救った命と救えなかった命
別れは唐突にやってくる。
あの時、もしかしたら親友の命が失われていたかもしれない。
5年前ー
その日、幼なじみと喧嘩をした。
理由はもう思い出せないが大したことではなかったのだろう。
小さい頃から一緒だった美岐と喧嘩をしたのは初めてだった。
お互い仲直りのしかたがわからずに3学期最終日を迎えた。
美岐とはクラスが違ったので全然顔を会わせなかった。
小耳に挟んだが美岐はクラスでは孤立していたらしい。
彼女は頭が同年代と比べて頭が飛び抜けてよかったためだろう。
私はクラスでも明るい方だったので友達は多かった。
クラスの友達と途中まで帰り1人で帰った。
「あ、あれは?」
雨が降っているのに傘を射さず1人でポツンと立っている幼なじみを見つけた。
彼女は空を仰ぎなにかを呟いている。
「私は…私が…」
その時、美岐に大きな影が迫っているのが見えた。
私は傘を投げ捨て走り出していた。
また大事な人がいなくなるのは嫌なんだ。
このまま喧嘩したままお別れなんて絶対に許せない。
私が私を好きであるためにあなたが必要なの。
すんでのところで美岐を突飛ばしその後、身体に強い衝撃が襲った。
ーーーーーーーーーーー
2年後ー
目が覚めるとそこは知らない建物だった。
喉が極限まで渇き声が出せない。
節々も痛く身体が上手く動かせない。
「やった起きた。」
聞きなれた、でもすごく懐かしい落ち着く声が枕元で聞こえた。
ゆっくり顔を向けるとそこには唯一の親友が立っていた。
「みき…無事………だったん…だ」
「それはこっちのセリフだよ。たく2年も寝やがって。」
美岐は袖で目を拭う。
「声出すのもしんどいだろ。これから少しずつ時間かけてリハビリしていこうな。」
声を出すのも辛かったので軽く頷き再び眠りについた。
それから少しずつ少しずつ時間をかけて身体を動かせるようにリハビリを続けた。
痛み止めと言われて渡されて飲んでいた薬に違和感をかすかに感じていた。
徐々にその違和感は大きくなり生活に困らないほどになったとき美岐に尋ねた。
「私の身体って…どうなってるの?」
「…」
美岐は沈黙する。
「なんとなくわかってるんだ。身体が徐々に動くようになって身体の機能に重大な損失があるってことに。」
美岐は唇を噛み締めている。
「教えて、美岐。私はあとどれくらい?」
「あと…」
ようやく声を出した美岐の口は重く
今にも泣き出しそうな声をしていた。
「あと2年と少し。今は私の作った人工臓器でなんとかしてるけど所詮は作り物。あの事故で美岐の臓器は無事なところがないくらいに壊れて運びこまれた病院ですら匙を投げた。そこでツテで病院から光を引き取り人工臓器をつけ延命処置をした。」
以前、美岐が人工臓器を知り合いと作ったと言っていた。
しかしそれを作るのに膨大な時間がかかり同じものを用意するのは難しいと言っていた。
きっとこの人工臓器が止まれば私は死ぬのだろう。
「私を救ってくれた光には感謝してもしきれない。何かしたいことやりたいことがあったら言ってくれ。全力で力を貸そう。」
「じゃあタイムマシン完成させてくれ。」
「え?」
「以前作っていただろ?それを私のために使わせてほしい。」
彼女は一瞬驚いた顔をしてすぐさま白衣を羽織った。
「すまないが1年待っててくれ。必ず完成させる。」
「うん、信じて待ってる。」
唐突に話を畳みにかかります。