不可逆
ー1年前
「新島さん家の娘さん最近見ないわね」
「両親がいなくなってから追い討ちをかけるように友達が事故に合ったのを目の当たりしちゃったらね」
その日は私の心の内を嘲笑うかのように晴れていた。
家を出て聞こえてくるご近所さんらの噂話を気に止める気力もなく歩き始める。
何が悲しくて高校へ向かっているのだろう。
ー高校楽しみだね!ヒカリ!
幼なじみの友達の親友の最愛の…
この言葉が私を縛る。
高校の前の湖の周りを歩く。
桜が嫌味なほど綺麗だった。
それを見て喜ぶ人も何もかも憎かった。
ここ最近眠れずだいぶ早く来すぎたせいで校門が開いていなかった。
しょうがないので湖周りの椅子に腰を降ろし門が開くのを待った。
何もしていないと嫌なことを思い出す。
2週間前、美岐が死んだ。私のせいで死んだ。
本当ならば今日、隣にいてこの綺麗な桜を一緒に見てこれから訪れる高校生活に期待に胸を膨らませていた…はずだった。
「校門開きましたよ!」
後ろから声が聞こえる。
まだ早い時間で周りには私かおらずきっと私に向けられているのだろう。
しばらくここに座っていたかったがまだ少し冬の空気が残っており身体が冷えて来ていたので立ち上がる。
声をかけてくれたのは髪が少し茶色の人懐っこそうだがどこか近寄りがたい空気を持った少女だった。
シワのない制服。きっと私と同じ新入生なのだろう。
「あなた、何でそんなに泣きそうな顔をしているの?」
「桜がキレイ…だからかな」
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「何でこんな夢を?」
学校から帰ってそのまま寝てしまったらしい。
日が傾いて部屋が暗くなっていたので隣で自分に寄りかかって寝ていたコウに気付かずに立ち上がる。
「いたっ」
ソファーに頭を打ったところを擦りながらコウも目を覚ます。
「部屋くらっ。すっかり二人して寝ちゃったね。」
凄く呑気で間の抜けた顔のコウ見て少し落ち着く自分に気付く。
「ほら、ご飯にしよ?」
コウが私の顔を見て少し驚いた顔をしてすぐに頷く。
「私の顔に変なものでもついてた?」
「ううん、可愛い笑顔なだげだよ」
笑顔?言われて口角が少し上がっていたことに気付く。
久しぶりに笑った気がした。