日本からやってきたメール
閲覧ありがとうございます。この小説は『星花女子プロジェクト』参加者への内輪受けの内容が多分に含まれております。ご了承の上、ご覧下さい。
「……墨子。なに、してるの」
わたし、倉田楓がテレビを観ていると、同居人……同棲相手の木隠墨子が、台所のテーブルの上でなにか作業をしている音が聞こえてきたため、振り向いて聞いてみた。
「もうすぐ母の日だから、外国にいるお母さんにカーネーションの造花を贈ろうと思って」
「……去年も、それ作ってた」
「うん。今年は、楓ちゃんも作ってみる?」
「………………」
わたしが作ったところで、墨子が作っているような綺麗なものはできないし、それに……。
……お母さんは、きっともらってくれない。
だったら、作る意味なんて無い。
だから、わたしは首を横に振った。
「……そっか。…………そうだ。楓ちゃん、ちょっとこっちに来て」
「……?」
わたしが近づくと、墨子にカーネーションの造花を一本、渡してきた。
「一緒に、写真撮ろう?」
「……どうして?」
「……お母さん達に、二人で撮った写真を送ろうかなって。だめ……かな?」
「……わかった」
わたしがカーネーションの造花を持って墨子の肩に頭を寄せると、墨子はスマホをゆっくりと掲げた。
◆
「ノルウェー出張も、今日で終わりね。あなた」
ノルウェーのとあるホテルの窓から夜景を眺めている、一組の夫婦がいた。
「そうだな。明日からはオランダか」
「まだまだ、日本には帰れそうにないわね」
「墨子達は、元気にしているのかな」
男がそう呟くと、一台の携帯電話が着信を知らせた。
「……あなた」
「……ん?」
「噂をすれば…………ほら、墨子からメールよ」
女の携帯電話の画面には、一枚の画像が添付されたメールの文面が表示されていた。
『楓ちゃんとの二度目の母の日。画像の造花を今度送るね』
「……仲良くやっているみたいだな」
「孫の顔を見るのが楽しみね。うふふ」