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人生芋芋。  作者: 豆腐は手の上で切れなくていい
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大学芋の進路相談室

「ん〜、今のだと、紅本さんが、何を軸として就活してるのかがわかりづらかったかな。」


「はい。」


「もう一回、自己分析をやってみて、練り直したらまた誰かに見てもらってくださいね。」


「はい。」


「あ、時間が来てしまいましたね、じゃあ、頑張って。」


「ありがとうございました。」



 その誰かを探すのがめんどいんだよな。もう時間もないし対策が不十分でも面接に行くしかないだろうな。自己分析なんてやったって仕方ない。仕事において何を自分が大切にしたいかって?過去にヒントなんてあるはずがない。今まで生きてきて分からなかったんだから振り返って、分かるものでもないんだろう。


 研究室に寄り道すると、コガネに会えたから、早速愚痴を溢してしまう。


「俺さあ、干し芋が第一志望なんだけど、やっぱり志望者多い上に採用人数少なくってさ、参るわ。」


「ああ〜、最近干し芋志望の子面接ラッシュって聞く〜。」


「業界広げるっつったって、俺はもう干し芋以外考えられないわけよ。」


「ん。ベニーはずっと前から干し芋狙ってたもんね。」


「そ。インターンも茨城に泊まり込んで1カ月やってさ、水分量の減らし方とかけっこう学んで、面接でその話するとけっこう受けはいいんだけど。でも、インターンだとやっぱり最後まではやらせてもらえないじゃん?だから、実力としてはアピールできなくてさ。あと、東京と茨城の往復費用が嵩んじゃって、定期買おうかなーとも思ってる。」


「twitterで見たけど、就活応援定期っていうのあるらしいよ?大学芋3・4年生であることが証明できれば、2割引だってよ。」


「え、知らんかった。コガネありがと。」


「いえいえ。どこ狙ってんの?会社は。」


「やっぱりほくほく本舗かな。給料もいいし。あと、先輩の話聞いたら紅丸もいいかなって。業界5位だけど、最近製法を刷新して、若い人にも受ける干し芋っていうのが注目されてて。」


「へえ〜、先輩ってきんときさんだよね?あの人紅丸行ったんだ。いが〜い。てっきり芋焼酎行ったんかと思ってた。途中で業界変える人も聞くけど、干し芋と焼酎ってけっこう離れてるよね」


「きんときさん実家が石川だから、家族と近くに住めるってのもあって、Uターン的な感じで干し芋に変えたって聞いた。」


「なるほどね〜。」


「コガネはどうよ?最近は。」


「よそよそしい言い方ね〜。甘納豆業界はさ、業界が昔からある分けっこう堅いとこ多くて、毎回塩服しか許されてないの、それも、天日塩しか着ちゃいけないんだよ?もう飽きちゃった。私いつもいろんな調味服使ってるからさ。」


「それけっこうストレスだよね。どうせ会社入ったら調味服なんて限られるから、今だけじゃん、いろんな味纏えるの。」


「それな!でもさつまいもの甘納豆は、昔からなりたかったからがんばんなきゃって思うけど。おばあちゃんが甘納豆だったから、甘納豆の上品な感じとか、子供の時から憧れてて。」


「へええ、そうだったんだ。すげえなあ。うちは、俺以外みんなおさつチップスで。兄貴もガルビーだぜ。」


「え!ガルビーすごいじゃん。お兄ちゃん会ってみたい。ベニーと似てる?」


「似てるから恥ずかしいわ。しかも痩せてるところも一緒。だからさ、親からもお前は干し芋向きじゃないって言われてるんだけど。」


「………..でも、これから体力つけて、体も大きくすれば大丈夫だよ。」


「そうだといいけど。干し芋会社、ずっと日に当たってて体力勝負だし、先輩干し芋からのしごきもあって、入れるかわかんないのにビビってるわ。」


「しごきって、もしかして皮むき?」


「よく知ってるね。先輩の皮を剥くんだけど、ちょっとでもむき残しがあったら、じゃがいもの奴らを呼ばれて、ソラニンのにっがいドリンク飲まされんの。」


「うわっ。ほんとにそうなんだ。本屋で業界研究の本立ち読みしてたら書いてあって、半信半疑だったんだけど。うわー。男社会ならではだね…….。」


「干し芋業界でも頑張ってる女の人はいるんだけど、やっぱりシミとかいっぱいできちゃうし、保湿しても保湿してもカサカサしちゃうらしいから、なかなか長くは働けないみたいね。でもほくほく本舗の取締役は、そういう事態を重くみて、干し芋用の日焼け止め開発してたよ。」


「え!すごいな。さすが一番手だね。金がある。」


「な。正直おさつチップスのさつは札束のさつって言われてるくらい、潤ってる業界ではあるから、親の言い分もわかるんだけど、ほくほく本舗に入ればそれに劣らない給料もらえそうだなって思って。」


「そうだよ!親の言うことなんか聞くことないよ。」


「だよな。あ、きんときさんの話で思い出したけど、あの人もう子供いるらしいよ。彼女が石川にいるから、Uターンしたのもあるつってた。」


「はやー!うちらも年なわけだねぇ。」


「しかも彼女?じゃないくて奥さん、じゃがいもだって。」


「え!じゃあ子供、じゃつまいもじゃん。じゃつまいもの子って、どっちの遺伝子も持ってるから能力高いって言わない?」


「え、それは知らなかった。とりあえず服選び大変って言う事だけは知ってる。」


「あ〜ねぇ。体に合う味付け見つけるのなかなか大変らしいよー。じゃつまいもの調味服の専門店も聞いたことないし。でも、運動能力がずば抜けてるって。いもりんピックの選手でも、母がじゃつまいもとか、よく聞くよ。」


「へぇぇ。クオーターじゃあ見た目ではよくわかんないもんな。」



つづく

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