彼女が残したもの
ノットワークな世界で僕は・・・1000アクセス突破記念の作品の再アップ版です。
あなたは恋人を本当に愛していますか?
初めて一緒に行った場所は? 初めてケンカしたのは?
この物語と共にあなたも恋人との思い出を振り返ってみるのも面白いと思います。
こんなにも花が似合うのは君だけしかいない。
こんなにも綺麗で美しいのは君だけだ。
『薔薇のように華麗で黄色のガーベラのように美しい』
君だけに捧げる最高の言葉。
でも今はそんな最高の言葉を送ることも、大切な約束をすることも、たわいもない話をすることすら僕には許されない。
だって君は僕の前から姿を消してしまったから。
君は永遠の旅へと僕を放って行ってしまったのだから。
君からの愛情表現を残して・・・
どれだけ君に語りかけても返ってくるのは、君から発せられる温かい言葉でもなく、優しい笑みでもない。
ただ僕のいる空間に漂う殺伐とした空気だけ・・・
君のいない世界なんて、ただの真っ白な世界なのに・・・
なぜ、なぜなんだ。何も言わずに消えてしまうなんて。
君が姿を消してから、数日・・・
高校時代に他界した親から引き継いだこの商店街の一角にある花屋は相変わらず鼠色のシャッターで閉ざされていた。昔の活気が溢れる様子はなく、シャッターはまるで大きな砦の鋼鉄の扉ように誰も寄せ付けない、そんな風貌だった。
僕は起きる気力もなく、ひたすら自分の体温で温まった布団の中に包まっていた。
何も考えたくない。目覚めたらまたいつものような生活に戻らないだろうか。そんな意味のないことを考えながらまた目を瞑り、夢の世界へと自分自身を送り込む。
不運にも今日はその鋼鉄のような扉を叩く音で現実世界へと引きずり出されてしまった。
「郵便です!!」
若い男性の声がさらに僕の夢の世界を壊していく。
郵便?そんなもの知らない。僕はそんなもの頼んでいない・・・じゃあ一体誰のものなんだ。
僕は包まっていた布団の中から外に出てシャッターを開けた。
「ここにサインをお願いします!」
手元にあったペンでサインを書く。差し出し人は恋羽・・・
「恋羽?えっ・・・?彼女は・・・あはは。どうやら僕は夢を見ているようです。あ、その小包はそこに置いといて下さい。」
「あ、はい。わかりました、失礼します。」
若い男性は帽子のつばに軽く触れ、遠慮そうにお辞儀をしてその場から立ち去っていった。
僕は開けたシャッターをまた閉ざして小包をみて立ち尽くした。
こんなことが本当にあるのか・・・彼女は亡くなったはず。亡くなる前に送ったものなのか?
それが今・・・?
小包を見ていると開けたいという気持ちが込み上げた。しかし、開けるのを拒む自分もいるのだ。
「怖い・・・」
ずっと立ち尽くしているうちに恐怖心にかられてしまった。
恐る恐る、側にあったカッターナイフでゆっくりと開けていく。
中には手紙と恋羽のサインの入ったこの店で撮った2人の写真が入れられていた。
「これは・・・この手紙は恋羽の遺書・・・?」
深く深呼吸をして手紙を読み進めた。
『拝啓 不器用で優しい君へ
まずは在り来たりな挨拶からしたほうがいいのかな?
この手紙が届いているということは、私は君の前から姿を消しているうことでしょう。たぶん君のことだ から店も今は閉めているんでしょう。でも大丈夫。私がいなくても私の分身となるものを残してきた。
いつものように手入れをすればわかるはずだよ。 そこに全ての思い出を残してあるから確認してね。
じゃあまた、思い出の中で・・・』
僕は手紙の通りに数日ぶりに花の手入れを始めた。
「ごめんなぁ、今まで手入れしてやらなくて・・・」
ひとつひとつの花を手入れしてくいくとを丁寧に手入れしていくとレジの台に見慣れない花が1つ、ぽつんと置かれていたのだった。
彼女を亡くして落胆していた僕に届いた、彼女からの届け物
レジの台に置かれていたものとは一体・・・
次話の花言葉は”愛”
また別の物語でお会いしましょう!!