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地球が消えた日

作者: 神崎ちあき

「さぁ! いよいよ、人工太陽が打ち上げられる日がやって参りました! この日をどれだけ待ちわびたでしょうか。太陽活動が低下してから十年が経ちました。世界各国が協力して研究や開発を重ね、ようやくこの――」



 ラジオからは人工太陽の打ち上げに関する生放送が流れていた。


 今日はどこのラジオもテレビも、この[人工太陽]の話題で持ちきりだ。




 十年前、太陽活動が低下し地球にまで日の光が届きにくくなり始めた。

 太陽活動が低下し始めたのはもっと前からなのだが、その頃から人工太陽の開発は進められて来た。


 気温は下がり、作物は育たなくなった。

 次第に雪と氷におおわれる地域も増えてきた。


 しかし、人々は希望を捨てなかった。


 戦争やいがみ合っていた国は和解し、世界は一つにまとまった。

 各国が持てる全ての技術や知識を結集させて、作り上げたこの人工太陽はまさに人類の英知そのものだった。



 なんでも、太陽の核となる部分にはスーパーコンピュータや人工知能が搭載され、熱を放出する外郭を制御するらしい。


 これで、一年中常春や常夏の気温にする事も、全て自由に変えれると言うから驚きである。




 今日は、その完成した人工太陽が打ち上げられる歴史的な日なのだ。


 打ち上げは種子島にある宇宙センターから行われた。



 打ち上げの瞬間を一目見ようと、多くの人が宇宙センターの近くやテレビ、ラジオで固唾を飲んでその時を待っていた。


 そして、いよいよ秒読みが開始される。



「3……2……1……発射!」



 巨大なロケットから発射された人工太陽の核は、無事に宇宙まで到達した。

 その後、先に宇宙で作られていた外郭と接続され、光を放ち始める。


 人工太陽の打ち上げは見事成功し、世界は歓喜に満ちあふれた。


 喜びとお祝いで、世界中でお祭り騒ぎは一週間以上続いた。




 人工太陽が打ち上げられてから数ヵ月が経ったある日、一隻の小さな宇宙船が地球に降りてきた。

 場所は人工太陽を打ち上げた種子島の宇宙センターだった。



 宇宙船からは二人の宇宙人が降りてきた。

 彼らはタコのようなクラゲのような姿をしていた。


 そして宇宙人は地球の言葉でこう言ってきた。



「我々はこの星よりも更に遠い外宇宙の星から来た者です。我々はあなた方の人工太陽の打ち上げを目撃しました。素晴らしい技術ですね! こんな遠い星にもこれほどの技術があるとは思いませんでした。我々もお手伝いしますので、是非共に更に新しい技術を開発しませんか? 三日後の後、ご返答を伺いに参ります」




 各国の代表は話し合いの場を設けた。


 協力すべきと言う意見もあったが、得体の知れない宇宙人に、我々の技術が持ち去られるのではと言う意見が多かった。

 中には、騙して殺してしまえと言う過激な意見もあった。



「宇宙人の技術がどれだけの物か一度見てみたい気もするが」



「あんな小さい宇宙船一つではどうせ大した技術ではない」



「丁重にお断りして帰って頂こう」



  しかし、反対派の者達は納得がいかない様子だった。



 そして三日後。



「さて、ご返答は?」



「我々は全人類であの人工太陽を作り上げました。しかし、我々はそれ以上の技術よりも、これまで通りの日常を望んでいるのです。申し訳ありませんが、お断りさせて頂きます」



「そうですか。それは残念です。では我々は他の星へ向かいます」



 そして、宇宙船に乗り込み地球を離れて行こうとした。


 が、その時!



 一発のミサイルが宇宙船目掛けて撃ち込まれた。


 反対派の勢力が宇宙人を殺そうとしたのだった。

 しかし、宇宙船は撃ち落とされるどころか、傷一つ付いていなかった。



「交渉は決裂した。敵対行為と見なし、我々は直ちにこの星を滅ぼしに来る」




 その二日後。


 二人の宇宙人が乗ってきた宇宙船よりも、遥かに大きな戦艦が一隻地球にやってきた。



 各国の代表は急ぎまた話し合いの場を設けた。


 宇宙人の技術を見くびっていた。

 小さな宇宙船は偵察艇のようなもので、母船は更に大きなものだったのだ。


 これなら始めから協力してもらえばよかったのではないか、皆がそう考えたが、すでに後の祭りだった。

 結局、出た結論は「和解すべし」だった。


 すぐに交渉のため、外交官が宇宙人の戦艦へと向かった。


 だが、外交官が戻ってくる事はなかった。



 地球にはもうすでに宇宙人の戦艦が多数向かってきていた。



「なんという過ちを犯してしまったのでしょうか。一体地球はどうなってしまうのでしょうか!? 我々は、我々の星は――」


 ラジオからは男性キャスターが放送を続けていた。

 だが、その放送が耳に届いている人は一人としているだろうか。


 全員がただ空を見上げ、呆然と立ち尽くすしかなかった。




 おしまい

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