2:何故、作品が埋もれるのか
さて、目的を決めたので、次は手段です。
といっても「横断的なレビューサイトを作る」が答えになる訳ですが、その経緯をもう少し詳しく。
そもそも、小説サイトで作品が埋もれる原因を考えてみましょう。
ぶっちゃけてしまうと、作品数が多すぎる、という一言に尽きてしまうのですが、それはむしろ喜ばしいことです。競争が苛烈なんですから。
問題なのは、そこでの「競争の勝ち方」が作品のクオリティ以外の部分に大きく支配されてしまっていることだと思っています。
個人的に感じることは3つ。
〚理由①〛更新頻度・派手さが重要すぎる問題
正直、読者が探すのはランキングや新着、キーワード検索が精々だと思います。
その中でもランキングの強さは圧倒的です。何より日間のランキングに入るのがまず大切でしょう。
となると、大切なのは「更新頻度」。いきなりランキングに載るのは不可能なので、沢山の人に見てもらうためには、より上位に表示される時間をより長くするしかない。
キーワードで検索した時、新着タグで検索した時、上位に表示されるようにしないといけない。
Webサイト的に言えば「IMPを高める」というやつです。Googleの検索結果で上位に表示されるか否かとほぼ同じ問題です。
作品数の多いジャンルなんかでは一日数回の更新が必要でしょう。ランキングに載れば、有象無象とは一気に差をつけることができます。だから何がなんでも目指す人は絶えない。
お次はいわゆる「CVRを高める」というもの。
検索結果の数ある作品の中から、自分の作品を選んでもらう必要がある、ということです。
となれば、大事なのは「タイトル」ですよね。他の作品に読者を奪われないようにしなくてはいけません。より目立つように、よりキャッチーに。
最近はあらすじがなくても中身が分かるタイトルが増えました。意識的にせよ無意識的にせよ、作者の方は影響を受けているでしょう。
というか、サイトユーザーの作者が全員、あんな長いタイトルが素晴らしいと考えているなら、もはやカルト宗教です。
そして、数々の努力の末、ようやく読んでもらって、中身で判断されるのです。
面白いか否かが出てくるのは、ここにたどり着いてやっとです。
〚理由②〛マーケットの志向性が偏りすぎ問題
今度は中身、というかジャンルの問題。
「なろう」といえば「異世界」です。もはや、この2つはイコールで結べるほどになってしまいました。
異世界好きの読者が多いから作品が多いのか、異世界作品が多いからそうした読者が多いのかは分かりませんが……
とにかく、異世界ものをイメージ、もしくは期待して利用する読者がサイトユーザーの多くを占めているのは事実でしょう。
「君の膵臓をたべたい」が受けたのは、偶然、プロ作家の目に止まったからでしょうね。
正直、こうした「既にマーケットができあがったサイト」で他のジャンルで戦っていくことは本当に厳しい。
純文学などでWEB小説の1位を目指すのは、動物園の中で、サボテンが人気No1を目指すようなものです。
異世界モノしかねぇ!! なんて文句を言うのはお門違い。
だって、そういうサイトなんです。
ただ残念なのは代替手段がないこと。
マーケットの需要に合っていないなら、他のサイトで活動をすべきなのですが、悲しいかな、大手小説サイトは大なり小なり「なろう」の影響を受けています。
ということで、面白いか否かは別にして、既に最初のジャンル選びの時点で大きな格差が生まれることになります。
もちろん、異世界ものは異世界もので作品数が多すぎるという問題が、こちらもこちらであるのですが……
問題だらけやん!
〚理由③〛クオリティ博打問題
これは投稿サイトという性質上仕方がないのですが、作品のクオリティにおいて「あたりはずれ」の落差が激しい。
商業雑誌に掲載されている小説と違って、選ばれた人が書いている訳ではないので当然といえば当然のことです。
でも、だからこそユーザーは「ハズレを引きたくない」、「早々と判断したい」となります。
するとどうなるか。
信頼できる「ランキングの影響力」が強くなります。
サイトデザイン上、既に強すぎる状態なのですが、これでもはや無双状態です。
さらに素人投稿には「エタる」可能性もあります。
「完結作品を一つは持つ」なんてノウハウが出回るのも、これが原因かもしれません。
結局、ユーザーからしたら、地獄にたどり着くかもしれない冒険の旅よりも、マンネリであろうともそれなりに耐えうる整備された観光ツアーのほうが良いのです。
地獄の痛みが、普通よりも激しいというのならばなおさら。
こうして自分で冒険をしない人たちがたどり着く場所は固定化され、格差は更に広がっていきます。
どっかのインフルエンサーが、これ面白い!なんて言ってくれない限り逆転は厳しいでしょう。
ということで……
多分、もっと色々原因はあるし、上記の中に間違いがある可能性もありますが、サイトの設計についてこのような仮説を立てて話を進めていきます。
で、ようやく、ここで「何故、レビューサイトなのか」という話です。
当然、100%の解決にはなり得ませんが、代替策を用意したいのです。
現状、サイトの中は多数決で勝負が決まっています。言葉は悪いですが、頭数が重要なのです。
「沢山の人の目に触れるために、沢山更新する」
「その上で目立つ」
ここが作品の成否の前提になってしまっています。
でも別の軸を用意したい。
100人の薄いファンより、1人の熱いファンを獲得する作品が注目を浴びる道筋をか細くとも作りたい。
レビューが人目を引けるかは、更新の回数ではありません。遅い筆であっても「ファンを生み出せるか否か」です。
そして残念ながらマーケットは外から変えようはありません。
でも、いくつかの小さなマーケットを組み合わせて大きなマーケットにすることはできます。
だから横断的なサイトを作りたいのです。ただでさえ少ないファンが分散しないように。(例えば純文学)
そしてレビューという「中身」での判断基準を作ることで、多少は冒険がしやすくなるのではないでしょうか。
色々な課題はありますが、これがレビューサイトを作る、という考えにいたった経緯です。