アリ計画
笹島教授の発表から政府は秘密裏に転移への準備を進めることなった。もっとも準備といってもまだ転移の可能性があるいというだけで派手に動いてしまえば国民に秘密がバレることとなり経済に影響を及ぼしてしまうために裏でこっそりとできる範囲で進められた。低い可能性のために派手に動くのは今コロナウイルスの復興でせっかくよくなってきた景気に水を指すこととなり本末転倒である。そのため全ての準備は最高機密で行われるのだった。さらに時空の裂け目についての研究は、国家最高機密として独断研究を行うべきという意見も多方面からあったが既に海外にも時空の裂け目の話は水面下で伝わっていることでどのみち完全に秘密にすることはできないだろうということになったため世界各国との共同研究となった。
転移の準備としてまず石油資源や食糧の備蓄量が増やされた。これは災害の際や有事の際を理由に整備することができた。そして第2に気象衛星の予備の建造とGPS衛星の購入である。しかしアメリカからのGPS衛星購入の交渉はそう簡単にはいかなかった。アメリカにとってGPS衛星は自国の技術の結晶であり絶対に日本に渡せるものではなかった。さらに日本側も秘密裏に短期間で大金を用意するのは不可能だったため交渉は暗礁に乗り上げるかと思われた。しかしアメリカ側のある提案によって解決した。
「ミスター宇部、合衆国は日本国にGPS衛星は売却できないという最終結論を出した。しかし合衆国は条件付きでなら貸し与える用意がある。どうだろうミスター宇部?」
ジェファーソン国務長官は宇部外務大臣に問う。アメリカ側がつけた条件は以下のものだった。
①日本側はアメリカに頭金500万ドル、転移するまで年に50万ドルを支払うこと。
②GPS衛星の管理は在日米軍基地で行われる。
③アメリカはいつでもGPS衛星の返還を要求することができかつ、日本は要求されたら迅速に返還しなければならない。
こうすることで日本側は一気に大金を支払わずに済むしアメリカは継続的に資金を得ることができるというメリットがあった。また在日米軍基地での管理ならば日本側に技術が漏れる心配も少なかった。
「おー、この条件なら!」
後日、山本総理とウォーカー大統領との間で密約が交わされ正式に貸与されることとなった。その後GPS衛星は速やかにアメリカで作成され米軍によって運ばれ嘉手納在日米軍基地にて保管されることとなった。
そして山本政権のもと進められたこの秘密裏の備えは後に大きく役立つことになるのであった。この転移の準備の計画はアリ計画と呼ばれ後に教科書に乗ることになる。