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第22話 アリとは仲良くしておく


「その、私がどうしたいかということなんだがね、この生き物についてちょっと調べてみたいんだ。君たちはそこら辺の鶏冠(トサカ)か何かを切り取って報告にいくんだろう?〔ゴボゴボ〕」


 私は「自分だけ、ここに置いていってもらえないかな」という感じで聞いてみた。


「そうなんだけどさ、別にうちらの手柄って訳でも無いしね。あんたの功績なんだよ、ツライオさん」


 ジャイナさんは落ち着いて返して来た。この酷い声に慣れてくれつつあるらしい。


「個人的に興味があるんだよ。『流しの魔法使い』としてなんだが〔ゴボゴボ〕」


 ここで苦し紛れながらも、良い感じの言い訳が出てきてくれた。『流しの魔法使い』便利だな。


「それなら仕方がない。これ地図ね。北西部しか載ってないけど、アタシらが今いるのはここだから。この四角い印〔◆〕が付いてる場所が上に上がる穴だからさ。アンタ絶対に後で役所の管理機構の窓口まで来てよ」


 ジャイナさんは地図までくれて念を押してきた。拡大版はありがたい。


「分かった。ありがとう。是非そうするよ。これで地上に戻れそうだ。どこからここに降りたのか覚えてないんだ〔ゴボゴボ〕」


「そりゃ、この街に来たばっかりじゃね。後で役所から、地上に開いた穴の確認作業のお達しが出ると思うよ。それじゃアタシらは引き上げるけど、死体を狙って危ないヤツが来たら逃げるんだよ。今まで無事だったのは大したモンだけど」


 ジャイナさん達はそう言うと、陸ザメの背中のヒレと『アオ何とか何とかガエル』の鶏冠(トサカ)を切り落として戻って行った。







 初の会話はちょっと焦ったが『流しの魔法使い』で押し通したことにより何とかなった。そういう者は実際に居るし、この都市に来るかもしれないと思われる職種の威力は凄いものがある。まさかここまで上手く誤魔化(ごまか)しが利くとは。


 最悪の場合は斬り合いに発展する可能性もあったのだ。それを考えれば、今回のやり取りは最初にしては上出来の部類なのではないだろうか?

 

 こういうのは繰り返しにより信頼を得ることで、友情を形成したりすることもあるのかもしれないし無いのかもしれない。だが今はそのことは置いておこう。


 私は衣装を脱いで背負い袋に戻すと、ここに横たわる『何とか何とかガエル』の死体を始末するべく消化吸収を開始した。ついでに陸ザメの残りもいただいておくとしよう。初の『噛みつき』が手に入るかもしれないしな。念のためにカエルの死体の後ろに隠れて脱いだ。


 私は床に陣取ったカエルの上に拡がりながら、ジャイナさんチームの消えた分岐路の闇を見ることもなく見つめていた。普通の狩人に知己を得て、普通の騎士と顔馴染みになることは可能なのであろうか。


 それでも頑張らねば。目指せ! 地下引きこもり生活(ライフ)脱出ってやつだ。


 陸ザメと『何とか何とかガエル』の死体は共に食いでがあった。これ食えるけど凄い大きくなってしまうパターンや。

 大きくなったら布を出せば良いのだが、何処でも出せるわけではない。地下の床は汚い場所の方が当然のように多いし、キレイな場所は人目に付きやすいから大量に出すには向いていない。そして住処の中は7アーム(≒m)四方しかないので、5アームより大きくなってしまうと本当に厳しい。

 

 仕方がない。文明人らしく振る舞いたいが、私はもう人間であるとは言えない存在だ。ここは地下にいる会話可能な連中に、死体の半分を進呈することにして何とかしよう。


 私は既に縦横4アームほどになってしまった身を起こすと、上部から触手を2本出して細かく振りながら、先端から特殊な物質を放出した。実はこの物質は何種類かあり、出す順番と種類の組み合わせによってアリと会話出来たりする。ここのアリと会話するのは初めてだが、彼らには食料の様な対価を払わなければならないだろう。今回は頼みごとが死体の始末で良かった。


 ここは北西部だ。アリには縄張りがあって、この都市の地下ではアリの各氏族ごとに住み分けが出来ているようなのである。


 しばらく気体を出していたら、わらわらとアリ達がやって来てくれた。実はネズミ語も話せるし、ネズミでも良かったのかもしれないが、チューチュー言うのが面倒だし大きな音になってしまうので今回はアリの出番である。








 しばらくすると、アリたちがやってきたがこちらを酷く警戒している。


「怪物め。いったい何の用だ? また我々を食うのか?〔カサカサ〕」


「カエルが死んでる! 怪物の仕業だ〔カサカサ〕」


 ワラワラと一斉にやってきたアリ連中は、こちらを見るなり怪物呼ばわりしてきた。個々の大きさが30ドーメン(≒㎝)以上もあるような群れにまで言われたくない。しかし身に覚えがあるので、ここは下手にでることにした。アリ語は何かの物質を吐くため水っぽくならないのが良い。


「いやいや、そう警戒するな。今回はこの死体を進呈しよう。前回のことは不幸な出会いだった。しかしここは、お互いにわだかまりを捨てて今日の肉のことを考えるべきではないだろうか?」


 今の住処(アジト)を含む周辺に住んでいる彼らは『ジョーチジューニロー氏族』という。つまり住処を掘る際に、さんざん消化してしまったアリたちの生き残りなのだ。女王だけは名前があって『ブーンゲイブ』というらしい。


 私の和平交渉が上手く行ったのか、連中は納得して危険生物の死体を細かくすると、あっという間に片付けてくれた。


 ちなみに床面に出来た尿や血の池であるが、こういった物はスライム状の『ゴミ喰い』がキレイに片付けてくれる。水路の水がキレイな場所は掃除のオッサンが洗い流したりするが、汚い場所にはスライム状の『ゴミ喰い』の様な地下の掃除屋が大量にいるのだ。


 床の血の跡を見ていて不意に気になった。そう言えば私はジャイナさん達を助ける為に、あの高威力の雷撃と思われる術を使ってしまった。私がそれなりの威力の術を行使すると知られたわけだ。


 つまり試し撃ちで南西部の壁にバッチリ開けてしまった穴を何とかしないと、私は役所から後で追及を受けて、洒落にならない費用を支払わなければならなくなる。

 

 疑わしきに金を払わせるのはお役所の常套(じょうとう)手段だ。謎の怪物は壁の弁償なんてしないが、流しの魔法使いならば金を払わせることは出来るのだ。


「何かあったらまた頼む。そうだ、良かったらこれを飲むか?」


 私はアリに別れを告げる際に、新能力である『シュワシュワ解毒液』の試飲を勧めてみることにした。


 これは3日程前に、解毒作用のある液でも出ないだろうかと考えていたら勝手に出てきた物だ。そこら辺のウロコ駄犬(ダイヌ)で試したから解毒作用はあるはずだ(駄犬さんはその後食べた)。この時ばかりは深夜にそっと外出して確かめた。

 自分で出したものを自分で飲んだところ、不思議なことにシュワシュワした感触と甘い味までする変な汁なのである。


「うめえ! これもっと出せませんか?〔カサカサ〕」


 意外と受けが良かったので、3.5アーム(≒m)くらいに縮まるまで50匹ほどにやった。アリ達は、口移しで他の個体にも分け与えることが出来るそうだ。


 水分が減った分は下水路の水で補給してから改めて南西部へと向かうことにした。下水路の水でも普通に抵抗なく飲めるようになったあたり、この地下の生き物として相当に汚れてしまった感がある。







主人公【クーネル】の能力を整理


作成:伸縮性の高い布、半植物繊維の布

   服やブーツ等の各種完成品

   土加工ブロック〔土質固化接着液〕

   金属繊維の布、金属加工ブロック

   シュワシュワ解毒液(酒割り水)


身体能力:膂力、素早さ、器用さ、穴掘り

     赤外線視覚、保護色、反響定位

     人間の振り〔シルエットだけ〕

     岩鉄の肌、柔らかい体


会話:人間、ネズミ、アリ


武器:溶解毒〔酸+毒〕、クモの糸、カマ

   ハサミ、雷の魔法、肉の鞭、噛みつき

   

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