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第31話 クーネル指名手配される


 その機嫌が悪そうな狩人たちの中には、よく見る顔に混じってジャイナさんチームの面々の姿が見られた。


「ナイス兄貴。皆が機嫌が悪そうだがどうされたのかな?〔ゴボゴボ〕」


 ジャイナさんは何となく怒鳴りだしそうに見えたので、ここは比較的に冷静に見えるナイス兄貴に声をかけてみた。

 女性にヤイノヤイノ言われると長いし、更にこちらに飛び火して来られると何と言おうか困ることが多いのだ。


「お、ツライオさんじゃねえか。今日からここで経理やるんだッけか。いや、実はな……昨日から行方不明の学院の先生がいてさ。多分死んでるんじゃねえかって話なんだ。それで、騎士団が出てきた。しばらく俺たちは地下に入れねぇわけだ。地下の仕事は全部無しだ」


 昨日のハゲオムツ先生の件は、今日になってとうとう大事(おおごと)になったようである。


「何か見つかったのか? 私もブラブラ迷って逃げ回っていたりしたが……〔ゴボゴボ〕」


「アンタと違って全員が地下に慣れてる。死体は出ないが、装備がいくつか水路に沈んでるのが見つかってな。多分喰われたんだと思う。狩人も10人帰ってこねえ。(かたき)を探すのを手伝わせてくれって頼んでるところだ。南西部に居たチームの女達は昨日は(もぐ)ってなくてな」


 やはり昨日の者達は、男性だけの臨時混成(りんじこんせい)チームだったというわけだ。


「それで騎士団の調査はいつまでなのだろう? 〔ゴボゴボ〕」


「多分20日ぐらいだ。役所へ(しら)せが来る方が早いと思うぜ。俺たちは地下に入れないなら、北の森に行ってオースギール〔※〕でも狩って来ようか考えてる」


 被害にあったのは南西部で活動していたチームであるから、この北西部の役所には詳細がまだ入って来ていない。

 

 狩人達は、一辺が3ザトー(≒㎞)の地下設備を現在22チーム(200人前後)でもって護っている。よく担当する場所はあるが、基本的にはどの地区にでも行くということになる。


 それなりに横の(つな)がりもあって、相手が大物である可能性が高ければ仇討(かたきう)ちもやるのだろう。

 それでも騎士団から許可が出ない場合、都市の北に広がる森でオースギール〔※〕でも狩ってこようと考える者も居るわけだ。


〔※オースギールというのは一角のシカに似た生物。草食性だが気性が荒く、鋭く前方に出ている角を使い(ムレ)槍衾(やりぶすま)を作って身を護る。北側の森は西の森と違い危険が多い〕








「ナイス! アタシは絶対に地下へ(もぐ)るよ! クーネルだか何だか知らないけどね。学院の教師まで殺ったからって、相手も不死身ってわけじゃないだろうしさ」


 ジャイナさんはそう言って割り込んできた。


 ジャイナさんをはじめ、ここに来ている狩人は全員が地下用に武装している。得物(えもの)や火炎瓶を持ち、下半身以外は金属で補強した革鎧が圧倒的に多い。衝撃を逃がしたり、攻撃を避けたりした方が良い相手が多いのだ。

 

 下半身も両腰は防具に(おお)われているし、両脚だって膝の上までガッチリ防具が護っている。噛みつき対策ってやつだ。


 ところでクーネルって……私のことですね。知ってます。自分で考えた名前だし。それにしても何でそこまで話が進んだのだろう?


「ジャイナ、落ち着きなさいよ。まだそいつが犯人だって決まってないじゃない。騎士団も何か変だしね。人間の言葉を話す『ゴミ喰い』みたいなヤツなんでしょ? 鉄の巨人と戦ってたって噂もあるけど……私はこういうキナ臭いのは苦手だわ。騎士団は何か隠してるわ」


 ジャイナさんの後ろからは、チームの仲間であるユニさんがやんわりと止めに入ってくれた。ちなみにヨメンは相変わらず無言である。


「騎士団も、今のところは確証を持たないで動いてるだけかもな。得体の知れない生き物が現れた。教師と狩人が何かに殺された。関連があるか分からないけど調べましょうって感じかもしれねえ」


 ナイス兄貴のこういうところは中々に凄い。ハッキリした情報のみから考えれば、その辺りが妥当(だとう)ではないかという答えを出してくれた。


「その……クーネルとかいうのも見つかっていないのだろう? 別の生き物に喰われたのではないかな? 私は出会わなかったよ、そんな生き物とは〔ゴボゴボ〕」


 もちろん教師は私が()ったし、10人の狩人を殺したのは南西部に住んでるアリであることも知っている。


 それでもここは、シラを切り通しておくのがスジというものだろう。


「かもしれない。だいたい噂の出所が南東部の『ナカダゴール何でもやる会』だ。信用出来るかっていったら怪しいな。ところでツライオさん、髪がフサフサになったな。最初に会った時は完全にハゲだっただろ」


「実はシヴィン先生の店で一番高い『毛生え薬』を買って飲んでみたんだよ。ここは凄い都市だ。来てみて良かった〔ゴボゴボ〕」


 そんな話をしていたら、狩人達の座る席の方からどよめきが聞こえた。








「すげえ声の職員さんだと思ったが、ハゲが治ったんだってな。それは良かった。歓迎するぜ」


 そんなことを言ってくれる狩人も居る。


「この人が『流しの魔法使い』殿だよ。声は東方で怪我したからだって聞いたけど、ハゲの方は治って良かったよ。眉毛も無かったからね」


 などとジャイナさんが周りに紹介してくれていた。


「これからよろしく。ここで経理などをしている。依頼で地下に降りることもあるかもしれない。今日はハゲが治った祝いに(おご)らせてほしい。取りあえず飲んでいってくれ〔ゴボゴボ〕」


 ここは拾ったカネの出番だ。私は料理カウンター〔ここと併設されている〕を担当する『ジョンソン』さん〔男性〕に4千デネイ〔大銀貨4枚〕を出して、適当に酒と料理をお願いすることにした。


「ありがてえ! ご馳走になるぜ、ツライオさん」


「何か悪いね。でもハゲが治った祝いなら付き合わないとね」


「オイ、今日はどうせやることがねえし、折角だからご馳走になって帰ろうぜ。ツライオさん、何か悪いな。ハゲ快癒(かいゆ)おめでとう! 眉毛(まゆげ)()るよな!」


「デカイ奴が出て来てアブねえ時にはお世話になるぜ。学院の連中は中々来てくれねえ」


「ハゲの薬って()るんじゃなかったかな……まあ飲んで治ったなら良いか!」


 一時期は雰囲気も悪かったが、取りあえず飲めるときて明るい騒がしさが役所に戻った。


 私の方は、仕事が終わるまで飲むことも食べることも出来ない為に業務に戻った。


 急遽(きゅうきょ)非番になってしまった修繕(しゅうぜん)担当者も来て、料理カウンターの方は開設以来の盛況(せいきょう)を見せ、更には夕方から役所の職員までが参加することになって飲み屋と大差無(たいさな)い状況になってしまった〔上役の皆さんは少しカネを出してくれた〕。


 私はと言えば結局のところは、追加で1万デネイ〔金貨1枚〕を支払うことになったが全員に受けが良かったのは何よりだ。


 それにしても毛生え薬は塗り薬だった様だ。基本は何でも消化するのは仕方がないとしても、人に説明する時はもっと気を付けなくてはならないな。








ツライオ〔クーネル〕の所持金

金貨:56枚 大銀貨:0枚 銀貨:0枚 大銅貨・銅貨:省略



主人公【クーネル】の能力を整理


作成:伸縮性の高い布、半植物繊維の布

   服やブーツ等の各種完成品

   土加工ブロック〔土質固化接着液〕

   金属繊維の布、金属加工ブロック

   ネットリ『甘味増量』回復薬

   シュワシュワ解毒液(酒割り水)


特性:膂力、素早さ、器用さ、穴掘り

   赤外線視覚、保護色、反響定位

   人間の振り〔シルエットだけ〕

   岩鉄の肌、柔らかい体

   白・茶・黒の体毛が生える


会話:人間、ネズミ、黒アリ


武器:強酸、溶解毒、クモの糸、カマ

   雷撃の魔法、火炎の魔法、ハサミ

   肉の鞭、噛みつき

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