったことがある。
この職場が結構楽しいということだ。
創さんと優愛さんがボケておっさんがツッコむのを適度な頻度で繰り返しているからか会話していて飽きが来ない。
「とりあえずマナゼリーはできたから次は弾丸にする必要があるんだよな?」
「はい、あ、でもマナゼリー単体も研究用にほしくないですか?」
「どっちにしろマナゼリーの量産体制を作ってほしいっすね」
「けどそれにはマナゼリーの作成方法を広める必要があるが宇佐戯は大丈夫なのか?」
「あ~……」
三人が痛い質問をしてくる。
けどマナゼリーを広めると絶対に猛毒だって言ってるのに飲むやつはいるよな……
となると広めるわけにはいかない。
「俺としてはマナゼリーにはまだまだ危険性があると思いますし安易に広めたくないですね。できればここにいる3人だけにしてほしいです」
「まぁ、そうだよな、支部の研究員や上のやつらには適当にごまかしておくか」
「え、そんなことしていいんですか?」
広めたくはないとおっさんに言うと想定外な返答が返ってきた。
仮にも国が運営する施設だよね?
「いいんだよ別に、俺も広めるのは嫌な予感がするし、上のやつらも何となく察して黙ってくれるだろ」
「そんなに上の人たちって融通利くんですか?」
「あぁ、魔法少女機関は上層部が人道第一主義だからな。それぐらいはしてくれる」
「うわぁ、理想の職場……」
イメージだと上層部と腐敗の温床とかだと思ってたのにだいぶクリーンなんだな。
「公表しないってことは量産は俺たちだけでやるんっすね。まぁ、後輩が公表したくないっていうんだから先輩として守らないとっすよね。」
「とりあえずサクッとある程度のマナゼリーを作り置きしましょうか、10キロぐらいでいいかしら?」
「そうっすね、ちゃっちゃと作るっすよ~!」
あ、あったかい職場だ、ほんとなんなんだここ、逆に怖くなってきたんだけど。
その後本当に10キロのマナゼリーを作成し、日も落ちていたのでその日は解散することになった。
小話
実はこの話の舞台は北海道で東京に行くような予定は一切ない。
思ったよりもポイント乞食に効果があったので今回もします。ポイントください。




