焼き芋買いたくて買わなかったこと人生で数えきれない
最寄駅を降りると、たまに焼き芋売りのトラックが停車しており、紅はるか、安納芋、鳴門金時、、、とまあ色んな品種の芋が私の帰りを待ってました〜とばかりに出迎えてくれる。原価率を考えると買うのがもったいない気がして、スーパーでも見て見ぬ振りをしている焼き芋ちゃんたちであるが、やっぱり、いざ目の前に焼き芋が現れると、私は好きな男のようにガン見する。でもこちらは歩きながら見ているので、首をグイッと回して、トラックの前手にくるまで彼女たちを見つめ続ける。テクノを聞きながら半トランス状態で歩いているので、家に着くまでには、さっき見た焼き芋のことなど忘れてしまっているが、芋たちは、そんなにすぐ私を解放させてはくれない。
帰ってキッチンの引き出しを開けると、干し芋がひなびた体を変な角度に折り曲げながら、私を出迎える。小腹が空いた私はビリっと勢いよくパッケージを破り、まず一人、取り出す。見た目こそピチピチで快活な焼き芋ちゃんには劣るが、干し芋は、芋の本質をぎゅっと濃縮した存在である。若造になんぞ負けるはずがない。言うなれば、芋界の横綱、いや、バラモンである。ネチョネチョしてグミかと思うほどの粘力。自然の粘りというのがまた贅沢よ。いつも一人でやめようと思っているのに、あともう一人だけ、もう一人だけ、といっているうちに一袋食べてしまう。一袋が芋何本分になるのかは、怖くて計算していない。
茨城にほしいも神社というのがあるらしいが、ぜひ、人類にこの至高の品を与えてくださったこと、感謝申し上げたい。