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山羊座の運勢

作者: 美麻 あこ

初投稿です。

2年ほど前に書いたものです。お手柔らかに

「一緒に死のうよ」


そんな言葉がひどく頭に焼き付いて離れない。一体どうしたというのだろうか。

生まれてこのかた、およそ22年と6ヵ月、私と彼女は片時も離れず一緒にいた。それは言葉通り本当に片時も離れることはなく、産まれた病院が一緒であることから始まり、小学校中学校はもちろん、高校、大学の学部ですらも同じであった。私は彼女のことが大好きだったので(もとより友達と呼べる人物が少ない私にとって彼女は本当に大切で、まさに親友と呼ぶに相応しかった)離れることは耐え難かったし、彼女がいたことでとても楽しい人生をすごせてきたと思う。

それがなぜ急に一緒に死のうなどと。いや、急ではなかった。ここで話してしまうと、実は私は見てしまったのだ。

その日もまたいつものように彼女に会いに行った私は、いつものように彼女の部屋でだらだらとベッドや床で心地よい時間を過ごしていた。彼女は出掛けているらしくなかなか帰る素振りを見せなかったもので、暇を持て余した私は彼女の本棚の中から今まで見たことのない背表紙を見つけ引っ張り出した。なんともまあかわいらしいノートで、私と違い女の子らしく男女問わず好意を抱かれる彼女にぴったりなものであった。

普段ならこんなことはしないのだが、その日は朝からいつもと逆の右足から靴を履いてみたり、人通りの少ない路地を歩いてみたり、いつもなら家を出る前に連絡するものを彼女の家に到着してから連絡してみたり。つまりは、いつもいつもの日常に飽き飽きしていたのか。そのノートのページを開いてみせた私は、占いなど一生信じないと誓った。そこには私への愛情がつらつらとびっしりと何ページにも渡り書き連ねられていた。初めてノートに書いたのは15歳の頃だとわかる。彼女は少なくとも、7年もの間私のことを友達としてでの好きではなく、いわゆるlikeではなく、loveとして想っていたのだ。どうしたものか。親友の本心を知っても尚、不思議と落ち着いていた私はとりあえずそのノートを本棚に戻しベッドに横になる。目を瞑ると先ほどの内容が頭に浮かんでは消えていく。


『好きになってはいけない人を好きになってしまった』

『黙っていれば今までと何も変わらず仲良しでいられる』

『関係を壊したくないけど気持ちを知って欲しい』

それはまるで、昔彼女に借りて読んだ少女漫画のようで。

『寂しい、会いたい、寂しい、会いたい、会いたい、会いたい』

『辛いのは私だけだから、こんな感情なくしてしまいたい』

それはまるで、昨年の夏に2人で見た青春映画のようで。

『どこかへいってしまいそう、閉じ込めておきたい』

『他の男にとられるくらいなら殺して私だけのものにしたい』

それはまるで、昨日見たドラマの愛憎劇のようで。


「ただいまあ!ごめんね遅くなって〜ケーキ買ってきたから一緒に食べよ!」

彼女は私のどこをそんなに気に入ってくれているのか。ああ、そのケーキは私が1番好きなケーキだ。やはり今日の山羊座の運勢は最高である。先ほど信じないなどと言ったことは水に流していただきたい。


一緒に死のうよ、なんていうのは彼女のかわいい冗談だったのかもしれない。一緒に死んでよ、と言わないところに彼女の優しさが表れているし言うならきっとこちらだろう。大方私が、ノートをしまう場所を間違えていたのだろうが、ノートを見てもいつもと変わらない私を見て本当に一緒に死んでほしいと思ったのかもしれないし真相はどうだか。今の私には彼女が1番大切なもので、今、彼女の胸に突き刺さっている刃物と私の真っ赤になった手首を見ていいようもない幸福を感じているのであります。


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