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日輪と月輪

作者: つかさ

朝起きて一発で書きました。

 カーテンから光の筋が溢れでている。今日もいつもと変わらない朝がやってくる。至極当たり前のこと。そう誰もが思うだろう。

 眠い目を擦り、布団をバサバサっと剥ぎ取り、こんもりとした下腹部を抑えつける。

 いつもと変わらないルーティーンだ。

 しばらくして根城からのそのそと這い上がった。

 いつもと変わらない机。いつもと変わらないバッグ。いつもと変わらないアザラシの人形。

 そして見慣れない物があった。

 アザラシの横に日輪が浮かんでいた。

 ふわふわと漂い、だが明らかな熱を感じる。小さいながら部屋という宇宙空間でその使命を全うするかのように照っている。

 それに近くの照明の垂れ下がった紐が少し黒くなってる気がする。

 いや…そんな…

 私は興味が湧いた。触ってみたらどうなるのだろうかと。

 結果は火を見るより明らかだった。

 あっちぃ

 やけどした。だがなぜいきなり我が根城に太陽が現れたのか。奇怪だ。

 これから毎日こいつと睡眠を共にすることになるのか。もしこいつが俺に近づいてきたらどうするんだ。

 そんな考えをよそに日輪はなおも輝き続けている。

 考えても埒が明かないと判断した私はとりあえず飯を喰おうと思い部屋を出ようとした。

 その時、気が付いた。身体が一定以上布団から離れたらなかなか前に進めなくなることに。

 悪寒が心を貫いた。

 即座に背後に目をやった。

 日輪があったのならまさか…

 そのまさかだった。丸い影が見えた気がした。

 そこには灰色の月輪が浮かんでいた。

 日輪の光に応えるように前半分は灰褐色を帯び、後ろ半分は真っ黒だった。

 やはりぷかぷか、ふわふわ浮かんでいる。

 いよいよ訳が分からなくなった。夢だと思い頬をつねった。それだけでは足りず全の身をもって暴れた。

 でも何も変わらなかった。

 日輪と月輪の重力を身をもって体験することになるとは思いもしないだろう。だが、これが現実なんだ。現実なんだ…。

 そんなわけで私は布団のそばから動けなくなった。

 この日を境に私は眠ることしか出来なくなった。

 時間を持て余す間は日輪と月輪に手を合わせ続けた。

 私をお救いください、と。

 しかし、何も変わらなかった。

 だんだん腕が細くなっていき、肋骨が浮き始めた。

 それなのに日輪がそばで皮膚を照らし続けるので次第に茶色にやけてきた。痩せていくのに肌は茶色に焦げる。変な話。

 私もついに限界がきた。飲む物も食べる物も何もない。独り身の私にはどうすることもできなかった。

 嗚呼、なにもなし得ずにこの世を去る私をお許しください。

 叔母さま、叔父様、今そちらに参ります。

 動かない身体で拝み続けた。 

 頭を下げ、想いを口ずさんだ。

 日と月よ、私を犠牲にした罪は重い。かならずや断罪を与えてやるぞ。

 身体が冷えてきた。ああ、もうだめだ。寒くなってきた。

 最後の力を振り絞り身体を布団から持ち上げた。

 すると日輪は明らかに壁の方へ寄っていた。月輪は反対側の壁に寄っていた。

 動き始めたのだ。己の法則に気が付いたかのように。ゆったりと動き始めていたのだ。

 やがて日輪は壁をしゅーしゅー音をたてながら焦がし始めた。

 真っ白な壁は次第に黒く変わっていき、そのまま日輪は外へでた。

 月輪はといえば壁を無理やり貫き、丸い痕から外の光が入ってきた。

 私はその御姿を見えなくなるまで見守った。やがて2つの輪は彼方に消えた。

 呆然とした。なんだったんだ。あれは。死の直前にして私は救われた。祈りが届いたのか、はたまた新たな目標を見つけたのか、分からない。

 まぁそれでもいい。構わない。

 きっとあの2つの輪は地球をまわって来年また会えるのだから。その時に尋ねてみよう。

 

 朝飯だ

 

よくわかりませぬ

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