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第24話 ハゲオムツと炎の魔法


 南西部の壁からドバッと出てきたアリは、壮絶な勢いで10人の狩人の男達にたかり始めた。


 今気がついたのであるが、男達は2チームか3チームであると思われるものの女性が居ない。北西部にくる5つ前後のチームには全て女性がいたのに妙だ。

 穴堀に付き合うのはゴメンだと言われたのかもしれない。


 それは良いとしよう。女性が少しずつ食い千切られる所とか(つら)くて見ていられない。男性の場合には我慢だ。


 連中が殺られたのはあっという間だった。火炎瓶(かえんびん)を至近距離で使用したヤツも、それなりの数のアリを道連れにして焼け死んだ。


「クソッ、役立たずどもめ! 前払いの分だけでも回収してくれるわ!」


 例のウォムツゥ教師だけは離れた場所でこの光景を見ていたので助かったらしい。

 壁を適当に掘れば、アリの巣に当たることもあるのはここでは常識だ。


 どうして、そういう事を修繕担当者に頭を下げてでも聞かないのであろうか。事前情報が生死を分けるのは何処でも一緒だ。それを(おこた)れば、こんな感じで何となく危険に遭遇(そうぐう)しアッサリと人は死ぬ。


 (くだん)のウォムツゥ教師は、先ほどの台詞から見て『火炎の魔法』をアリの群にブチ込むつもりらしい。火炎瓶よりは広範囲で高火力であるから、今見えている群は狩人の遺体もろとも炭になりそうだ。


 個人的な(うら)みと、地下に住まう言葉の通じる者たちに対する配慮から、私としてはここのアリの味方をすることに決めた。


〔※アリ:黒い甲殻に3つに別れた体節を有し、大アゴに6本の脚を持つ肉食の虫類。通常は30ドーメン(≒㎝)以上の大きさである。  

 森に住むものはトゲだらけで茶色い。巨大な森アリの氏族は人間の住む帝国を地下で16分割している。

 寒すぎる北の領土には存在しない。さらにモッペンユーテクレーヘン周辺だけは黒色の小氏族が乱立している〕








「この忌々しいアリどもめ! これでも喰ら……ギャアァァァ、ハギョレモォォォォ!」


 紅い大きな石が付いた杖を(かか)げたウォムツゥ教師であったが、予想外の方向から飛んできた毒液が、顔から胸にかけてを溶かし始めるとは思っていなかっただろう。


 こちらはベロリと天井から落ちると、背負い袋の荷物を持ってハゲが半分になった先生の所に近寄った。


「こうなると呆気(あっけ)ないな、先生。馬鹿な興味本位で、当初の予定というモノを変更しなければ良かったのだ。ここには切羽詰(せっぱつ)まった存在も居る。4週間(28日前)ほど前からな〔ゴボゴボ〕」


 そんな事を言っている間にウォムツゥ教師の方は動かなくなった。


 この男を消化して、こちらは更なる人間らしさを手に入れるとしよう。ついでに杖を消化すると手から火が出るようになるんじゃないだろうか。


「そこの『ゴミ喰いの人』。そこにある死体は食べるのか? 要らないなら我々にクレ!〔カサカサ〕」


 考えていたらアリが話しかけて来た。


「初めまして。クーネルという。これは食べる。壁を直すのも手伝おう。そうだ、甘い液体と死体を3体ほど交換してくれないか?」


 私はシュワシュワ解毒液と死体を交換してほしいと頼んだ。試飲した相手から承諾(しょうだく)の返事が来たのは本当にすぐの事だった。


「うめえ! たくさん出ますか?〔カサカサ〕」


 またしても受けが良かったので、50匹ほどにたっぷりとやって私は一際(ひときわ)体格の良い男を含む3体を得た。肉は大分無いが、脳と骨が残っていれば今回は充分だ。








 オムツ先生を含む4体と、杖を消化してみた私は今度も身体中が光り始めた。


「おお! これはまた来ているな。それにオムツ先生の荷物が予想外に使えそうだ!〔ゴボゴボ〕」


 オムツ先生は金貨を50枚も持ってきており、他の狩人の金も使い道が無いアリからもらう事が出来た。合計で金貨62枚に銀貨が37枚もある。ついでに特徴の無い小袋もいただいてこれに硬貨(こうか)をしまっておく。


 更にはオムツ先生は薬瓶を持っていた。『傷薬:即効性』と大陸公用語で書いてある。これも4本あって全部飲んでみる。

 火炎瓶を食べても燃焼物質を吐いたりは出来なかったが、こっちは何かの力を私に与えてくれたりはしないだろうか。


 傷薬を飲んだところ、ここでまたおかしな感覚が体内に生じた。やはり! これは魔法の産物だ。


 遺体一体の骨を丸々残して、これらをかなり短い時間で消化した私は、身体の一部からネローンと粘性の高い液体を出すことが出来る様になっていた。


「甘い匂い。それもくれさい!〔カサカサ〕」


 というので試しに食べさせたところ甘い上に身体が元気になると言う。


「うめえ! それもちょーだい〔カサカサ〕」


 この液体も50匹ほどにやってから、ようやくこちらは壁の修理をやり直す事が出来るようになった。







 今回、一際(ひときわ)体格の良い男の骨だけ残したのには理由がある。

 この骨を使って、人間形態の維持を自然に出来ないかと思ったのだ。自分は肉の役割だけを行えれば、動きは適度に滑らかになり楽になるに違いない。

 このままだと(もろ)いので、帰ったら金属で全部を作り替えてしまえば良いのである。


 消化しないように骨を身に(まと)う事は試したら出来た。これで壁の修理をやってみると非常に良い。

 最初は肉があまり過ぎて、完全にデブ体型だったが、壁の修理をやっているうちに骨の大きさに肉の分量が合ってきた。


「これ、あげる。『王よこれからも末長くお付き合い願いたい』と女王が仰せデス〔カサカサ〕」


 両方の壁の修理が終わった頃に、アリが『青い小さな石』をたくさん持ってやって来た。何やらへりくだった態度だ。王って何で?


「我ら『ワセダカモシレンデス』氏族の女王『ワセメシエンヌ』は『王の出す汁』によって健康と長い寿命を得ました〔カサカサ〕」


 どうやらそういうことらしい。アリにも利くのか薬。多分元気になって毒にも強くなったということだろうと思う。


「私は王というわけではないけれど、今後ともよろしくと伝えてほしい」


 ワセダカモシレンデス氏族のアリにはそう言っておいた。様々な方向に良い顔をしていないと、私の様な人外はすぐ死にそうで非常に危ない。悪い噂と多数派というヤツは力があるのだ。良い噂と大勢の味方は居るに越したことなしだ。


 粉っぽい『青い小さな石』の礼も伝えて、私はようやく住処(アジト)に帰ることにした。


 人間の振りをより完全にし、ジャイナさんに頼まれた通り、次の私は都市設備管理機構の窓口に行ってこなければならない。










黒アリ

★ジョーチジューニロー氏族:北西部1

女王:ブーンゲイブ

★ツクバードヴォク氏族:北西部2

女王:レオナディス

★キョーダイデデナイ氏族:北東部1

女王:エターナルゴモリー

★ネオニート氏族:北東部2

女王:ブラブ・ラブラ

★ワセダカモシレンデス氏族:南西部1

女王:ワセメシエンヌ

★カミサンガヒトツバシ氏族:南西部2

女王:キョーサイン

★ラガーメイジ氏族:南東部1

女王:アイトアーイト

★トゥダイゲバルト氏族:南東部2

女王:オルグルア



主人公【クーネル】の能力を整理

作成:伸縮性の高い布、半植物繊維の布

   服やブーツ等の各種完成品

   土加工ブロック〔土質固化接着液〕

   金属繊維の布、金属加工ブロック

   ネットリ甘味回復薬

   シュワシュワ解毒液(酒割り水)


特性:膂力、素早さ、器用さ、穴掘り

   赤外線視覚、保護色、反響定位

   人間の振り〔シルエットだけ〕

   岩鉄の肌、柔らかい体

     

会話:人間、ネズミ、黒アリ


武器:溶解毒、クモの糸、カマ

   ハサミ、肉の鞭、噛みつき

   雷撃の魔法、火炎の魔法

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