面影
「光、本当に行くの?」
白衣を着た小柄な少女…にも見えるほど若い同年代の友人の美岐が少し悲しそうな顔で聞いてくる。
「ごめん、美岐。最後にやりたいことがあるんだ。」
「そっか…じゃあ止めないよ。話したいこともあるしお菓子でも食べながら話そっか」
「あ!私の好きなお菓子だ!」
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「洗剤入れて…なにか他に買うものあったかな…」
コウと夕御飯を食べた後、二人で近くのスーパーに来た。
「コウ、明日の晩御飯の材料は大丈夫?」
家事は当番制を取っているため明日のご飯当番のコウに聞く。
「あるもので作る予定だったけどついでだし色々買ってこうか~」
二人で野菜や安くなっているお肉などをカゴに入れてスーパーを一周する。
レジに向かおうとするときお菓子コーナーの商品が目に入り足を止める。
「これ、美味しそう」
新商品のポテトチップスナマコバニラ味を手に取り眺めていると横からコウが覗き込んでくる。
「それ美味しいよ!」
「食べたことあるの?」
「昔…いや今からしたら未来か。ネットではクソマズって叩かれてたんだけど一部の熱狂的な信者がいて期間限定で時々販売してたんだよね。」
「コウが美味しいって言うならきっと当たりなんだね。」
「そうだね。それにしても懐かしいな。…と最後に食べたのがこれだったな」
最後の方が聞き取れずに聞き返すがコウは笑いながらなんでもないと返すだけだった。
コウはこのポテチを誰かと一緒に食べてたのかな。
こっちに来るときその人と別れるのは辛くなかったのかな。
今まで気にもしなかったことが気になってくる。
帰り道二人で大量に買った食材を重い重いと言いながら歩く。
「ヒカリ、そろそろ新学期だね~」
「来週から2年か。クラス替えもめんどくさいな。まあ友達いないんだけどね」
「せっかく新しい環境になるんだから友達作ったら?」
「コウは友達いたの?」
「ワタシにはワタシがいればそれでよかったから!あ、何その目。いたよ1人くらい。ホントだぞ?」
「私にもいたよ…友達。その人以外は…別に…」
そこから少し空気が暗くなりお互いに話すことはなかった。