悪魔同士の攻防戦
(だめだ!)
右半身しか動かない俺に…銃を向けながら移動ができない。
そうこうしているうち、音もなく頭上に何かがかすめるとともに猛烈な風圧がミンスクを襲う。
悪魔が隠れた木を見ると細く穴が開いていた。
(この威力…この戦車の装甲を容易に貫通する…弾薬庫にでも当たればアランならとにかくエジリスは致命傷だ!これ以上こんなモン打たせるわけにはいかない…!)
「コンセントレーション」
ミンスクのサブマシンガンは音もなく火を噴く、そして吸い込まれるように弾丸が悪魔が空けた小さな穴を通り抜け悪魔に命中する。
(腕に着弾したな…左半分が動いたら追撃に行きたいんだがな…)
そう思った直後、急に視界が白い靄に包まれた。
(クソォ!見えん!)
ミンスクはとっさに悪魔が隠れた木陰に銃弾をぶっ放すが手ごたえがない。
そしてまた強烈な風圧を感じた。
今度は操縦席辺りに命中している。
「エジリス!」
ミンスクは思わず叫んだがすぐに無事を確認する、彼が飛び起きたような振動を感じた。
(安心している暇はない!戦車を移動するまでエンジンかかるなりと時間がかかる、そしてこの靄…このままだと何もできないまま戦車が破壊される…何か…何かないか?!)
とどうしようもない暗闇の中、必死に手立てを考えていたが…その最中ミンスクの視界がありえないものを捉えていた。
それは…あの襲ってきた…あの悪魔の背中、地面は冷えた戦車の鉄板ではなく柔らかい草の上。
「何かわからんがくらえッ!」
ズダダダダダ!
ミンスクにとってはホントワケワカメだがそんなの今となっちゃ知ったことじゃない。
サブマシンガンで両腕両足、翼に大量の風穴を開け、おまけに顎も破壊してやった。もう戦闘も魔法も使えまい。
◇ ◇ ◇
「ミンスク大丈夫?」
「ああ、髪が3ミリ吹っ飛んだぐらいだ」
「大丈夫そうだな」
アランまで入ってくる。
「それにしてもまともに動けないのによく悪魔と戦えたものだ」
「そんなことよりも…こいつだエジリス直して縛れ、そして魔力は全部俺の義手に流せ」
ミンスクの言うこいつは…あの悪魔であった。
「あいあいさー」
◇ ◇ ◇
「おはよう」
初めにミンスクが声をかける。
「貴様…私をこんな状態にして何をする気だ…ミンスク…」
「おっと…俺の名前を知っているのか?どこから知った?」
「…そんなこと…言っ…うッ…」
ミンスクは義手を悪魔の肩に置く…
「悪魔の血か…魔力をかなりため込めそうだ…」
「貴様…吸血鬼か何かか…」
「お前…悪魔よりも悪魔だな…前から分かっていたが」
アランが割って入る。
「仕方ないだろ?こうでもしなきゃ吐かないだろうし、吐いてもらわなくちゃ困る」
「自白剤完成したよ~」
悪魔さん…ご冥福をお祈りいたします。
◇ ◇ ◇
車内にて…
「やっぱりいいスキル持ってたな~」
「いや…そんなことより魔王に狙われているんだぞ!どうしてこうも呑気でいられるんだ!お前の左半分も治ってないのに!」
「やかましい!鬱陶しいぞこのアマ!」
「貴様ぁ…!」
急な強烈な返答にアランの怒りボルテージは急上昇…だが。
「アラン…多分ミンスクが一番わかっている、あまり口出ししないでくれ」
エジリスの真剣な忠告で落ち着きをとりもどした。
サージタモルテス(スキル・魔法)
破壊力・・・S5
加害力・・・C
射程・・・S
精密動作性・・・B
発動速度・・・E
コスト・・・D
成長性・・・D
あの悪魔の技、劇中の通りの凄まじい貫徹力を持つ。
あの悪魔は身軽に動きまわりながら魔法で敵を不利な状況に追い込んでからのこのスキルで何体もの勇者を葬ってきた。
敗北の末スキルイグスヒュームでミンスクに回収された。