左半身不随のミンスク
戦車内…
「で呪いをかけた奴はどんな姿だった?」
エジリスがまず話を展開する。
「黒いローブみたいな衣服…だけで移動する奴で…銃弾が当たりづらい」
「幽霊系か…あいつは意思が薄いから話が通じない上再見つけるのは絶望的に難しい…」
「…とにかく僕たちでも戦闘は可能だ、ここに居ても何も意味はない、移動しよう」
「だな…もしかしたら俺が復活する手段が見つかるかもしれない」
「とことん前向きだな…お前らは…」
アランは半分呆れ、半分安心した。
◇ ◇ ◇
「そういえばアラン」
ミンスクは左半分をぶら下げて話をかける。
「なんだ?ミンスク」
「耳もとでささやかれたような感覚を覚えたことはあるか?」
「それか、それはユニークスキルが覚醒したときになるやつだ」
「普通の人でも突然覚醒したりするのか?」
「するぞ、平凡な身分の者がいきなり強力なスキルが覚醒して魔王を打倒した…という歴史も珍しくない」
「なるほど…お前にもユニークスキルはあるのか?」
「もちろん、お前との一騎打ちのとき一杯食わしてやったあの技だ、スキル名は…『ネイント』だ」
「地味なようで応用が利きそうな技だ…」
「だろ?でお前は?」
「俺は…コンセントレーションとスキルイグスヒューム,前者は俺の集中力を大幅に上昇する、後者は死体からスキルを奪う能力だ」
「コンナントカはあまりよくわからないが…スキルイグスヒューム…なんて能力だ…!」
アランはミンスクを恐ろしいものを見る目でこちらを見た。
「かなりいい能力だろ」
「…確かにな…つまり生物を殺せば殺すほど強くなってゆくのか…」
「貧弱耐久だけどね」
エジリスが操縦席から割って入ってきた。
「うるさい」
◇ ◇ ◇
そして夜…
「お前ら、そろそろ寝ろ、俺が見張る」
ミンスクはそう言い、右半分の体だけで器用にキューポラへ這い上がる。
「僕は外で…」
「寝ろ」
「何も言ってないのに…」
エジリスは残念そうに返答した
「こんな狭い所で男と寝るのか一応私はレディなのだぞ」
「知ったことか、車内のほうが頑丈に守られている、それにお前が死なれたら俺たちが困る」
「ほぉ…自己中で傲慢なお前からそんな言葉が聞けるとは」
「そんなに珍しかったか?それにエジリスは操縦席、アランは砲塔だからしっかり分かれている、これ以上文句言うな」
「仕方ないな…」
アランは渋々返答した。
◇ ◇ ◇
(今の俺のやれることは…見張りぐらいだからな…)
ミンスクは戦車の上であたりを見渡す。
(俺の右半分は…動くことはあるのだろうか…だめだそんなことを考えるわけにはいかない…)
5時間後…
(物音だ…)
「おきろぉ!」
ミンスクは皆を起こすため叫ぶが声が全く響かない…すぐにわかった。
(魔法だ)
「コンセントレーション」
聞こえはしないがスキルを発動させ身構えた。寝そべってるけど。
そして相手が来たそれは…黒い翼をもった人間…はっきり言えば悪魔であった。
ミンスクは手始めにサブマシンガンをぶっ放す。
悪魔は驚いたように目を広げとっさに防御態勢を取る…がミンスクの射撃精度と銃の性能の前に圧倒される。たまらず木陰に逃れる。
スキル ネイント(スキル・特殊)
効果範囲・・・E
発動速度・・・A
コスト・・・B
成長性・・・C
一瞬で自分の体制を変えられる。
なんだかポツンとした能力だが倒れた状態から一瞬で起き上がる、組みつかれた状態から一瞬で組み返すなど至近距離ではかなり有利になる。しかし位置は変えられない。