新しい世界
「は~、よく寝た。」
私は商社に勤めるサラリーマンである。昨日は会社の飲み会で酔っ払ってタクシーで帰りそのまま寝つぶれてしまったのだった。しかし私は起きた瞬間とんでもないことに気づいた。
「ん?」
急上昇1日本転移
急上昇2アリ計画
急上昇3失業
「石崎官房長官、理研支援へ」
「外貨、外国株保持を」
「失業手当、補正予算案可決」
「アリ計画、責任は私に」
「途方にくれる渡航者」
私はまだ自分が酔って夢でも見ているのかと思った。とりあえずもう一度寝よう、私は心の中でそう思いすぐ眠りについたのだった。
4時間後、私は会社からのスマホの着信音で目が覚めるのだった。不思議なことに日本ごと転移したという異常な事態であるにも関わらず街は驚くほど落ち着いていた。大震災でもパニックが起こらない日本ならではなのだろうか。とはいえ現実は中々厳しいものだった。町に車は少なく、電車も間引き運転を行っている。証券会社の横を通れば為替の電子モニターが真っ暗になっていたり来日した外国人が南海百貨店の前の広場で途方に暮れていた。彼はそんな人達を横目にこれからの生活の不安を隠すように職場へ向かうのだった。
ー首相官邸
「どうやら何とかなっているようですね総理」
「よもや自分の名前がつくモラトリアムを行うとは思わんかったね。GPS衛星の打ち上げも成功したようでなによりだ。引き続き報告を頼む。」
現在、外貨や外国株式は凍結状態となっており価格が下がらないように固定されている。また同時に勝手に取引されないよう海外資産を交換することを禁止した。これは時空の裂け目の研究が進み諸外国との交易が復帰した際の事を考えてのことだった。しかし、やはり多くの人は外貨が価値を取り戻すことに自信を持てず安値でも売り出そうとするため金融闇市が生まれてしまったのだった。
「総理、衛星がとらえた映像の中に与那国島から西へ400キロほどのところに街を発見したようです。映像からして街の文明レベルはだいたい15世紀前半のヨーロッパと同じくらいのようです。その他もっと近い距離にもいくつか屋敷や村があるようです。」
「とりあえず調査隊を自衛隊の中といくらかの民間人で組織して向かわせてはどうだろうか?」
「では外務大臣と防衛大臣よろしく頼む。」
総理は調査隊を派遣してこの世界の情報収集を図ることを試みたのだった。