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口が裂けても
朝は母親が時間になるとちゃんと起こしてくれる。
そして身支度を整えてキッチンに行くと、できたての朝ごはんがテーブルに並んでいる。
朝ごはんをきちんと食べ、「いってきます」を言い家を出る。
学校に行くと先生が笑顔で挨拶をしてくるし、同級生も楽しくじゃれてくる。
休み時間や放課後は友達とくたくたになるまで遊ぶ。
帰るとお風呂が沸いていて、夕ご飯もお腹いっぱい食べられる。宿題があることだけが玉に瑕だ。
それが我が息子の毎日。
毎日、当たり前のように繰り返される毎日。
機嫌の良し悪しで拳が飛んでくることもなければ、給食だけが唯一の食事なんてことはない。
夜は大抵ひとりぼっちで、酷い時は何日も帰ってこない親だった。
それが私の子供の頃の毎日。
毎日、繰り返された。毎日。
就職して家を出るまで毎日。
私と同じ様な境遇の子供の特集をテレビでやっていた。
息子は「かわいそうだね」と言っていた。
本当に分かって言っているのだろうか。
かわいそうな子供だった親に育てられている息子よ。
明日も当たり前に幸せな日常があると思うな……なんて口が裂けても言えない。